2003年3月8日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の筆坂秀世政策委員長が六日の参院予算委員会でおこなった総括質問の大要は次のとおりです。
自民議員による誹謗・中傷問題 |
筆坂 「医療生協での不在者投票について、政府答弁でも、おおむね適切といっている。党利党略で国会の場を利用するのは許されない」 |
筆坂秀世議員 午前中の審議で自民党の谷川(秀善)委員から、何の証明もなく、わが党があたかも医療生協を組織ぐるみで選挙に使っているかのような印象を与えようとする質問がありました。わが党は、医療生協であれ、どんな組織、団体であれ、日本共産党への推薦、支持を求めたことは一度もありません。ぐるみ選挙というなら、KSD事件あるいは特定郵便局長のOB会のぐるみ、自民党こそ得意中の得意じゃありませんか。
病院での不在者投票について、政府答弁でも、「おおむね適切」に行われ、違法性はないと言っているものを、あたかも犯罪者扱いするような発言もありました。
党利党略で国会の場を利用することは断じて許されてはなりません。今日、坂井衆議院議員の逮捕許諾請求も出されたようですが、後を絶たない自民党の金権腐敗体質こそもっと真剣に自ら正すべきだということを言っておきたいと思います。
イラク攻撃問題 |
筆坂 「(新決議は)事実上、武力行使に道を開く、こういう決議に賛成するのか」 首相 「場合によっては戦争に入らざるをえないという自覚を促すもの」「(武力行使容認かどうか)いわないのが選択」 筆坂「憲法9条をもつ国として新決議の多数派工作ではなくアメリカこそ説得すべきだ」 |
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筆坂 イラク問題について最初に伺います。
大量破壊兵器の廃棄で一番責任があるのは、イラク・フセイン政権であります。世界はイラクの武装解除を求めています。国連決議に照らしても、イラクが自ら大量破壊兵器を廃棄する、武装解除する、こういう責任がある。これはだれしも知っていることです。
問題は、その方法が今問われています。今、国連安保理事会では、アメリカ、イギリス、スペインによる、「イラクは最後の機会を逸した」という新しい決議、そしてフランス、ドイツ、ロシアによる、「今後四カ月間の査察の継続、強化」、こういう覚書が出され、この対立が続いています。
イギリスは、安保理の協議で、新決議の「目的は武力行使を認めることにある」と説明しています。
総理は、新決議を支持するということを明確に述べています。そうしますと、当然これは事実上の武力行使容認、あるいは武力行使に道を開く、こういう決議に賛成だ、そういうこれは新決議である、そう考えておられるということでしょうか。
小泉純一郎首相 このアメリカ、イギリス、スペイン共同の、「イラクは最後の機会を失った」という決議案について、これからどういう協議がなされ、七日のブリクス査察委員長の報告がどのようなものかということを注視する必要があると思いますが、イラクが、昨年の十一月以来、最後の機会を与えるといって、孤立して十分に協力してこなかったことが問題であって、国際社会がこのアメリカ、イギリス、スペイン案を結束して支持することが、真にイラクのフセイン大統領に、これはもう本気で査察に協力しなきゃいかぬなと、これを協力しない限りは、場合によっては戦争に入らざるを得ないというような自覚を促すものであるということにおいて私はこの案を理解し、支持しております。
昨年十一月の一四四一の決議を実行に移せば平和的に解決がされるわけでありますので、最後の段階までイラクに協力すべきだということを働き掛けております。
筆坂 イラクが自ら武装解除すれば武力行使の必要はなくなるというのは、これは当たり前の話ですね、自ら武装解除するんですから。そうじゃないときにはつまり武力行使もあり得るという、そういう決議だというのが総理の認識だということですね。
