日本共産党

2003年4月30日(水)「しんぶん赤旗」

社会リポート

手形悪用 商工ファンドの手口

訴訟乱発 保証人から回収

東京地裁もノー 全国に広げて


 債権がなくなっていても連帯保証人から巨額の「債務」を「合法的」に取り立てる――。商工ローン大手の「SFCG」(旧商工ファンド)が、手形制度を悪用してこんな理不尽なことを可能にしていると日栄・商工ファンド全国対策弁護団の弁護士が告発しています。東京地裁は、商工ファンドの手形訴訟を原則的に受け付けない方針を3月に決め、弁護団は「英断」だと評価。全国の地裁に同様の措置を求めています。なにが問題になっているのか、検証しました。(井上 歩記者)


 群馬県のA社は、商工ファンド(当時)などからの借り入れで多重債務に陥り、返済が滞って昨年、夜逃げしました。その後、A社の複数の連帯保証人が、商工ファンドに根保証の全額を請求されました。

根保証全額

 「根保証」とは、借主に実際に貸し付けた金額ではなく、その後追加貸し付けができる枠(貸付限度額)の全額について保証人に保証させるものです。商工ファンドは、保証人に同社を受取人にした根保証額の「約束手形」(根保証手形)を入れさせます。借主が返済不能になると、この手形決済を迫る形で保証人から取り立てます。その取り立てに手形訴訟を多用しています。

 A社と取引関係にあった都内の連帯保証人(33)は、根保証の五百万円を請求され、同額の手形訴訟を起こされました。茨城県の連帯保証人(38)は「根保証の二百万円を請求された」といい、うち百万円を支払っていました。しかし、この件にかかわって根保証を請求された人を担当した対策弁護団の茆原(ちはら)洋子弁護士の計算では、商工ファンドに対するA社の返済額は、利息制限法の利率で実は四百万円近い過払いになっていました。

通常裁判に

 商工ファンドは手形訴訟を、連帯保証人に個別に起こしてきました。「手形訴訟だと、裁判所は手形の署名なつ印はあなたのものかと聞くだけ。自分のだというと債務を認めたことになり、そのまま支払いが命ぜられます」(茆原弁護士)。保証人に請求できるのは、本来は保証人が保証したと理解した金額のうちの、残った債務分だけ。ところが手形をとって訴訟にかけることで、それぞれの連帯保証人が根保証の極度額の全額を支払わされることにもなります。

 A社への貸し付けで、商工ファンドは、八人の保証人から計六千四百万円の根保証をとっていました。商工ファンドの違法な高利の計算によっても、残っていた債務は約一千万円でした。

 商工ファンドが起こすこうした手形訴訟の対策は、申し立てをして、そもそもの取引経過に踏みこんで審理する通常の裁判に移行させること。「通常の裁判なら、利息制限法の再計算で債務も減り、保証意思の確認もされます。債務を超えて根保証した金額をとられることは当然ありません。このような商工ファンドの根保証を『公序良俗に反し無効』だと断じた判決も出ています」と茆原弁護士。しかし、実際に通常裁判への移行を申し立てるケースは少ないといいます。

 東京地裁が昨年一年間に扱った手形訴訟のうち、八割が商工ファンドが起こした訴訟でした。東京地裁は今回の方針を決めた理由を「手形を借用書代わりに、訴訟で回収を図るのは手形制度の趣旨に反する」とのべています。弁護団は「すべての地裁で早急に同様の措置をとる必要がある」としています。


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