2003年4月4日(金)「しんぶん赤旗」
公明党はイラク戦争にかかわって「平和的解決をめざし、独自の外交努力に徹してきた」「一刻も早い軍事行動終結を」などと戦争支持の立場をごまかそうと躍起です。その一方で、平和解決に向け積極的な野党外交を繰り広げ、イラク戦争反対の行動にとりくんできた日本共産党にたいし、ビラなどで「具体的な行動しない共産党」「やっぱり『反対』だけが実績」などと見当違いの攻撃をしています。同党と「一体不二」の関係にある創価学会の機関紙・聖教新聞も「何でも反対反対の“口先野郎”を圧倒せよ!」(三月三十一日付)など、連日イラク問題での共産党攻撃をあおっています。アメリカの無法な侵略戦争まで擁護して、「生活与党」どころか、「戦争与党」の正体をさらした公明党が、イラク問題で何をしてきたのか、検証します。
イラクの大量破壊兵器をめぐって国際社会に問われたのは、国連の査察による平和解決をはかるのか、それとも査察を無意味だとして武力行使に訴えるのかにありました。開戦前から、後者の立場にたって米国の戦争路線を支持、平和解決に敵対してきたのが、公明党です。
昨年十一月八日に全会一致で採択された国連安保理決議一四四一は、国連の枠組みのなかで、査察による平和的解決の可能性に道を開くものでした。
実際、決議一四四一にもとづく査察は成果をあげ、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長も「武装解除任務は数カ月あれば可能」(三月七日)と報告するなど、査察は本格的軌道に乗りつつありました。
ところが公明党は、米国が査察打ち切りと武力行使の動きを強めると、「平和解決」をいう一方で「(米国が)武力行使に出るのであれば、国連決議をとることが大事」(神崎武法代表、公明新聞二月十三日付)だとして、武力行使を前提にした議論を展開し、査察継続・強化の立場には立ちませんでした。
逆に、公明党の冬柴鉄三幹事長は査察継続・強化を主張する仏ロ独中四カ国にたいして「間違っている」「それはサダム・フセインが喜ぶところじゃないですか」と発言、平和解決を求める世界の反戦運動を「利敵行為」と敵視したのです。(二月十六日)
結局、公明党が開戦前にゆきついたのは、米英が安保理に提出した武力行使容認決議を支持することでした。神崎代表は、三月十七日という最終期限を設けた「修正案」にも「国際社会が一致結束してイラクに当たろうという決意の表れで評価したい」(三月八日)ともちあげました。冬柴氏は、この立場からブリクス報告を「十二年間査察したが、(大量破壊兵器は)見つからない。今から、三カ月、四カ月やって見つかる可能性はあるのか」(三月八日)と否定したのです。
国連の査察による平和解決の道を、力ずくで断ち切ったのが、三月二十日に開始された米国の先制攻撃でした。
公明党は、米国が攻撃に踏み切ると、「日本としてもこのブッシュ大統領の方針を支持していく」(小泉純一郎首相)とした日本政府の立場を「やむを得ないもの」(神崎代表、公明新聞三月二十一日付)と容認しました。
米国の攻撃は、国連安保理の決議もない無法な戦争でしたが、公明党は「法的には国連を中心とした国際協調の枠組みの文脈のもとに行われている」(二十日の党見解)と擁護。冬柴氏は「法律的には、国連の枠内での武力行使だと思う」「今回の武力行使だけを捉えて『先制攻撃』と批判するのは、いかがなものか」(公明新聞三月二十四日付)と合法化まで行いました。
開戦後、日を追うごとに、イラク戦争の無法性、非人道性が明らかになるなか、公明党は米国の無法をかばい、政権転覆という戦争目的まで認め、ついに侵略戦争まで正当化するに至りました。
米国が戦争目的として公言しはじめた「フセイン政権打倒」は、明確な主権侵害、内政干渉です。ところが、神崎代表は「フセイン体制そのものが大量破壊兵器を廃棄しないという体制であると思う。だから(大量破壊兵器廃棄と政権の変化は)一体のものと理解している」(公明新聞三月二十一日付)と発言し、理解を示しました。
さらには、冬柴幹事長も「イラクが国連決議を無視しつづけて、大量破壊兵器の廃棄を望む国際社会の要求に対応しなかったことが世界的な脅威となっている。この脅威をなくさなくては世界は安心できない」(同前三月二十八日付)と発言。要するに、フセイン体制をなくさなくては「世界は安心できない」という立場にたったのです。まさにブッシュ政権いいなりの思考停止ぶりです。
ブッシュ政権はいまや国連憲章にもとづく平和秩序の代わりに、イラクの体制転換をテコに、中東諸国を米国いいなりにつくりかえる横暴と恐怖の「世界秩序」をおしつけようとしています。公明党の開戦後の主張は、まさにこれへの追従です。