首相 七日で、ブリクス委員長の報告を見てどういう議論がされるかというのは分からない点もあります。今の時点において賛成、反対がいろいろ出ておりますが、国際政治は複雑怪奇でありまして、外交的な駆け引きもあります。その状況を見てからでも遅くない。
筆坂 問題は、この新決議で、総理は、これでイラクの出方次第では武力行使もあり得ると、そういうことですね。
首相 これは、それに至らないために、今、アメリカ、イギリス、スペインが努力をしている。その努力の最中に右か左かとの結論を出すのは早いと言っているのが日本政府の立場ですよ。はっきりしているんです。(「明快だ」とさけぶ者あり)
筆坂 明快といえば明快ですよ、どっちも言わないんだから。日本政府だけでしょう、そんなのは。
昨日だってフランス、ドイツ、ロシア、三国の外相が集まって、武力行使を容認する決議を通させない。つまり、アメリカ、イギリス、スペインが出している、これは武力行使を容認する決議だと。これは通させない、場合によっては拒否権だって行使すると言っているじゃないですか。国際社会は、あれを武力行使容認決議、あるいはそれに道を開く決議だと見ているんですよ。総理も、直前まで、さっきおっしゃったですね、場合によっては戦争も覚悟するということ。
当たり前の話でしょう。何でそこのところをはっきり言わないのか、はっきり言えばいいじゃないですか。
川口順子外相 茂木副大臣がイラクに行かれて、イラクのアジズ副首相とお話をしました。そして、そのときのイラクの態度についての印象ですけれども、フランス、ドイツ、ロシアが武力の行使をしてはいけないと言ったことがいかにイラクに間違ったメッセージを送っているかということだと思います。今、その世界が一致団結をしてイラクに対して迫る、そのための決議であり、それが今一番必要と考えています。
筆坂 誤ったメッセージだということをおっしゃったね、フランスやドイツやロシアの(いうことは)。ということは、武力行使をやるということをこの(米英の)決議では示すということでしょう。
決議は「最後の機会逸した」と言うわけですよ。つまり、もう査察はやりませんよと。査察中断したら、あと残るのは何かと、武力行使しかないじゃないですか。何で、そういう論理に立った決議だということを総理は素直に認めることができないんですか。
首相 これは、協力しなかったら武力行使されるなと思われることがいい圧力になっているんで、大事なんです。それが逆に、フランスは武力行使しなくてもいいやと取られているところが、イラク間違っていますよと、だから協力しなさいと。
もう武力行使はしないんだという誤ったメッセージを与えちゃいかぬということが、今、イラクが全面的に査察に協力するか大事な瀬戸際なんですよ。
国際社会が割れて結局武力行使はされないんだから協力しなくてもいいんだろうというようなメッセージをイラクに与えちゃいかぬと。
アメリカにも十分、最後の最後まで外交的、平和的、政治的努力によってこれを解決されるように努めるべきだということが、今の日本政府として最善の策だと思っております。
筆坂 そうしますと、総理は、もしアメリカが最終的に武力行使をやるという場合に、今出されている新決議以外に、もう一つ新しい、もっと武力行使を明確に認めた決議が必要だという立場ですか。
首相 それは、まだ決議がどうなるか分かっていないんです。ブリクス委員長の報告があした出ますから、どういう議論がなされるかということを見て判断すべきだと私は言っているんです。
そういう決議がどうなされるか結論が出されない段階で、今どうか、先がどうこう言わないのが、日本の一つの選択なんですよ。はっきりしている。全然二枚舌とかあいまいだとかじゃない。
筆坂 私が二枚舌と言っていないんだけれども、自分で二枚舌だとおっしゃいましたね(議場に笑い)。
私が言っているのは、新決議は武力行使を認めるものなのか、もし武力行使をやる場合には新しい決議が必要なのかと。既に決議案は出ているんですよ。
首相 はっきり言っているでしょう。今、日本が武力行使を支持すべきか支持すべきじゃないかと言う段階ではない。
筆坂 つまり、武力行使を支持する段階もあるということですよね、言い換えれば。結局、そこの一番大事なところを言えないんですよ。だからみんなが二枚舌だと言うんですよ。
