日本共産党

2003年4月11日(金)「しんぶん赤旗」

国立高等専門学校(高専)の法人化

教育研究を混乱させる恐れ

井田晋


 高等専門学校(高専)が、戦後の六・三・三・四という単線型教育体系に対して、主に産業界の要請で、中学卒業後、五年間で中堅技術者を養成する目的で設立されてから四十年。高専は国立大学とともに、法人化という大きな渦中にあります。昨年、沖縄に高専が開校して、高専は現在、国立五十五校、公立五校、私立三校、合計六十三校になっています。一学年の学生数約一万人、同世代の1%以下という小規模な学校種です。

 高等教育機関としての高専制度は、大学とは異なります。学校教育法で高専の目的は「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成すること」と定められていますが、そこに「研究」の文字はありません。従って「自治」もないという、基本的欠陥を持っています。

55高専を1つの機構に

 昨年発足した「今後の国立高等専門学校の在り方に関する検討会」はわずか数回の会議を経て、五十五の国立高専を一つにまとめ「独立行政法人国立高等専門学校機構」にする報告「国立高等専門学校の法人化について」を提出しました。

 これにもとづく「機構法案」が国立大学法人法案とともに閣議決定され衆議院での審議が始まりました。この「報告」と法案の問題点をいくつかあげます。

 現在高専は校長が文部科学大臣による任免制であるなど、国立大学と違いがあります。報告はその是非を論ぜず、大学とは異なる方法で法人化すると主張していますが、高等教育機関として自治が欠如している現在の高専制度が問題なのです。自治のある高等教育機関としての高専の制度設計を目指すべきです。

 報告では、高専の法人化の意義として、高専の個性化、活性化、教育研究の高度化をあげています。法人化でなぜそうなるか、正当な根拠がなく、いたずらに競争を強め、教育研究を混乱させることにつながりかねません。

 高専を独立行政法人とすることは問題です。独立行政法人は、行政組織の「減量化・効率化」を目的に、国の政策の「企画立案機能」と「実施機能」を分離、「実施機能」部門の事務および業務をおこなうものとして作られたものです。「ものづくりの現場を支え、かつ新しい技術を創造し、発展させる人材育成を行う」高等教育機関としての高専の教育研究は、独立行政法人の業務に全くなじまないものです。

 すでに国立試験研究機関、美術館、博物館が独法化されていますが、これらには「独立行政法人通則法」が適用されています。高専にも適用しようとしています。通則法は、その機関の業務にかんする中期目標は文部科学大臣が定め、機構本部が中期計画を定めるとされています。これでは国の関与が強まることになります。

自治などの議論先送り

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「高等教育教育職員の地位に関する勧告」は、「自治」が「高等教育機関に不可欠な構成要素である」とのべています。この点から、高専は国際的には高等教育機関とは認められない存在です。こうした点をそのままにして、中教審(中央教育審議会)における高専の基本的制度・将来の方向性の論議を先送りしたまま、文科省は高専の将来にとって重要な問題をもつ法人化を拙速に進めています。(いだ すすむ・小山高専教授、全国大学高専教職員組合高専協議会議長)


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