2003年3月20日(木)「しんぶん赤旗」
アメリカによるイラク攻撃が切迫するなか、国会での党首討論を聞きました。日本共産党の志位和夫委員長が小泉首相に問いただしたのはただ一点、首相がアメリカの武力行使を支持する理由としてあげた「フセイン政権に武装解除の意思がないことが断定された」というのは、だれが断定したかです。
たったひとつの質問に小泉首相は顔を引きつらせ、声をうわずらせて長々と答弁した揚げ句、結局答えられませんでした。お粗末というのもはばかられる情けない答弁でした。
「国際社会は一致してイラクの協力は不十分と認めている」から、武装解除の意思がないと「断定しているといって過言ではない」というだけです。これでイラクの罪なき人々まで犠牲にするアメリカの戦争を支持するとは――。
志位委員長がきびしく批判したように、首相が答えられないのも当然です。国連安保理も、イラクで査察活動を進めていた国連の査察団も、イラクに「武装解除の意思がない」などとは断定していないのです。
むしろ国連の査察団は、査察がようやく本格的な軌道にのりつつあり査察を継続すべきだと求めていました。国連安保理もこの報告を受け入れたからこそ、査察の打ちきりを求めたアメリカなどの決議案を支持せず、米英は決議案を撤回するしかなかったのです。イラクに「武装解除の意思がない」と断定したのはアメリカだけです。
小泉首相の答弁不能は、首相がアメリカの戦争を支持する根拠が、アメリカの独断をおうむ返しに追認しただけであることを示すものです。こんな答弁で世界の平和と日本の進路に重大な禍根を残す道に踏みこむとは、小泉内閣の歴史的責任が問われます。
アメリカがイラクにたいして始めようとしている戦争は、国際社会の法と正義に照らした絶対に許してはならない戦争です。
第一にこの戦争は、国連の査察による平和解決が本格的な軌道にのりつつあるときに、それを力ずくで断ちきろうというものです。志位委員長の質問に小泉首相が答えられなかったこと自体がその不当性を証明しています。
第二にこの戦争は国連安保理の支持がなく、国連憲章と国際法の根拠を持たない無法な先制攻撃そのものです。国連憲章は自国が攻撃された場合か、国連の決議がある場合にしか戦争を始めることを認めていません。イラクのフセイン政権を倒すために戦争をはじめるなどというのは最悪の内政干渉であり、世界の秩序を破壊するものです。
第三に、この戦争がもたらす犠牲ははかり知れないものがあります。国連の内部文書では、人口が二千万人そこそこのイラクだけで戦争による犠牲者が五十万人にのぼり、難民が三百万人も生まれると予想されています。
アメリカが始めようとしている戦争が、これほど無法で道理のない戦争だからこそ、ブッシュ大統領は戦争の根拠を説明できず、小泉首相もその戦争を支持する理由が追及されても答えられないのです。
アメリカはこんな無法な戦争を直ちに中止すべきです。小泉首相は戦争支持を撤回すべきです。
国民にまったく説明がつかないような戦争で尊い人命を犠牲にする、それに手を貸すなどということを、断じて許すことはできません。
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