もう一つ聞きますよ。総理が盛んにおっしゃるのが国際協調ということです。一体、本当に総理はどこと協調しようとしているのか。例えばアラブ連盟、イスラム諸国会議機構、非同盟諸国首脳会議、ダブり整理すると百二十一カ国ありますよ。全部、イラク戦争反対、平和解決という声上げているでしょう。国連でも六十二の国・組織が集まって公開討論やった。五十カ国以上が武力行使反対、平和解決、査察の継続強化、これが国際的な大きな流れでしょう。賛成は日本とオーストラリアと、ごく一握りです。総理が取っている態度は国際協調じゃない。アメリカ協調、アメリカ追随ですよ。
首相 私は、共産党の立場としてアメリカと日本が協力するとすぐ追随と言いますけれども、そうじゃないんですよ。日本とアメリカとの協調関係は当然重要です。協力関係を維持する、これほど日本の平和と発展にとって重要なことはないと認識しております。それを追随と言うのは勝手な見方であって全然そうじゃない。日本の国益を考えて協力しているんです。
武力行使するのかしないのかと、言わないのが日本の立場なんて言えないんでしょうと。言わないんですよ。言えないと言わないとは全然違うじゃないですか。
見方が分かれるのはいいです。しかし、意見をあなたと合わせる必要ないんですよ。私はこうだと、日本政府はこうだと考えているんだから、そう言ったのを、それはこうだとあまり決め付けるのもやめてくださいよ。
筆坂 私だって総理と意見が一緒になったら嫌ですよ(爆笑)。共産党流の見方って、すぐそう言うんですよ。それを決め付けって言うんです。
これは毎日新聞、「米英追随鮮明、国際社会で突出」。朝日新聞、「なし崩しの米英支持」。みんなアメリカ追従だと、小泉内閣の態度は。そういうふうに見ているじゃないですか。私は本当に今真剣に考えなきゃいけないと思うんです。
国連の内部報告によれば、五十万人が戦闘に伴う直接の犠牲になる、国内避難民は二百万人に上る、五歳未満の子ども、妊娠中もしくは授乳中の女性が基本的な医療手当ての欠如の犠牲になる、その数は五百二十万人以上。こういう、これは本当に悲惨な戦争になる、九一年の湾岸戦争の比じゃないと。だから、フセインが悪い、大量破壊兵器を廃棄しなきゃいけない。しかし、戦争だとこういう犠牲が出る。だから、あくまでも粘り強く査察の継続、強化という声が上がっているんじゃないですか。日本は憲法九条を持っている国ですよ。私は、そういう国だからこそ、やはりそういう立場で努力すべきだ。
それで、国際社会の一致とおっしゃる。確かに安保理も割れている。しかし、だれが割っているんですか。アメリカが何が何でも単独でだって武力行使やると言うから割れているんですよ。だったら、多数派工作なんかやらないで、アメリカを説得すればいいじゃないですか。何でそういう発想が出てこないのか。それでは世界からやっぱり日本はアメリカ追従だと言われても仕方がないというふうに思いますよ。
首相 イラクが協力すれば何でもないじゃない。国際社会、割れませんよ。アメリカが割っているって、とんでもない。イラクがどれだけ他国民を傷付け、自国民に対して毒ガスを使って、化学兵器を使って苦しめているか。しかも、自らの政権を批判を許さないんですよ。そういう国なんです、イラクというのは。イラクが国連の決議を守れば、国際社会なんか分裂しませんよ。
筆坂 大声で何言っているんですか、だれもフセインがいいなんて言っていないじゃないですか。大量破壊兵器は廃棄しなきゃいかぬ、フセインが悪い、冒頭から言っているじゃないですか。国際社会で国際的圧力を一緒に掛けよう、これは安保理だって一致しているんですよ。大量破壊兵器廃棄しよう、一致しているんですよ。イラク、フセインが悪い、一致しているんですよ。していないのは、査察の継続強化か、直ちに武力行使か、ここで割れているだけでしょう。だから、これはアメリカが割っているんですよ。
戦争になれば大変なことになる、それ支持すれば、日本は大変な過ちになる、このことを申し上げておきたい。
公共事業受注企業からの選挙献金問題 |
