2003年3月5日(水)「しんぶん赤旗」
四日の衆院本会議でおこなわれた二〇〇三年度予算案にたいする松本善明議員の討論(要旨)は次の通りです。
日本共産党を代表して政府予算三案に反対、野党共同提出の予算組み替え動議に賛成の討論をおこないます。
イラク問題は二十一世紀の世界のあり方にかかわる重大問題です。いま、査察の継続強化でイラクの大量破壊兵器の武装解除をはかり、問題を平和的に解決するという巨大な世界世論の前に、ブッシュ政権が孤立を深めている情勢です。ところが小泉内閣は、武力行使に道を開く新たな国連決議のために奔走し、世界の反戦平和の声を「イラクに誤ったメッセージを送ることになる」と敵視しています。
「政治とカネ」をめぐる問題も重大です。大島農水相疑惑は、衆院法制局の私物化にまで及び、小泉内閣の信頼性に直接かかわる大問題になってきました。自民党長崎県連事件は献金問題で自民党を揺さぶる重大事件となっています。わが党は、予算委員会で小泉首相、森山法相を含む閣僚や政権与党幹部ら十九人が公共事業受注企業から「選挙期間中」に献金を受けたことを明らかにしました。小泉内閣はこれらについて、何ら自浄能力を示しませんでした。
小泉政治の行き詰まりと破たんは、経済・財政のかじ取りにおいてとりわけ深刻であり、「構造改革」路線の破たんはいまや明白です。日本経済を破局に導いた小泉内閣に予算編成の能力はありません。
政府予算案に反対する第一の理由は、社会保障分野の負担増・給付減と庶民増税で国民に莫大(ばくだい)な負担増を押しつけ、国民生活と日本経済に破壊的な打撃をもたらすものだということです。国民負担増は、社会保障の負担増と給付削減で二・七兆円、庶民増税は地方税を含めて一・七兆円、合計年間四・四兆円に達します。
医療費の負担増はとりわけ深刻です。昨年十月に老人医療改悪が施行され、このうえ患者負担を三割に引き上げれば、全国民の健康にとって重大な事態です。
野党四党は健康保険本人三割負担を凍結する法案を提出しましたが、審議さえ拒否する与党の姿勢は、国会の機能を空洞化するものであり許されません。
反対理由の第二は、「不良債権処理の加速化」政策が中小企業をますます苦境と倒産に追い込み、その結果、不良債権問題の解決そのものも遠ざける金融政策と一体だからです。小泉内閣は「二―三年」と期限を区切って無理やり不良債権を処理するやり方をやめ、「借り手企業の育成」という銀行本来の機能を復活させる金融政策に転換すべきです。不況と銀行の「貸しはがし」、金利引き上げの被害をもっとも受けている中小企業にたいする仕打ちは許されません。
第三の理由は、深刻な雇用情勢をさらに悪化させ、失業者の生活保障に背を向けた予算ということです。政府は来年度の「経済見通し」で完全失業率を5・6%と見込んでいます。史上最悪の失業率をさらに悪化させることを前提とした政治をすすめる政府が世界のどこにあるでしょうか。
第四の理由は、無駄な公共事業が放置され、浪費の歳出構造にメスが入っていないことです。関西空港二期工事も諫早湾干拓、川辺川ダムなど問題工事とともにそのまま続行です。小泉首相が掲げた「国債発行三十兆円」「公共事業10%削減」「道路特定財源の見直し」などは、二〇〇二年度補正予算の編成、すなわち四兆円もの国債発行と一・五兆円の公共事業積み増しによって名実ともに破たんしました。軍事費が手厚く措置されていることも容認できません。
日本共産党は、「小泉改革」を中止し、国民の暮らし中心の予算への組み替え要求を提案しています。その基本方向は「国民生活の再建なくして日本経済の再建なし」です。この方向への転換がいま切実に求められています。