2003年5月8日(木)「しんぶん赤旗」
「カラ出張は必要悪だ。もっとおとなになれ」と語る幹部――。七日、明るみに出た陸上自衛隊での公金不正使用事件では、内部で不正を指摘した自衛官にたいし、幹部がそんな言葉で抑えつけていました。圧力をかけ、真相を隠す自衛隊の組織体質が有事立法強行の動きのなか、あらためて大きな問題になっています。
関係者によると、陸自・西部方面第四師団(福岡県春日市)の飯塚駐屯地会計隊の場合、できるだけ多くの方面会計隊予算を確保する会計責任者が“優秀”とされていました。
これらの資金は「特別経費」として裏でプール(貯蓄)され、駐屯地に出張してくる防衛庁の職員や幹部自衛官の接待(土産も含む)やタクシー代等に使用していたといいます。これには会計検査院の監査時の接待もふくまれていました。
接待内容は、官僚、階級差、出張者の駐屯地での業務内容、懇意度などで違いますが、“裏財布を握った者”の裁量で接待の中身が決定します。
カラ出張や業者からの寄付・祝儀などによって隊内でプールされている「特別経費」は、会計隊隊長が収支報告書(帳簿)を作成し、管理しています。「特別経費」の額は毎年、相当の額にのぼるとみられます。
収支報告書に収入として記載されている出入り業者からの祝儀がもともといくらあったのかは、直接業者から預かった者でないとわからない仕組みです。
同会計隊に所属していた元自衛官は「こういう不正には入隊した時から気づいていました。なかば公然化しています。もらえるものはもらっておけ、という感覚です」と語っています。
内容証明で、こうした不正について意見を上げた自衛官に対し、春日駐屯地会計課長は「カラ出張は必要悪だ。もっとおとなになれ」と公金不正使用を認める対応をしながら、真相を封じてきました。
また、ある西部方面隊幹部は「事実であればとんでもない話だ。正式な指揮系統でどんどん上げてこい。方面も対応する態勢でいる」とのべながら、「過去は過去と割りきって、残りの自衛官生活を充実せよ。それでも気持ち的におさまらなければ、それなりの覚悟(懲戒免職)でやれ。ただし、匿名ではなく正々堂々とやれ」と居直った、といいます。