2003年3月17日(月)「しんぶん赤旗」
深刻化する世界の水問題の解決策をさぐろうと第三回世界水フォーラムが十六日、京都、大阪、滋賀の三府県で始まり、京都市の国立京都国際会館で開会式がおこなわれました。約百八十カ国(地域)・三十七機関の一万人余が参加し、三年ぶりの開催です。
大規模ダム開発や「水道事業の民営化」などをめぐる問題がクローズアップされるなか、二〇一五年までに安全な飲み水が口にできない人たちを半減させることを合意した昨年のヨハネスブルクサミットの目標をどう実現していくかが大きなテーマです。
オープニングの「水と気候変動」をテーマにした会議では、カリブ海などの島しょ国の代表が、温室効果ガスによる気候変動で洪水や水没の脅威が増していることを訴えました。
カリブ海のアンティグア・バーブーダのライオネル・ハースト大使は、奴隷制度の歴史にもふれながら、「巨大な利権とのたたかいをやめれば、(自国の)破壊にしかつながらない」と発言しました。カリブ海の島国では自然災害が一九九〇年には五〇年の十五倍になったと報告。「米国が(先進国の温暖化ガス削減目標を義務づけた)京都議定書から脱退するのは危険をもたらす」とのべました。同大使は「人間には創造する力がある」と、水問題での国際的協力をよびかけました。
バングラデシュ、モザンビーク、オランダの各大臣が、増加する洪水・渇水による災害へのとりくみや国際的協力の大切さを訴えました。
京都市で開幕した第三回世界水フォーラムは、十六日午後から、テーマ別の分科会が始まりました。NGO(非政府組織)のFAN(フレッシュウオーター・アクション・ネットワーク)が開いたパネルディスカッションでは、ダムなどの大規模プロジェクトに、市民社会の声をもっと反映させるべきだ、との意見が相次ぎました。
アフリカのウガンダから参加した環境団体の代表は、同国での巨大ダム開発について報告。「水の確保、水力発電にとって必要性を強調する人も多いが、住民の生活の質を高めたのか、貧困がなくなったのか、をよく考えることが重要だ。私の国の場合は、このプロジェクトに住民が十分参加しきれていない」とのべました。
南米・ブラジルのNGOの参加者は、ダムだけでなく巨大な水路計画も、環境や生態系の危機を招いていることを紹介。「プロジェクトで恩恵を受けているのは、大企業と多国籍企業だけだ」と批判しました。
ダム問題の国際的な市民団体のメンバーは、ダムの必要性についての十分な検討をするべきだと発言。「ダム“マフィア”のいいなりではなく、市民社会の声を重視すべきだ。ダムをつくらなくても洪水を防ぐ方法、地下水の管理や雨水の貯留、有効利用などのダムの代替案を出していこう」と訴えました。