筆坂 「(江藤議員への資金通知文)禁止された特定寄付にあたる疑いが強い」 |
筆坂 次に、公職選挙法が禁じた公共事業受注企業による選挙献金問題について伺いたい。
衆議院でも志位委員長がリストを明らかにしました。その中に自民党の江藤隆美衆議院議員への献金問題がありました。資料を配布してください。
江藤議員は二〇〇〇年の総選挙で、国の公共事業を請け負った企業十三社から二千四百八十八万円、うち選挙期間中だけでも実に二千百五十八万円受け取っています。ほとんどが選挙期間中です。これは選挙のときには増えています。
総務省に聞きます。国発注の公共事業受注企業から公示期間中に選挙の資金を受け取った場合、公選法上、どういう罪になりますか。
高部正男政府参考人(総務省選挙部長) 公職選挙法百九十九条及び第二百条は、国または地方公共団体と請負その他特別の利益を伴う契約関係にある者等が選挙に関し寄付をすること、これらの者に対して寄付の勧誘、要求すること及びこれらの者から寄付を受領することを禁止しています。
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筆坂 選挙のときに受け取った献金が選挙のための資金ということであることは、その疑い濃厚だと思います。
ここに江藤さんの選挙区である宮崎二区のある地区の建設業協会が出した「事務連絡」という文書があります(資料参照)。平成十二年(二〇〇〇年)六月十三日付です。地区建設業協会事務局長からで、建設会社名が書いてあります。「政治資金について(通知) 先に協議のありました、標記の件につきましては下記により納入下さるようお願いします。 振込先 自由民主党宮崎県第2選挙区支部 支部長江藤隆美 口座番号 宮崎銀行 日向東支店」、番号は言いません。
これは明らかに特定寄付の重大な疑いがあると思います。いかがでしょうか。
森山真弓法相 お尋ねは捜査機関の具体的活動にかかわる事案でございますので、お答えはいたしかねます。
一般論として申し上げれば、検察当局においては、常に厳正、公平、不偏不党の立場から、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて適宜適切に対処するものと承知しております。
筆坂 たとえ政治資金として処理されていたとしても、それが実質的に選挙のための献金ということであればこれは特定寄付に当たるというのが、長崎県連での事件などでも明らかです。江藤さんの場合には、自民党宮崎第二選挙区支部から江藤さんの選挙運動費用に入っています。収支報告を見ますと二千三百四十万円。ほぼ金額が一緒です。当然、その一部が選挙資金として使われたということは明らかだと思います。我々も実際、いろんな業者に当たってみました。献金した業者はこういうことも言っています。「通常はやっていないから、選挙のときにぐらいは献金をやった」ということをおっしゃっている。
ですから、これが特定寄付、禁止された特定寄付である疑いは濃厚だと思います。
長崎では前の(自民党)県連幹事長が逮捕されました。県会議員の方だったら逮捕されるけれども国会議員は逮捕されてはならない、そんなことがあってはならないと思う。総理の見解をお伺いしたい。
首相 総理大臣の立場として、特定の人に対して捜査しろとかしないとかいうことは、とても言える立場じゃないし、言ってもいけないということは承知しております。
その法律についてどう判断するかというのは、これは法務省なりあるいは当局の判断だと思います。
大島農水相疑惑 |
筆坂 「(大島農水相への献金)公示日から投票日に大半が入る。選挙献金であることは明白」 農水相 「政治資金として適切に処理」 筆坂 「(そんな言い分)通るなら大変なザル法だ。総理自らただすべきだ」 |
筆坂 大島大臣に伺います。
大島大臣も、二〇〇〇年の総選挙で自民党青森県第三支部、ここが国の公共事業受注企業六社から一千七百万円受け取っています。いずれも総選挙の公示日あるいはその前後の入金です。これは明らかに選挙のための献金ということではないんですか。
