2003年4月16日(水)「しんぶん赤旗」
暴力団が実質的に経営する会社に私設秘書の給与を肩代わりさせていた――保守新党の松浪健四郎衆院議員(大阪十九区)の疑惑は、政治家失格であるだけでなく、「政治とカネ」をめぐって数々の疑惑が発覚している政権与党の政治的退廃が行き着くところまできたことを示しています。
なにより重大なのは、暴力団という反社会的な犯罪者集団の汚れたカネが政権与党の一角に流れこんでいたという問題です。
秘書給与を肩代わりした大阪府内の建設会社の会長は当時、暴力団組員。府営住宅解体工事をめぐる談合容疑で指名手配され、一九九八年三月に逮捕されました。松浪議員によれば、九七年末には暴力団組員とわかったのに、組員が逮捕される直前の九八年二月まで給与を肩代わりしてもらっていました。これまでも、後援企業からの秘書給与肩代わりは自民党議員を中心に発覚していますが、その手口が暴力団を介在したところまできたのです。松浪議員は、政府のアフガン特使も務め、保守新党国対副委員長に就いていました。そうであるだけに、政権与党の対応がきびしく問われます。
ところが、本人が事実関係を認めているのに、保守新党の熊谷弘代表は「事実関係を本人から聞き、精査しないといけない」と他人事のような対応。自民、公明両党も事実関係が先決としています。
こうした緩慢な対応の背景には、与党の中心である自民などと右翼・暴力団との切っても切れない関係があります。
最近でも、八七年の自民党総裁選時では、竹下首相(故人)側が右翼の「ほめ殺し」街宣をやめさせるために、暴力団・稲川会前会長に依頼。自民党政治家が何人も右翼に接触する事件がありました。二〇〇〇年には、当時官房長官だった中川秀直自民党国対委員長は、暴力団系右翼との交際や薬物にかかわる警察の捜査情報を漏えいする疑惑が発覚し辞任しました。
政治資金規正法では、企業が秘書給与を負担した場合、「寄付」とみなされ、年五万円を超える「寄付」は届け出なければなりません。ところが、松浪議員は肩代わりさせた計二百七十五万円を政治資金収支報告書に記載しませんでした。
松浪事務所は今月になって政治資金収支報告書を「修正」しましたが、松浪議員は違法性について「この間、ずっと心に引っかかっていた」(「読売」十五日付)と、違法行為と知りながら隠ぺいした疑いもあります。
暴力団というヤミの世界とのつながりからみても、政治資金規正法の確信犯的な違反の事実からみても、松浪氏の国会議員の資格がないことは明白です。(高柳幸雄記者)