2003年3月7日(金)「しんぶん赤旗」
四日の東京都議会予算特別委員会で、日本共産党の吉田信夫都議が数々の憲法否定発言を追及したのに対し、「あんな憲法認めていない」という重大発言を重ねた石原慎太郎知事は、こう言い放ちました。さらに、イラク攻撃容認、人権じゅうりんの“ババア発言”を取り上げて追及した吉田都議は「石原知事には首都の代表の資格はない」と痛烈に批判しました。石原知事の暴言の実態を見ると−−。
「(アメリカのイラク攻撃を)結局は容認」「私は基本的にアメリカが我々の意思も代行して、イラクという非常に危険な存在というものを世界の平和のために淘汰するというのは、間違った、一つの戦略とは思いません」(四日、都議会予特委)
アメリカのイラク攻撃をめぐって世界が緊張するなか、TBSラジオの番組(二月二十五日放送)で「アメリカの行動を容認せざるをえないし、容認すべきだと思います」とのべた石原知事の発言をめぐり、日本共産党の吉田信夫都議は四日の都議会予算特別委員会で、知事の発言は、都民の平和の願いに背くと厳しく追及しました。
石原知事は、あれこれ弁解をしましたが、「結局は容認」と発言。そればかりかイラクの「淘汰(とうた=不要なものを取り除くこと)」というホロコースト(大量殺りく)を連想させるような重大発言までしました。
石原氏の反平和の姿勢はこれが初めてではありません。都議会でも中国や北朝鮮を敵視し、軍事力の行使や有事法制整備をあおる突出した好戦的な態度をとってきました。そうした特異な立場を都政から発信し、日本を右に引き寄せようとしていることに、石原知事の危険性があります。
「(憲法)九九条(公務員の憲法尊重擁護義務)違反で結構でございます。私はあの憲法を認めません」(四日、都議会予特委)
石原氏は知事に就任後、議会内の答弁に限っても、多くの反憲法の暴言を口にしてきました。(別項参照)
とりわけ昨年十二月の都議会本会議での答弁は、国会議員の三分の二による発議、国民投票での過半数の賛成という厳密に定められた改正規定を“踏み破れ”と求める重大なものでした。
日本共産党の吉田都議は、憲法九九条違反であることを明らかにして、「知事の資格が問われる重大な問題」と迫りました。
石原知事は激高し、ついにその反憲法の本音をこれ以上ないほど明確に口にしたのです。
「私は、私なりの印象のことを受け継いだだけですから」(四日、都議会予特委)
一昨年十一月、石原知事が「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ」などと、女性週刊誌で述べた女性蔑視(べっし)発言は、女性団体・個人が提訴するなど、女性の憤激をかいました。
石原知事は、発言が社会問題化すると、「松井孝典東大教授のいったこと」と逃げ、他人の発言を装ってきました。四日の都議会予特委では、吉田都議がその弁解を根底からつきくずしました。
石原知事によって、引用元にされた松井氏本人は、雑誌のインタビューで「私の言っていることとまったく逆」と述べています。(『自然と人間』二月号)
実際に、松井氏が現生人類が発展した理由について立てている“おばあさん仮説”とは、むしろおばあさんの存在が人類の繁栄につながったというものです。(別項参照)
石原知事と対談したテレビ番組でも、「『おばあさん』というのが存在するのは、現生人類だけ。これが、いろんな意味で人口増加をもたらすんですよ」(MXテレビ 〇一年七月二十一日放映)と話しています。
これを聞いて百八十度逆さまの「ババァ」発言になるというのは、石原知事が骨のずいまで「女性蔑視」の体質だという証明にほかなりません。
石原知事のゆがんだ人権感覚は女性蔑視にとどまらず、「三国人」発言、障害者に「人権あるのか」発言とくりかえされてきました。(別項参照)
石原知事の反人権体質が、東京都民にとって深刻なのは、その切り捨て姿勢が、都政の大本に持ち込まれ、全国でも例のない四年間で三百三十億円の福祉予算の大幅削減など、都民のための施策の大後退に結びついていることです。
都民が主人公の都政へ、石原都政の転換は待ったなしです。
「今日の日本にとって、日本人にとって、歴史的な正統性をもつか持たないかということを、私は国会で決めたらいいと思う。私がもし総理大臣だったらこの提案をします。そしてもしそれが51対49で可決されたならば、国民の総意として、この憲法は歴史的な正統性を持たないということですから、あとはですね、それをもとに五六条(正しくは九六条)などを無視してですね、私は新しい憲法をつくっていく作業を、改定ではなしに行うべきだと思う」(02年12月11日、本会議)
「憲法は押しつけられ、日本の教育は彼らの手によって改ざんされ、そしてまた軍隊というのは廃止されて、警察予備軍から今日の自衛隊になってきたわけであります」(00年7月5日、本会議)
石原知事は99年9月17日、都立府中療育センターを視察した後の記者会見で、入所している重度・重症の心身障害児について、「ああいう人ってのは人格あるのかね」などと発言し、障害者とその家族から大きな批判を浴びました。 この発言に対し、「東京都障害者施策推進協議会」(会長=大坪哲夫東京都社会福祉協議会参与・元都衛生局長)は同10月25日、「問題のある発言」だとする異例の意見書を提出しました。
「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典がいってるんだけど、“文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ”なんだそうだ。“女性が生殖能力を失っても生きてるってのは、無駄で罪です”って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって…。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね(笑い)。」(『週刊女性』01年11月6日号)