日本共産党

2003年5月7日(水)「しんぶん赤旗」

教育・研究 大臣が決める

廃案しかない違憲の法案国立大学法人法案

きょう参考人質問

審議で問題次つぎ

石井郁子衆院議員に聞く


 国立大学法人法案が国会に提出されてから二カ月たちました。これまで明らかになった内容、今後の課題などを、日本共産党の石井郁子衆院議員・国会議員団文部科学部会長に聞きました。

 −−国会審議が始まっていますが。

 石井 国立大学の法人化について遠山文部科学大臣は「大学の自主性を拡大するためのもの」と説明してきました。ところが二月二十八日に国会に提出された法案は大学の目標を文部科学大臣が定めるなど教育研究への国の介入を強める重大な内容をもつものでした。

 「これは大変な法案」「国立大学協会は総会を開き、国立大学側の見解を明らかにすべきだ」という声が高まり、東京外国語大学外国語学部など四大学六学部の教授会が批判的決議をあげています。「法案は教育研究の自由な営みを開花させる大学像とは相容れないものである」(一橋大学社会学研究科)などきわめて厳しいものです。個人や教職員組合などから「法案を廃案に」などのメールが衆議院文部科学委員の部屋に毎日のように送られてくるようになりました。

 四月三日の衆議院本会議では民主、自由、共産の各党が代表質問を行い法案の問題点を追及しました。この質問が国会議員のなかに「この法案は、学問の自由・大学の自治を侵しかねない」ことを深く印象付けたといってもいいでしょう。文部科学委員会の委員長をして「これは重たい法案」といわせ、野党のなかに「慎重に審議しなければならない重要法案」という認識をもたせたのです。

 十六日の文部科学委員会の法案質疑、二十三日の参考人質問を通じて、法案が「学問の自由」「大学の自治」と両立できない欠陥法案であることが浮き彫りになり、法案に反対する運動が急速に広がっています。

これまでにない学問研究の統制

 −−審議で明らかになったことは。

 石井 この法案の最大の問題は各大学の中期目標を文部科学大臣が定め、計画も文部科学大臣の認可を受けるなど教育・研究の国家統制を強めていることです。

 本会議で、私は「日本の大学でこれまで政府・文部省が、大学の学問研究の内容、計画を上から決めたことがあるのか」と質問しました。遠山文部科学大臣は「政府が一方的に定めたことはありません」と答弁せざるを得ませんでした。

 委員会で民主党の委員が「国が中期目標を定める制度が欧米にあるのか」と質問したのにたいして文部科学大臣は全く答えることができませんでした。私も現在各大学で検討中の中期目標を示して「本来大学が定めなければならない大学固有のものを、なぜ文部科学大臣が定めるのか」と追及しましたが、これまた大臣は答弁不能に陥ったのです。

 文科相の認可を受ける大学の中期計画についても文部科学大臣は変更命令を出すことができます。そして「それに従わない場合、(罰金二十万円以下の)過料を科す」ことも明らかとなりました。これでは学問の自由などあったものではありません。

 さらに、国立大学法人の中期目標や中期計画がどれだけ達成されたか文部科学省内に設置された国立大学評価委員会で評価された上に、総務省に置かれた政策評価・独立行政法人評価委員会の評価を受けることになります。

 私の「なぜ、総務省が教育と研究について評価できるのか」との追及に対して、片山総務大臣は「他の独立行政法人と同じように二次チェックを行う」と答弁しました。「国立大学法人」とは名ばかりで、他の独立行政法人と同じ扱いを受けるのです。

 また、文部科学大臣は六年間の中期目標の終了時に「検討を行い、その結果に基き、所要の措置を講ずるものとする」としています。「所要の措置」について、総務省は「法人としての存続の必要性、廃止、民営化を含めて、業務、組織の見直しを行うと理解している」と答弁しました。

 大学の改廃を文部科学大臣が行うというのでは、大学の自治などあったものではありません。憲法に違反する欠陥法案です。高等教育にとって重大事態といわなければなりません。

財政への影響、学費、権限集中…

 −−今後の審議はどうなりますか。

 石井 七日には田中弘允前鹿児島大学長らを招いて参考人質問が行われます。委員会の定例日は水、金です。これからが法案審議のヤマ場です。財政問題や学費への影響、学長に異常に権限が集中されている問題や、教職員の身分が非公務員とされたこと、国立高等専門学校問題など審議すべき内容は山積しています。

 国立大学協会は六月に総会を開いて意見の集約を行うとしていますから、それ以前に国会が法案を採決して、国立大学協会におしつけるわけにはいきません。徹底審議が必要です。連合審査や公聴会も必要でしょう。

 国会審議のさい立ち見が出るほど傍聴人が駆けつけていただいています。これが大きな緊張感を与えています。さらなる世論と運動のもと、法案の廃案に全力をあげる決意です。


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