2003年5月7日(水)「しんぶん赤旗」
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「新聞に有効求人倍率というのが出ていたんだけれど何のこと?」。姪(めい)の春喜ちゃんが電話でこう質問してきました。中学二年生です。「君ももうすぐ十五歳か。じゃあ知っておいた方がいいね」と私。長電話にならないよう話してみました。(篠田隆記者)
春喜ちゃん ねえ、おじさん。この間の新聞に「有効求人倍率悪化〇・六倍」とあったけれど、これが分からないのよ。
記者 「しんぶん赤旗」日刊紙だと四月二十六日付だね。
春喜 厚生労働省の発表なの?
記者 そう。三月の調査で前の月より倍率が低下した。悪くなったということだ。
春喜 その求人倍率って?
記者 厚労省の出先機関に愛称「ハローワーク」、正式には「公共職業安定所」というのがある。全国に約六百カ所、大きなまちにはたいがいあるんだ。仕事をしたい人が職探しに来たり、働き手を求めて企業などが来る所。求職者と求人の中継ぎなどをする所だね。求人倍率とはそこの窓口に申し込まれた求職・求人の比率。つまり求職者一人に対し何人の求人があったかということさ。
春喜 じゃあ〇・六倍は?
記者 求職者一人に対し〇・六人分の求人があったということ。求職者が十人いたとすれば六人分、六割分の求人しかなかったということだ。
春喜 六割は就職できたわけ?
記者 いや、これは窓口での比率さ。このあと希望の職場か、最適の働き手か、求職求人両方が相手を選択する。賃金が低かったり経験者でなかったりで就職者はしぼられる。三月の就職率は30・7%、つまり三人に一人以下だった。
春喜 じゃあ、「有効」とは?
記者 窓口で受け付けた求職、求人の申し込みは、受け付けた月を含め三カ月が手続きの「有効」期間。その期間内の求職者と求人の比率が「有効求人倍率」だ。
春喜 なーるほど。
記者 求人は、採用者が決まらないまま三カ月が過ぎると一カ月の「継続」のあと「有効」から外れ、もう一度新規申し込みが必要になる。求職者は、有効期間内に繰り返し職探しに来ていれば有効求職者として「継続」扱いになる。不況や企業のリストラ・人減らしが激しい今は再就職が難しく、半年たっても就職できない人が過半数を占めるというデータもある。有効求人倍率はそういう状況を一定程度反映しているといえる。
春喜 だから有効求人倍率は低下、つまり悪化していくわけね。
記者 ところで春喜ちゃん、「新規求人倍率」というのもあるよ。
春喜 へーっ。でもそれはあまり新聞には出てこないね。
記者 ウン。「新規」とはその月に新たに受け付けた求職や求人の申し込みのこと。その比率が新規求人倍率さ。三月は一・〇六倍だ。有効求人倍率より大きいだろ。一倍以上だから求職者全員分の求人があった計算だ。
春喜 ホント。
記者 でもこれは、企業の求人のようすをみるには参考になるが、現実の雇用情勢とはちょっと違う。さっきも言ったように求人は、有効期間が過ぎても採用者が決まらないと、新規求人を出し直す。新規求人は増える。求職者の方は、就職が決まらなければ継続扱いになり新規手続きはしない。だから新規求人倍率は有効求人倍率より高めになると考えられるんだ。
春喜 なるほど。ところでおじさん。さっき、「もうすぐ十五歳なら…」といったでしょ。どういうこと?
記者 日本は十五歳から、仕事を探したり働くと「労働力人口」に入る。春喜ちゃんももうすぐその年。働く者になることもできるからさ。
春喜 そうか。私も一人前だね。