大島理森農水相 政党活動費として、あくまで政治資金としてちょうだいしたもので、政治資金規正法にのって適切に処置しております。
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筆坂 そこで、最高裁判所に来ていただいていると思いますのでお伺いします。
今年の二月十二日に熊谷組に対する株主代表訴訟判決が福井地方裁判所民事第二部で言い渡されています。
この判決で、「争点3」として、本件政治資金の寄付が公職選挙法に違反するかについて判断を示しています。その中で、献金と選挙の時間的関係あるいは献金の反復継続についてどのように述べていますか。紹介してください。
園尾隆司最高裁判所民事局長 福井地方裁判所の判決について説明いたします。
この判決は、公職選挙法百九十九条一項の「選挙に関し」という要件につきまして次のように説示をしております。
「『選挙に関し』とは、選挙に際し、選挙に関する事項を動機とすることをいい、(1)特定の選挙について、その公示または告示がなされた後、あるいは、一定の公職の任期満了または議会の解散などに基づく選挙の実施が見込まれるという時間的関係においてなされ、また、(2)その特定の選挙において、寄付した政治資金を選挙費用に供する等の目的をもってなされた寄付であることを要すると解される」
このように判示しており、具体的な事件につきましては、その具体的判断として、「本件政治資金の寄付の中には、特定の選挙に時間的に近接してなされたものがあるが、他方、熊谷組は定期的に反復継続して政治資金の寄付を実施していること、特定の選挙と近接した時間的関係にないものも少なからず存在していることからすると、本件政治資金の寄付は全体として特定の選挙の有無にかかわらず実施されたものと推認することができ、特定の選挙に近接した寄付についても、当該選挙に関する目的をもってなされたと認めるに足りる証拠はないことからすると、本件政治資金の寄付は、いずれも選挙に関しなされたものとまでは認められない」。以上のように説示をしております。
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筆坂 そのとおりですね。
福井地裁判決はこう言っているんですよ。熊谷組の場合は、近接したものもあるけれどもそうでないものが多いと。しかも、近接というのは二カ月ぐらい離れているんですよ、選挙と。しかも、熊谷組のは反復継続してやられていると。つまり、定期的にやられていると。ずっとないのに、いきなり選挙のときだけじゃないと。だから、熊谷組の場合には、これは特定寄付に当たらないと、こういう判断なんです。
大島さんの場合はどうか。きょうパネルを持ってきました(表参照)。
まず反復継続という点でいいますと、これ名前を出していませんが、C社は九七、九八、九九年の三年間ゼロ、ゼロ、ゼロと来て選挙の年には三百万円。D社の場合には、これまた三年間ゼロで三百万円。E社の場合にもゼロ、ゼロ、ゼロと来て二百万円。F社は九七年に三十万円あるけれども、ゼロ、ゼロで二百万円。B社の場合は百六万円、二百三十六万円、前年三十六万円だけれども、選挙の時期二百三十六万円。一番上のA社はゼロ、三十六万円、四十八万円と来て五百四十八万円、これはぐんと増えていますよね。
ですから、ほとんどがこれは反復していない。定期的でもない。選挙のときだけに行われている。つまり、この福井判決でいう反復継続していないということに見事に当てはまるわけです。
献金された日はどうかといいますと、六月十三日がこの選挙の公示日です。その日に三百万円、その前の日に二百万円、五日前に五百万円、三日後に三百万円、二百万円、二百万円ですよ。近接なんてもんじゃない。公示日から投票日に大半が入る。時間的関係という点で見ても、密接に結び付いているということです。
つまり、福井地裁の判決が挙げた二つの要件、これに見事に当てはまっている。政治資金として受け取ったとおっしゃるか分からない。しかし、政治資金として受け取ったが、そうやって処理すればもう絶対に選挙資金ではないんだという証明には何もならないんです。いかがでしょうか。
