2003年2月5日(水)「しんぶん赤旗」
日本共産党の穀田恵二国対委員長が四日の衆院本会議でおこなった小泉首相の施政方針演説に対する代表質問(大要)は次の通りです。
日本共産党を代表して小泉総理の施政方針演説について質問します。
まず、国民生活と日本経済をどのようにして再建するのか。その方向と方策についてただしたいと思います。
小泉内閣が発足して一年九カ月が経過しました。あなたが経済運営のかじを握ってから、日本経済の指標でよくなったものがひとつでもあったでしょうか。失業、倒産、株価も最悪。主要国で戦後どこも経験したことのない連続的な物価下落がつづき、不況はその深刻さを一段と深めています。経済運営は惨憺(さんたん)たるありさまといわなければなりません。
日本共産党は、小泉総理が政権に就いた当初から、あなたのいう「構造改革」路線をすすめれば、国民の暮らしと日本経済に深刻な事態をまねくことになると警告してきましたが、いまや小泉内閣の経済政策の破たんは誰の目にも明らかです。ところが、あなたはその責任をとるどころか、破たんが証明済みの路線に固執し、国民の暮らしと日本経済をさらに破局の方向へと導こうとしています。
その第一が、この大不況のもとで社会保障の負担増と給付削減、庶民増税によって、四兆円もの負担増を国民に押し付けようとしていることです。これでは国民の需要はいっそう落ち込み、経済危機を加速させるだけではありませんか。
小泉内閣の一年九カ月で、国民の所得は大きく減り続けています。先日発表された家計調査でも、サラリーマン世帯の実収入は一昨年に比べ二十七万二千円も減っています。これだけ所得が減っているときに、追い打ちをかけるように、医療制度の改悪、介護保険料の引き上げ、年金給付額の引き下げ、雇用保険の改悪など社会保障の全分野に及ぶ改悪で二兆七千億円。発泡酒、たばこの増税や配偶者特別控除の廃止、消費税の特例廃止など、庶民増税が一兆七千億円。あわせて四兆四千億円もの負担増を政府が押しつけようとしています。
こんな負担増を家計、国民の生活に、いま、押しつけたら、暮らしと景気、日本経済にどんな影響を与えると認識しているのですか。およそ不況からの脱出をめざすことを真剣に考えるのなら、なにをさしおいても、国内総生産・GDPの約六割を占める家計消費をあたためることを最優先すべきではありませんか。
医療保険制度の改悪は、国民の命と健康を直接脅かす大問題です。すでに昨年十月におこなわれた老人医療制度の改悪で、深刻な受診抑制がおこっています。日本医師会がおこなった緊急レセプト調査の結果でも、昨年十月から十一月のお年寄りの通院一件あたりの医療費は、一年前にくらべてマイナス11・8%と大幅に落ち込んでいます。
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の医療四団体は、「国民の健康にたいする国の責任を放棄し、国民皆保険制度を根底から崩壊させるもの」との共同声明を発表し、四月からの健康保険本人三割負担の凍結を求めています。野党四党は共同して負担の凍結法案を今国会に提出します。この切実な願いにこたえるべきではありませんか。
総理は「先行減税を実施する。負担増だけ着目するのはいかがか」などといいます。それでは「先行減税」で、家計や国民の暮らしに向けられた減税があるのですか。その中身を見ると研究開発費やIT投資減税、相続税の最高税率引き下げという、もっぱら、この大不況でも黒字を出している大企業や、ごくひとにぎりの大資産家むけの減税ではありませんか。
この減税の財源を、庶民のわずかな楽しみである発泡酒からはじまり、家族を扶養している勤労者への所得税増税などでひねり出そうとしています。「多年度中立」などといいますが、これのどこが「中立」ですか。庶民に増税し、大企業に減税することが、「あるべき税制」の姿だというのでしょうか。
国の財政であれ、社会保険財政であれ、国民への負担増でことを「解決」しようという、あなたのやり方は完全に破たんしています。
来年度予算案はその破たんぶりの象徴です。小泉政治のもとで税収は一年間に五兆円も減ってしまいました。負担増が不況の深刻化をもたらし、その結果税収減となる、そしてまたさらなる負担増の押し付け、こういう形で悪循環に陥っています。“痛み”をがまんすれば明るい光が見えるどころか、もっと大きな“痛み”がくるのです。財政危機を負担増で糊塗(こと)するやり方は“痛み”の増幅路線にしかなりません。税金の使い方を変えること、ここにしか、この悪循環から抜け出す道はないのです。
総理は、昨年、この国会で公共事業費を一兆円削減すると大見えをきりました。ところが、同時に決定した補正予算で、同じ公共事業費を一兆五千億円追加しました。減らすどころか増やしています。来年度予算も同じです。公共事業を聖域にしているではありませんか。関西空港第二期工事をはじめ中部国際空港、諫早湾干拓事業、第二東名高速道路など、ムダ遣いとして中止を求められている大型公共事業などに根本的にメスをいれ、社会保障を中心にすえた財政に根本的に転換することこそ、問題解決の道であります。
