日本共産党

2003年4月9日(水)「しんぶん赤旗」

個人情報保護法案

「報道目的」の判断は大臣に 政府案

行政から独立の機関を設立 野党案


 前国会で廃案となった旧法案を修正した政府案と、野党四党案の審議が始まった個人情報保護法案。本会議質問で浮かび上がった焦点は――報道の自由侵害の恐れ 旧法案の最大の問題点は、個人情報保護を口実とした表現・報道の自由を侵害する恐れでした。

 政府案では、表現・報道の自由を侵すと批判された「基本原則」を削除したものの、報道の自由侵害と指摘された「主務大臣制」(大臣が業界などを指導監督すること)は残されたままです。

 日本共産党の春名直章議員は、報道目的かどうかは主務大臣の判断に委ねられるため「恣意(しい)的な判断がなされる危険な構造はそのまま」「報道に介入する余地が生まれる」とのべました。

 また政府案では、放送機関や新聞社に、個人情報の適正な取り扱いを確保するための措置を講じるよう求めています。春名氏は「メディアが自律的に定めるルールや倫理をなぜ国が法律で指示するのか」とのべ、報道取材を妨害する口実になる可能性を指摘しました。

 これにたいし野党案では、行政から独立性をもつ第三者機関の「個人情報保護委員会」を設けます。答弁者となった日本共産党の吉井英勝議員は「監督機関それ自体を行政から独立させることが不可欠」「公正中立の立場からおこなう機関が必要」とのべました。

 小泉純一郎首相は、主務大臣制について「恣意的な判断を許容するものでない」とのべ、第三者機関については「大きな組織が必要で行政改革に逆行する」などと拒否する考えを示しました。

 自分の情報の取り扱いに自分が関与できる「自己情報コントロール権」の立場が貫かれているのかどうか。

 春名議員は、政府案では自分の情報の開示や訂正などを要求できるものの、広範な例外規定があることを指摘。野党案では「自己情報コントロール権」の立場をはっきりさせ、個人の権利を保護することを明記しているとのべ、「ここに政府案との決定的な違いがある」と強調しました。

 答弁者の吉井議員は「自己情報コントロールの権利を保護することを真正面に掲げ、法案全体にその精紳が流れている」とのべました。

 小泉首相は「自己情報コントロール権はさまざまな見解があり、明確な概念として確立していない」と背を向けました。職務の用なら罰則はなし 「官に甘く民に厳しい」との批判を受けて政府案は、行政機関にたいし「職務の用以外」の個人情報収集に罰則を設けました。春名議員は、逆に「職務の用」と判断されれば罰則は適用されないと指摘しました。

 野党案では目的を問わず罰則が適用されます。答弁者の吉井議員は「たとえ業務に役に立つと思っても個人の秘密を収集することは許されません」と野党案の実効性を強調しました。

 小泉首相は「(防衛庁リスト事件と)同様の事件が起きれば構成要件で判断する」とのべ、罰せられないこともあることを事実上、認めました。

 さらに政府案では、個人情報保護は「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ」と定め、個人情報の目的外利用も「相当な理由」があれば認められることになっています。

 春名議員は「行政の円滑な運営の範囲内でしか守られないことになる」「行政の都合で全国の行政機関で使いまわしされる」と批判。野党案のように、目的外利用について第三者機関である個人情報保護審査会に諮問し、客観的立場からの検討を経る仕組みを設けるべきだとのべました。

 住民基本台帳ネットワークが稼働したもとで、膨大な個人情報を一括管理される危険性を防止するためには、行政によるデータマッチング(情報の照合や結合)を禁止すべきにもかかわらず、政府案では禁止されていないと指摘しました。

 小泉首相は「利用目的を明確にさせ、目的外利用を制限している」などとのべ、禁止する必要性はないとのべました。


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