大島 献金はあくまで政治資金として政治資金規正法にのって適切に処理しておりますし、そして政党活動に対する寄付だと思っておりますし、私から依頼したこともなければ、まさにそのことについては後ほど知ったわけでございますが、私はそのように思っております。
筆坂 そういうもう答弁、通用しないですよ。選挙の公示の日ですよ。しかも、選挙事務所に持ってきたという、そういう証言まであるじゃないですか。選挙の公示の日に、あるいは選挙が始まってから選挙事務所に行って、それは自民党青森県第三支部に経理上は入っているかもしれません。しかし、それは単なるトンネルじゃないですか。
公示の日、公示のごく、二日前ですか、あるいは何日か、三日後、これはどう考えたって受け取ったのは選挙事務所だと。何でこれで一般的な政治資金ですか。しかも、前の年もその前の年もその前の年もなかった。これは通用しないでしょう。
大島 政党活動は三百六十五日行われるものだと思いますし、またそういう意味で政党活動費として皆さんの御芳志をいただいたものと、このように思っております。
筆坂 もうそれしか言えないんですよ。何の説得力もない。
私も八戸に調査に行きました。地元秘書の方も「選挙頼む」と言ってこられたという話も随分聞きましたよ。
これを一般的な政治資金だと、これでもし通るんだったら、この法律は大変なざる法だということになってしまうじゃないですか。こんなことは絶対許されてはならないと思う。
森山法相 犯罪の成否というのは、収集された証拠に基づいて司法の場で判断されるべきものです。一定の事実関係を想定して、それが特定の罰則に該当するか否かにつきまして答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思います。
筆坂 総理に伺います。
ここまで客観的に見て問題がある献金を現職の小泉内閣の閣僚が受け取っている。今の答弁では、これはだれも納得されないと思います。ともかく、ただ政治献金です、政治資金ですと言うだけでは、納得しようがない。福井地裁判決の基準に照らして、これは本当に重大な疑いがあります。
総理自身が実際にどうなのか、問いただしたっていいし、それだけじゃない、いろんな疑惑が噴出しています、大島大臣には。私は、いつまで一体こういう疑惑を抱えたまま閣僚として置いておくのか。総理のご意見を聞きたい。
首相 この資料によりますと、選挙に関する寄付を禁じられている企業からの献金は、大島大臣は受け取っていないと言っているんです。だから、それが私は、法律の解釈、今こう求められても、具体的な裁判所の解釈がちょっと不案内ですから分かりませんが、そういう点については大島大臣の言い分というものもあると思う。よく聞いていただきたいと思います。
筆坂 ですから、幾ら政治資金として処理、処理しておったとしても、それが選挙の公示日であるとか、あるいは選挙期間中であるとか、そういう選挙そのものと非常に密接な時間的関係があるという場合であるとか、あるいは選挙の年にはあるけれどもその前三年間ないと、反復してもいないし定期的でもないと、そういう場合には特定寄付に当たるという可能性が大だというのが、福井地裁で、判決として下されたわけです。
ですから、重大じゃないかということを言っているんです。総理が自ら調べる、あるいは一体いつまでこういう金権疑惑を抱えた大臣を小泉内閣に閣僚として置くのかということを聞いているんです。
首相 大島大臣につきましては、今、農林水産大臣としてもうたくさんの問題を抱えていますから、この職務を全力を尽くしてもらいたい。そのような政治資金とあるいは選挙に関する寄付という区別につきましても、なかなか個別の問題によって事情が違う面もありますので、今、政治資金に関する在り方については改善措置を講じなきゃならないという認識で自民党も一致しているわけです。与党、野党それぞれ提案がありますので、このような今、不祥事が起きて、今日も議員に対する逮捕許諾請求というものが出ている状況にかんがみまして、改善措置を講じなきゃならないと思っていますので、今国会、率直に各党各会派、胸襟を開いて改善措置を講じていかなきゃならない。
