日本共産党

2003年2月14日(金)「しんぶん赤旗」

国立大学制度を解体し自主性を根こそぎ奪う

「国立大学法人法案」概要の問題点

改正 充


 文部科学省は、十日の国立大学学長会議で、今月下旬に国会提出する「国立大学法人法案」の「概要」を示しました。その内容は、「国立大学法人化」が大学の教育研究の基盤を掘り崩し、自主性を根こそぎ奪う重大な問題をもつことを、極めて明瞭に示しています。

国の財政責任を「法人」に転嫁

 第一は、文部科学省が「大学の特性をふまえた制度」とのべていたにもかかわらず、大学にはなじまない独立行政法人のしくみを貫いていることです。

 「概要」は、昨年三月の文科省調査検討会議の「最終報告」が「法人化後も大学の設置者は国」としたのを変更して、「国立大学法人」(以下、「法人」)が「国立大学を設置する」としました。同時に、学校教育法で定める国立大学の設置者を「国」から「国(国立大学法人を含む)」にするといいつくろっています。これは、国立大学の設置者として国が負う財政負担の責任を、「法人」に事実上転嫁することにほかならず、国の責任をあいまいにするものです。実際、国による財源措置は「独立行政法人通則法の必要な規定を準用する」としており、必要な金額を国が「交付することができる」(通則法第四十六条)という程度にすぎなくなります。

 他方で、文部科学大臣が「法人」の中期目標を定めるにあたって、「最終報告」では各大学の原案を「十分に尊重し」としていたのを、「配慮する」にとどめました。中期目標は「教育研究の質の向上」「業務運営の改善及び効率化」などにわたっており、大学の設置者としての「法人」は、これに基づいて大学を管理運営する責任をおうことになります。

 これらは、国立大学への国の財政負担を大幅に後退させながら、大学の教育研究と運営を国が統制するしくみにほかならず、このような大学制度は世界にも例がありません。

学長に強大権限民間経営手法で

 第二に、「各大学の自由な制度設計ができる」といいながら、学長が強大な権限をもち、民間経営の手法で大学を運営するしくみを具体化していることです。

 「概要」は、「法人」の長である学長が役員会の理事を任命し、重要事項は役員会の議を経て学長が決定するなど、「法人」経営と大学運営の全体にわたって学長に権限を集中させました。また、役員会に学外者が参加し、「法人」経営を審議する経営協議会には学外者が半数以上をしめるとともに、学長を選ぶ学長選考会議も半数ないし三分の一は経営協議会の学外者が参加するとしています。

 学部長などが参加する教育研究評議会の審議は教学事項に限定され、予算の編成・執行や重要な組織の設置・廃止など、教育研究の基本的条件ともいえる重要な事項が外されています。「大学の自治」を保障している教育公務員特例法の規定が削除され、教員選考のしかたは教育研究評議会で審議し学長が決定します。

 これでは、教育研究の直接の当事者である教員組織は「法人」経営から排除され、教授会は教員人事権を失うのに対し、教育研究に通じていない学外者が、学長のトップダウンの下で、経営者の立場から大学運営にまで深く関与することになります。

 こうした制度は、効率と競争の論理によって、大学の再編・統合や教員養成系学部の統廃合、あるいは大学民営化を、政府が強権的におしつけることに道をひらくものです。また、学費の大幅値上げ、産業にただちには結びつかない分野の研究費削減や教育研究組織の廃止、事務組織のリストラ・外注化、任期制などによる教職員の首切りなどが、学長・役員会の一方的な決定で強行されることになりかねません。

公立・私立にも深刻な影響が

 まさに国立大学法人法は、大学をおよそ「学問の府」とはかけ離れたものに変質させる「国立大学解体法」「大学企業化法」ともいうべきものです。公立大学もこれにならい、私立大学にも深刻な影響を及ぼします。国立大学法人法案の国会提出を許さず、国民の立場からの大学改革を求めるたたかいが、大学関係者、国民からひろくまき起こることは必至です。(党学術・文化委員会事務局次長)


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