ドイツでは社会保障費は公共事業の三倍です。アメリカは四倍、イギリスは六倍です。社会保障など国民の暮らしを直接支える分野を予算の主役にすえ、その何分の一かを公共事業に投資するのが、世界ではあたりまえになっています。
こういう方向での歳出構造の根本的転換をはかるべきではありませんか。答弁を求めます。
第二は、「不良債権処理の加速」による中小企業つぶしの問題です。
いま、中堅・中小企業に猛烈な「貸しはがし」と、金利の引き上げが押し付けられています。総理は「不良債権の早期最終処理をして金融を再生させる」、「本当に必要なところに資金がまわるようにする」といってきました。
いま、起きていることは、まったく逆さまではありませんか。
バブル崩壊から十年以上、この長い、苦しい不況のトンネルの中で、必死にがんばってきた中小企業から、必要な資金が乱暴に回収されています。不況下で、金利の引き上げが押し付けられ、断れば「貸しはがし」にあうという深刻な実態をご存じなのでしょうか。売り上げが低下しているもとで、中小企業にとって、たとえ1%でも金利を引き上げられることがどれだけ大変か、致命的ともいえる打撃になることをおわかりですか。
東京商工会議所の昨年八月の調査では、56%もの企業が銀行から「金利引き上げ」要請を受け、そのうち82%が要請を受け入れざるを得なかったと答えています。きちんと返済している黒字企業にも、金利引き上げが強制されています。「金融の再生」どころか、金融システムをメチャクチャにしている、これが現実ではありませんか。
なぜこんな事態になっているのでしょうか。銀行の責任も重大ですが、政府の「不良債権早期処理」の大号令のもとでおこっていることなのです。
二―三年という期限をきって、不良債権処理をと銀行に強要すれば、時間をかければ立ち直れる企業もつぶしていくことになります。不良債権処理のコストのため銀行の自己資本がへり、それを回復するため、「貸しはがし」と金利引き上げに走らざるをえない。その結果倒産がふえ、結局、新たな不良債権が発生するという、まさに悪循環です。総理、その責任への自覚はありますか。
総理、あなたの「不良債権処理加速策」というのは、結局のところ、大銀行の収益性だけを追い求めるもの。大銀行のバランスシート、帳簿から不良債権を落とすこと、それだけしか考えないという乱暴なものです。その結果、金融再生どころか、金融はきわめて深刻な事態になってしまいました。
しかも大銀行の不良債権は、あなたが総理になってからも新たに発生し続け、この一年半で九兆円も発生しました。これまで“正常”、“要注意”などで踏みとどまっていた企業が、“破たん懸念先”に落とされていきました。
「金融緩和」といいながら、金融の現場で「超金融引き締め」が展開されていること、これらの政策の破たんと矛盾にどう責任を感じているのですか。中小企業への円滑な融資を銀行に指導するというなら、まず「不良債権処理策の加速」などという暴政をやめることです。
わが党は「貸し渋り」「貸しはがし」などを規制し、中小企業金融を円滑にするための「地域経済および中小企業等の金融を活性化させる法律案」(「地域金融活性化法案」)を提案しています。その実現を強く求めるものです。
第三に雇用問題です。小泉内閣が「不良債権最終処理」といって、大量の失業と倒産を増やし、大企業のリストラを「産業再生」などといって支援してきたために、雇用危機と雇用不安は未曽有のものになってしまいました。
これをさらにすすめようというのですか。坂口厚生労働大臣は「今後六十五万人の離職者がうまれる」などとのべています。政府の見通しでも失業率がさらに上昇する。戦後最悪の失業率を、さらに高くする政策を遂行する、こんな政府がどこにあるでしょう。
「仕事がない」ということは、生活の糧を失うということであり、暮らしが成り立たないということなのです。
しかもセーフティーネット(安全網)などといいながら、雇用保険の失業給付を六千億円も削減する制度改定を来年度からやろうとしています。給付期間を短縮する、給付額を削減する、これが失業者に対する仕打ちです。どこがセーフティーネットでしょうか。
さらにサービス残業を合法化するような裁量労働制の大幅拡大、不当な解雇であっても会社が金さえ払えば解雇ができるというような労働基準法の改悪をおこなおうとしているのです。これら一連の労働法制の改悪は絶対におこなうべきではありません。
三百数十万人もの失業者が職を求めている一方で、雇用の現場では何が起きているでしょうか。リストラで人は減っても仕事は減らない。そのために違法な「サービス残業」や深夜までの異常な長時間労働がはびこっています。豊田労働基準監督署の調査で、「世界のトヨタ」とその関連企業で年間三千六百時間という、驚くべき長時間労働が存在していることが明らかになりました。「連合」の調査によればサラリーマンの約半分が「サービス残業」をおこなっており、その平均は月三十時間といわれています。