さらに、もっと分かりやすく政治資金について国民から協力を得られるような形にしていきたいと思っております。
筆坂 総理が自ら、現職閣僚に疑惑があるわけですから、政治家として総理がやはりきちっとただす、あるいは究明するということを是非やられるべきだということを申し上げておきたいと思います。
サービス残業 |
筆坂 「労基署あざむく、スズキのパソコン勤務記録改ざんは悪質」 首相 「サービス残業なくすよう政労使一体で解決が必要」 |
筆坂 次に、サービス残業問題について伺います。
この間、サービス残業について、労働者の告発あるいは労働基準監督署の監督官の立入調査等々によってサービス残業の支払いが行われてきました。二〇〇一年四月から二〇〇二年の九月までの一年半で、サービス残業が支払われた企業数、労働者の人数、金額はどうなっているでしょうか。
松崎朗政府参考人(厚労省労働基準局長) 平成十三年(二〇〇一年)四月から十四年の九月三十日までの一年半の間の監督指導の結果、未払いになっておりました割増し賃金につきまして是正指導した結果、一企業当たり百万円以上のものを取りまとめたわけですが、百万円以上支払った企業数は六百十三、対象になった労働者数は約七万一千三百人、払われた合計額は約八十一億三千八百万円という状況です。
筆坂 坂口大臣、これはまだ氷山の一角だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
坂口力厚労相 サービス残業につきましては、訴えが増加をしてきていることだけは間違いがございません。しかし、なかなか表面に出てこない問題もございますので全体像を明らかにすることはでき得ませんけれども、最近増加していることは間違いございませんし、サービス残業は法律違反でございますから、厳しく取り締まっていきたいと思っております。
筆坂 サービス残業は、大臣が言ったように犯罪です。働かせて賃金払わないわけですから。しかし、大臣も言ったように、減るどころか増加する傾向にあると、いっこうに改まらない。これは本当に深刻な問題です。
具体的に伺いますけれども、自動車メーカーのスズキという会社がありますが、過去にサービス残業問題などで労働基準監督署が調査に入っておる、その内容について簡潔で結構ですから報告をしてください。
松崎 スズキ株式会社、本社でございますけれども、所轄の監督署におきまして本年の二月十八日に直近では臨検監督を実施したという事実はございます。
筆坂 スズキというのは、サービス残業では札付きの企業でして、過去に何度か改善指導と是正指導を受けています。過去には残業時間を改ざんするために修正液を使っていたと。私、入手しましたけれども、今後白の修正液で是正するなという内部文書まで出ています。
二月十八日に最近では入られたわけですね。これはどういう目的だったんでしょうか。
松崎 監督指導の目的は、やはり何か労働基準法等に違反があった場合に、きちんとそれを直していただく、今後そういったことを起こさないようにということでございますので、中身につきましては公にしないということで、ご理解いただきたいと思います。
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筆坂 私のところにスズキの労働者から内部告発がありました。それは、昨年の十二月に、年明けると、つまり今年に入ると労働基準監督署が入ることになっている。そのために慌てて対策が取られたというんです。つまり、労基署が二月十八日に入ったわけですけれども、その立入調査を欺こうという対策が取られたというんです。
資料を配ってくれますか(図参照)。
このスズキでは今年の一月からそれまでの勤務記録が手書きからパソコン入力に変わりました。そこで大変なドジに気付いた。それは何かといいますと、資料を見ていただければ分かります。左側の方が改ざん前というか対策前の勤務記録表です。これを見ますと、勤務開始時刻、勤務終了時刻とともにパソコンの処理時刻が出ることになっています。それがレコード作成日時だとか、あるいはレコード更新日時だとかいう名前になっています。
