2003年4月9日(水)「しんぶん赤旗」
教育をなんとかよくしたい――国民の切実な思いが強まっているのに、自民・公明の小泉内閣は教育予算を五年ぶりに減らしました。義務教育費用の半額を国が負担する制度もなくそうとねらい、地方から「反対」の声があがっています。日本共産党は三月十四日に緊急提案「ゆきとどいた教育の条件をととのえるために」(骨子別項)を発表。教育条件の整備確立に責任を果たす政治への転換を訴えています。
小学校二年と四年の子を持つ東京・小平市の母親(36)は、「緊急提案」に「三十人学級をすぐにやってほしい。一年生のとき一クラス三十八人で、五、六人落ち着かない子どもがいて、教室から飛び出してしまい、先生一人ではとても手が回らなかった」といいます。
不登校の小・中学生は約十四万人にのぼり、この十年で、いずれも倍増しています。子どもの不登校と教職員の精神疾患による休職者の増加率はほぼ一致しており(グラフ1)、現在の学校の抱える困難を表しています。
「緊急提案」は、政治がいまなによりやるべきことは「学校などが、子どもの人間形成をたすけるという本来の仕事に専念できるよう、環境や条件を保障する」ことだと提起。具体的に八つの施策を提案しています。
この提案について「現場の教職員の要求と一致している」「国や自治体の責務は教育条件整備だとする教育基本法の精神が鮮明だ」「引きこもりの問題をよく取り上げてくれた」などの教育関係者の声も寄せられています。
国立教育政策研究所の調査(〇一年)では、「クラスで争いやいじめを見る」「クラスを替わりたい」「自分はのけ者にされていると感じる」という子どもが、学級規模が小さいほど少なくなっています。「勉強の進み方が早すぎて困る」という経験をした子どもも減り、一クラス二十人以下のクラスは、調査した数学・算数、理科でいずれも平均点が一番高く、学習効果が認められます。
いま、地方独自の少人数学級が広がり、四月からは二十九道県が実施していることにも、少人数学級の切実さが示されています。
ところが自民・公明政権は、学級定員は「変えない」の一点張り。学級編制の基準は、他のサミット参加国が二十五人前後なのに、日本は四十人。大きな差がついています(グラフ2)。
日本共産党は、〇一年の国会に民主党、社民党と共同して「三十人学級法案」を提出しましたが、自民、公明、保守、自由各党に否決されました。税金の使い方を切りかえれば、たとえば、在日米軍の住宅、施設などにあてている「思いやり予算」の六割分で、全国の小中学校で三十人学級に踏み出すことができます(表1)。
公立学校の学校施設整備費は、一九八〇年度と比べると、四分の一にまで減らされています。日本共産党は、全国各地の自治体で学校施設の実態調査をし、危険な校舎や壊れたトイレなどについて、地方議会や国会で取り上げ、補助を拡充する成果をあげました。
学校耐震化の問題では、〇一年に国会で、国が耐震化の現状すらつかんでいないことを追及。それを受けて、文科省は都道府県に、耐震診断を行い、改善が必要な事業量をつかむように通知を出しました。その後、内閣府の調査で54%の校舎が「耐震性に疑問」と判明。〇三年度予算で耐震化予算が、前年に比べ百四十七億円の大幅増額となりました。
「緊急提案」は耐震化の本格的な推進、障害児学校、学校図書館、学童保育、完全週五日制に対応した環境などの整備を訴えています。
日本は諸外国に比べ、もともと大学の学費が飛びぬけて高い上、奨学金制度は貧弱です(表2)。ところが、国は来年四月、奨学金制度をさらに改悪し、奨学金を受ける学生から保証料を取る(文科省試算で年額二万四千円から三万六千円。連帯保証人が二人立てられない場合)、高校生向け奨学金を廃止して地方に押し付ける、返還免除制度を改悪する――などをねらっています。
就学援助対象の児童・生徒数がこの四年間に約二十五万人も増えているのに、国の補助予算は六億円も減っています。親の失業、倒産などで私立高校や大学をやめざるをえない例がでています。
日本共産党は、家計急変時の授業料補助、緊急採用奨学金制度創設に力をつくし、二〇〇〇年に実現しました。「緊急提案」は、不況が深刻化するいま、いっそうの私学助成、就学援助の拡充、奨学金制度の改悪阻止・拡充を提案しています。
1 国の責任で「三十人学級」の実施。自治体でも少人数学級にとりくむ
2 自公政権による義務教育費国庫負担金制度の廃止・削減を中止する
3 学校耐震化、校舎改善、学校図書館拡充など諸施設の整備
4 私学助成の拡充
5 生徒、住民無視の高校統廃合に反対する
6 奨学金・就学援助の拡充など不況から子ども・青年を守る
7 完全学校週五日制に対応した地域の環境整備を進める
・多様な居場所を地域に
・学童保育の整備
・障害を持つ子どもの居場所への支援
8 不登校、「ひきこもり」など急増する問題への相談・支援を広げる