2003年2月19日(水)「しんぶん赤旗」
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「しんぶん赤旗」からの大量の無断転載。公明党・創価学会のまとめ買い。出版社の徹底した正体隠し…。そんな謀略手法で出版された日本共産党攻撃の本が電車内のつり広告で大宣伝されています。内容は公明党機関紙とうりふたつで、正体隠しの謀略手口も公明党・創価学会の手法とそっくりです。
この本は『拉致被害者と日本人妻を返せ 北朝鮮問題と日本共産党の罪』(「未来書房」刊)。内容は公明新聞と同一の根拠のない日本共産党への誹謗(ひぼう)中傷です。
たとえば、公明新聞が「拉致解明を妨害した日本共産党」「八八年の共産質問が初めて、と大宣伝するが」などと書けば、本は「拉致調査を“妨害”しつづけた日本共産党」「初めて国会で取り上げたというが…」とするなど言葉づかいも似ています。これらの中傷にいかに根拠がないかは日本共産党のグリーンパンフ「北朝鮮問題 『反省』すべきは公明党ではないのか」がくわしく明らかにしているとおりですが、本の手法も問題です。
二百五十七nのうち、約半分の百二十三nが「資料集」と称する「赤旗」からの無断転載。「赤旗」の著作権に属するものを大量に無断転載するのはきわめて重大な行為です。
電車のつり広告は「各地でベストセラー 緊急増刷」などと宣伝していますが、組織買いが目立ちます。関東のある書店では、昨年十二月に創価学会から依頼があって、二百部を公明党に届けたといいます。書店を通じて大量買いすると一気に「ベストセラー」にすることができるからです。
この本を出版した株式会社未来書房の正体も奇々怪々です。
まず本(初版)に記載された住所である「東京都新宿区新宿7の16の12」には未来書房という会社そのものが存在しません。記載の電話番号にかけると「未来書房です」と名乗るものの、用件を取り次ぐだけの事務代行会社でした。
つり広告では、出版社所在地が「東京都新宿区西新宿7の16の12」と“訂正”されましたが、これは前出の事務代行会社の住所。この代行会社は未来書房と契約を結び、電話や郵便などを取り次ぐだけだと説明します。
本には国際標準図書番号(ISBN)が記載されており、これから出版社所在地、電話、登録日がわかります。
未来書房の所在地は本には記載されていない東京都立川市幸町四―五二―一にありました。部屋番号を訪ねるとそこは公団賃貸住宅。表札には「海野」「未来書房」などとあります。
確かに会社登記をみると未来書房の代表取締役は海野安雄氏。「本店」も海野氏の自宅。つまり、未来書房は、居宅用の公団賃貸住宅に「本店」を置く「出版社」というわけです。
ISBNで登録された電話にかけると「移転のため電話番号が変わりました」と前出の事務代行会社の電話にもどる仕掛け。つまり未来書房は、大々的なつり広告を出す一方で、専用の電話も事務所もない――。そんな奇怪な「出版社」なのです。
本紙は唯一の手がかりである海野氏宅を繰り返し訪問して取材を申しこみましたが、家人は「(海野安雄氏は)いない」と繰り返し、編集局の電話番号を伝えても何の返事もありません。
また、本には著者の経歴や連絡先、印刷所などもいっさい記載していません。