サービス残業をさせようと思いますと、例えば、十七時半、勤務終了時刻、パソコン入力では十七時半と例えば入れます。しかし、実際には午後十時、二十時まで働いています。それで二十時にパソコンをオフにする、落とす。そうしますとパソコンの終了時刻は二十時と出ちゃうんです。勤務終了時刻は十七時半というふうにたとえ残業付けさせないよというので入れたとしても、パソコンの方は正直に二十時にパソコンの処理は終わりましたと出ちゃうわけですね、レコード更新記録のところへ。これじゃ労基署が入ったら一目瞭然分かっちゃうわけです。自分で入力した勤務終了時刻は十七時半になっている、パソコン終わったのが二十時になっている。
そこで、そのパソコンの処理時刻は出ないように勤務記録を変えたというのが右側です。レコード作成日時というのがなくなっていますでしょう。この変更するときのプログラムもある。これがそれです。「レコード作成日時削除対応専用」(資料参照)。
これは本当に悪質だと思う。こういうことまで今やっている。労基署がこういうのを発見しましたか。
松崎 いずれにしましても、監督署におきましては、労働基準法等関係法律の違反が認められれば、きちんとその所轄の監督署においてその改善に向けて必要な指導を行っているというところでございます。
筆坂 これは発見できていない。それはそうなんです、発見されないようにやったんですから。
ですから私は、やはりもう一度直ちに入ってほしい、そして実際どうなっているのか調査をして必要なやっぱり改善をやってほしいと思う。いかがですか。
松崎 いずれにしましても、実際の現場の監督官、監督署に私は信頼して任せております。
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筆坂 総理、そのスズキがこういう「スズキ企業倫理規程」というのを設けています。最近どこでもそういう、こういうものを作っています。ここで、代表取締役会長、最高経営責任者の鈴木修さんは何とおっしゃっているかといいますと、「企業は社会的存在として法令等を順守(する)」、「ルールを守らない者は社会からその存在を否定される」、「利益を…追求するあまり…ルール違反は…許され(ない)」と。言っていることは非常に正しいんですが、やっていることは全く正反対だ。
総理、このサービス残業問題というのは、もう二十年来国会でも問題になっているんです。しかし、隠ぺいされてなかなか問題が解決されない。もう私は、二十一世紀に入って、もうサービス残業なんかはない日本、やっぱりこういうようにする必要があると思う。そのためには、もちろん政府にも頑張ってもらわなきゃいけない、経済界が何よりもやっぱりその気になる必要がある、そして、労働界も国会も挙げて取り組む必要があると思う。いかがでしょうか。
首相 企業の社会的責任、また労働者の生活改善、そういうことを踏まえましてこのサービス残業をなくすように、今後も政労使一体となって解決していく必要があると思います。
筆坂 これは経団連の、日本経団連の出している経営タイムスという新聞です。これに奥田会長は、サービス残業について聞かれてこう言っているんです。サービス残業についての認識について、「大企業ではときどきそういう問題が起こっていると聞いている」、「サービス残業はあってはならないことだ」と。私、白々しいと思いました。衆議院でも問題にしましたけれども、トヨタだって、その関連含めれば年間総労働時間三千六百五十時間。総理も聞かれて「異常だ」とおっしゃった。そういうことをやっておるんですよ。
私は本当に、今、総理がおっしゃったように、本当に挙げてこれはなくす必要がある、そのためには、この際、スズキの鈴木修会長あるいは日本経団連の奥田さんにも国会に(参考人として)出てきていただいて、別に糾弾するんじゃないんです。本当に真剣に、どうやってサービス残業をなくすかです。参考人として、理事会でお諮りいただきたいと、こう思います。
陣内孝雄委員長 その取扱いを後刻理事会で協議いたします。
筆坂 終わります。