現に、公明党は米英のイラク戦争にたいする批判はしていません。すでに民間人の犠牲は数百人におよびます。この戦争を支持しておいて、「一刻も早い軍事行動終結を」というのは、米英に“一刻も早く片付けてくれ”というのと同じです。
公明党は「ギリギリまでの平和解決努力」をしたなどと宣伝していますが、実態はギリギリになって「アリバイづくり」に出ただけ。しかも、その行動は、米国の無法な戦争を後押しするだけのものでした。
●米国に武力行使容認決議支持表明(神崎代表)…「日本政府は新決議案を支持しており、公明党も政府と同じ考えだ」(アーミテージ米国務副長官との会談で、公明新聞3月6日付)
●要請書に査察継続は一言もなし…神崎代表がアナン国連事務総長に手渡した要請書には、査察の継続・強化は一言もなし。「国連での一致した対応」を求めただけ。
●戦争前提に難民施設を視察(浜四津敏子代表代行)…浜四津代表代行が3月13日〜19日までスイス、イランなど訪問。戦争突入の「最悪の事態」を前提に難民施設など視察
こうした公明党の態度については、「党として『平和的解決への努力』を強調して見せたが、党内からも『アリバイづくり』との冷ややかな見方が出るほどだった」(「東京」3月12日付)と指摘されています。
公明党のビラは、アメリカのイラク攻撃開始のさいに日本共産党がおこなった衆参両院の緊急質問をねじまげる攻撃までおこなっています。
日本共産党は、この緊急質問で「イラクが大量破壊兵器をもっているかもしれない、その疑いがあるというだけで武力攻撃をおこない…」(市田書記局長)とアメリカを批判し、「『イラクが大量破壊兵器を持っているかもしれない』という疑念だけで、このような非人道的な犠牲を合理化するつもりですか」(志位委員長)と小泉首相を追及しました。公明党は、これを、日本共産党はイラクの大量破壊兵器保持は「疑念だけ」、「疑いがあるというだけ」といって「あたかもイラクを擁護するかのような発言」をしているというものです。
明らかなように、日本共産党は米英が、大量破壊兵器保持の「疑い」や「疑念」だけでイラクにたいする武力攻撃をおこなったことを批判したのです。それを日本共産党がこの問題で「イラク擁護」したなどとすりかえるのですから、反戦運動を「利敵行為」よばわりする公明党ならではのデマ宣伝といわなければなりません。
実際、査察団のブリクス委員長は開戦直前に「査察団はイラクが依然として大量破壊兵器を保有しているとは断定してこなかった」(三月十八日)とのべました。公明党のビラ自体、「イラクが隠し持っている疑いが濃いとされている」としかいえません。
公明党のビラは、日本共産党がイラク戦争に反対していることに対し、「“テロ支援国家”を擁護する日本共産党」などと攻撃していますが、日本共産党はあらゆるテロにきっぱりと反対しています。
フランス、ドイツやローマ法王など圧倒的多数の世界と日本の世論が「イラク戦争反対」の声をあげていますが、公明党はこれらも「テロ支援国家」を擁護しているとでもいうのでしょうか。
公明党は日本共産党にたいして「『戦争反対』とただ唱えているだけ」「具体的な行動しない共産党」などと攻撃しています。
とんでもない話で、「行動しない」どころか、当のイラクに無条件で査察に応じよと交渉したことをはじめ、昨年から独自の野党外交に積極的に取り組んできたのが日本共産党です。
たとえば、不破哲三議長は、昨年八月に国連安保理の常任理事国である中国を訪問。江沢民国家主席(当時)と首脳会談をおこない、「イラクにたいする軍事攻撃に反対」で一致しました。中国がアメリカの軍事攻撃に反対だと表明したのは、このときが初めてでした。
十月には、緒方靖夫国際局長(参院議員)を団長とする党代表団を中東・湾岸六カ国(ヨルダン、イラク、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール)に派遣。各国政府などと意見交換し、戦争反対で一致。イラク政府代表との会談では、大量破壊兵器の解体とそのための査察の無条件受け入れを求めました。
昨年十二月には、志位和夫委員長を団長とする代表団が、インド、スリランカ、パキスタンの南アジア三カ国を訪問。安保理非常任理事国でもあるパキスタンを含めて、「一方的なイラク攻撃には反対」で完全に意見の一致をみました。
イラク攻撃反対の反戦運動でも、日本共産党は世界的な反戦行動(二月十五日、三月十五日)に呼応して活動。三月十一日には党独自にイラク戦争反対の宣伝行動を全国一万三百三十六カ所で展開。開戦の三月二十日には全国で五千百四十二支部が一万六百七十五カ所で抗議行動をおこなっています。