日本共産党

2003年3月2日(日)「しんぶん赤旗」

主張

大学法人化法

国立大を解体、自主性を奪う愚


 小泉内閣は、「国際的な競争に勝つため」と称して、国立大学法人法案を国会に提出しました。国立大学制度を解体し、大学の自主性を奪う重大な問題をもっています。

「国立」は名ばかりに

 法案は、国立大学法人が、国立大学を設置するとしています。国立大学の設置者をこれまでの国から法人に代えることで国が負うべき財政負担の責任を法人に転嫁します。「国立大学」といっても名ばかりです。

 国の財政負担が弱まれば、世界一高いといわれる学費のいっそうの値上げは避けられず、高等教育を受ける機会の均等は崩壊します。すでに文部科学省は、最大35%までの値上げ幅を明らかにし、値上げを誘導しています。

 多くの国が大学財政を手厚く保障し、学費を無料か低額にしている世界の大勢に逆行するものです。

 文科省は、「大学の自主性が拡大する」といいます。

 しかし法案では、大学が自主的におこなうべき教育研究や運営に対し国が目標を定め、その達成度を評価します。その結果に応じて教育研究予算を配分、業績が悪ければ法人の長(学長)の解任もできます。

 自主性を拡大するどころか、国家統制を強め、大学の自主性を根こそぎ奪うものではありませんか。

 大学にはふさわしくない独立行政法人のしくみをもちこんだ大学制度は世界に例がありません。文部科学省の国立学校財務センターの調査報告(二〇〇〇年一月)でも、米、英、独、仏の四カ国のうち、「政府による指示、実行計画の認可、変更命令というような『独立行政法人』的手法を採っている例はない」といいます。

 法人化後の大学法人の運営は学長が法人経営の責任と強大な権限をもち、教育研究に通じていない学外者の深い関与によっておこないます。教授会からの権限はく奪をはじめ、教育研究の当事者である教職員は法人経営にものがいえなくなるおそれがあります。

 また、経営は「企業会計原則」にもとづき、民間経営の論理によって運営されるなど、およそ「学問の府」とは縁遠いものに変質させられることになります。

 これでは産業にすぐ役立つような研究や、国が重点投資する分野だけを偏重することが予想され、学術、文化の発展を支えてきた知的基盤を崩し、「学問の自由」を揺るがしかねません。

 政府は、国立大学に続き公立大学でも法人化を可能にするため、地方独立行政法人法案を今国会に提出するとしています。国公立大学が法人化すれば、私立大学でも経営優先がいっそう強まり、学費値上げや非民主的運営がひろがるなど、深刻な影響がでるでしょう。

 学術、文化の関係者から、国公立大学の法人化に厳しい批判があがっています。一月二十四日に発表された「大学改革を考えるアピール」に賛同し、メッセージを寄せた作家の柳田邦男さんは、「学術研究と教育は、画一的なコスト効率主義に支配されると殺される」と深い憂慮をのべています。

改革は国民の立場で

 国民の立場からの大学改革は、教育研究条件の抜本的な向上と、大学の「生命」ともいうべき独立性、自主性の保障を土台にすえ、その上で、大学関係者をはじめひろく国民各層の意見を反映させておこなうべきです。日本共産党は法案の成立を阻止し、国民の立場からの大学改革をすすめるため力をつくします。


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