2003年4月30日(水)「しんぶん赤旗」
今国会の焦点の一つとなっている労働者派遣法と労働基準法など一連の労働法制改悪案が、先週の国会で審議入りしました。いまある雇用のルールも破壊する乱暴な内容です。
この改悪を実行すればどうなるのか―。その先に見えてくるのは、安定した暮らしの土台である長期雇用は崩壊し、労働者の多数が派遣や契約社員など低賃金雇用に突き落とされ、ホワイトカラーは際限のない労働に駆り立てられるという姿です。
例えば派遣を製造現場にも解禁すれば、請負名目の違法派遣が合法化されます。現場労働者は派遣に切り替えられ、百七十五万人を数える派遣社員はさらに激増するでしょう。
労働基準法を改悪し、契約社員など有期雇用契約の上限を一年(特例三年)から三年(同五年)に延長すれば、企業は使いやすくなります。新規採用を三年契約にしたり、正社員も契約社員に転換させられる恐れがあり、若年定年制につながります。
使用者は解雇できることを原則とし、解雇制限は例外扱いとする解雇ルールを労基法に定めれば、正社員の解雇をしやすくするだけです。
いくら働いても決めた時間働いたとしか認めない裁量労働制も、企画業務への導入要件が緩和されます。裁量労働が際限なく拡大し、企業犯罪のサービス残業も合法化され、過労死が多発するでしょう。
許しがたいのは、政府がこうした規制緩和を「多様な働き方を選択できる」「個性と能力に応じた働き方」とごまかしていることです。
派遣や契約社員の賃金や労働条件は正社員と比べて劣悪です。不安定雇用の増大で賃金は低下傾向にさえあります。これでは「多様な低賃金雇用の選択」しかなくなります。
派遣や契約社員の使い勝手をよくするだけでは、リストラを促進し正社員の賃金や雇用もさらに脅かされます。企業の人件費削減を支援するだけの大改悪は許されません。
小泉政権がなぜこんな改悪に熱中するのか。背景には財界の欲求があります。「国際競争」を理由に、長期雇用は基幹社員だけで契約社員や派遣、パートなどを多数にして、低コスト体制で高利潤をあげようという利潤至上主義の立場です。
しかも、派遣や職業紹介など人材ビジネス市場の拡大で、高収益をあげようという身勝手な戦略です。
この改悪を推進する自民、公明など与党の責任も厳しく問われます。与党は「派遣業種の拡大と派遣期間の延長、有期雇用契約の見直し」で合意しています。公明党は「多様な働き方を選択できる規制改革」として雇用破壊を美化しているのです。
企業は雇用に責任をもたず、労働市場に安上がり雇用の労働者をあふれさせる雇用政策で、社会と経済はどうなるのか。学生の就職先は、正規雇用が激減し、求人の多くは不安定雇用となりかねません。まともな生活も営めず、若者の自立を妨げ、少子化問題も深刻にします。
失業増大と所得の低下で消費はさらに冷え込み、企業の経済活動も低下し経済破たんを強めるだけです。
こんな全面的な改悪に、全労連や連合など労働界は一致して抜本修正や廃案を求めています。
日本共産党は改悪に反対するとともに、正当理由のない解雇の禁止、派遣やパート、有期雇用など不安定雇用労働者の雇用と権利を守ることを要求しています。安定した雇用の確保は、国民の暮らしの土台であり、日本経済の再建にも不可欠です。