あってはならない過労死・過労自殺も増え続けています。長時間労働によって自ら命をたつところまで追い込まれる、こんな非人道的なことをいつまで続けるのですか。日本社会にとっても、産業と企業の将来にとっても、重大な障害になるとは考えないのですか。
雇用は過剰どころではありません。過剰なのは労働時間ではありませんか。日本共産党は「無法なリストラや解雇から雇用と人権をまもり、安心して働くことのできるルールの確立を」との雇用政策を発表し、法制化を提案してきました。次の四つの点での取り組みを緊急に実行することを提案します。
第一に、「サービス残業」の根絶と長時間残業を規制する実効ある措置をとることです。「サービス残業」は明白な犯罪です。しかも今日明らかになっている「サービス残業」は、異常な長時間労働の氷山の一角です。総理にその認識はありますか。
第二に、48・8%にまで下がっている年休の取得率を最低でも80%以上とする目標をもって行政指導をおこなうことです。昨年六月に発表された経済産業省、国土交通省の試算でも、有給休暇の完全取得をおこなえば十二兆円の経済効果があり、雇用創出も百五十万人と見込んでいます。取得率を80%に引き上げるだけで極めて大きな効果があることは明らかです。
第三に、恒常的な長時間残業や有休を取れないことを前提にした企業の生産計画・要員計画をなくすための行政指導をおこなうことです。
第四に、青年、特に高校卒業予定者の深刻な雇用の問題です。就職内定率は五割といわれていますが、数字以上に実態は深刻です。就職そのものをあきらめた高校生が急増し、「フリーターの道さえない」状況です。こうした事態を放置すれば、労働力の構成や技術の継承などで深刻な弊害をもたらし、日本の将来をも左右しかねません。
各国政府の青年雇用対策予算は、GDP比で計算すると、フランスは日本の百四十倍、イギリスは五十倍、ドイツは三十倍、低いとされるアメリカでも十倍にのぼっており、わが国の貧困さは際立っています。政府としてこれら青年が、正規の雇用に結びつくような特別な手立てと必要な予算措置を講ずるべきではありませんか。具体的答弁を求めます。
総理は、日本経済の再生にあらゆる政策手段を動員するとして、「歳出、税制、金融、規制の四つの改革の加速」を挙げました。しかし、その内容はいま見てきたように、いっそう国民の暮らしと日本経済を窮地に追いやるだけです。
国民生活の再建なくして国の経済の再建はありません。この立場から、国民の暮らしを支える歳出、税制への転換、中小企業を支援し雇用をまもる真の改革への道筋こそ求められています。
世界の平和にとって焦眉(しょうび)の問題となっているイラク問題であります。
いま重要なことは、国連による査察という手段を、必要で十分な時間をとって継続し、それを強化して、あくまで国連の枠組みのなかでこの問題を平和的に解決するために、ひきつづき国際社会が努力を図ることです。
現に、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は「査察は継続されるべきだ。今後数カ月以内に、イラクに核兵器開発計画が存在しないという信用にたる確証を提供できるはずだ。その数カ月は、戦争を避けるための価値ある投資となるだろう」と表明しています。
また国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長も、イラクの査察への実質的な協力は十分ではないとしつつも、査察の有効性を強調し、継続する方針を示しています。総理、国連の査察をつうじての平和的解決こそいまもっとも求められていることであると思いませんか。
ところが、問題はアメリカの態度です。
アメリカのブッシュ大統領は、先日の一般教書演説で一方的・独断的にイラクは「大量破壊兵器を保有している」と決めつけ、「イラクが大量破壊兵器を廃棄しないなら、友好国を率いて武装解除する」と述べ、国連を無視した一方的武力攻撃を辞さないとの言明を繰り返しています。
総理、イラクに対して査察に全面的・積極的に協力するように求めるのは当然でありますが、国連を無視した一方的武力攻撃計画にもきっぱりとノーというべきではありませんか。国際社会が取り組んでいる査察による解決への努力を妨害するこうしたアメリカに対しても、「国連憲章と国連決議を無視するな」ときっぱりと言うべきではありませんか。
イラク問題の解決は、二十一世紀の世界のあり方がかかった問題です。アメリカの武力攻撃を許すならば、二十世紀の二つの大戦の惨禍を経てつくりあげた国連中心の平和の国際秩序を破壊することになります。絶対に歴史の歯車の逆転を許してはならないのです。
そもそも大量破壊兵器の廃棄のために、戦争という手段をとるべきではありません。あくまで平和的手段で解決をはかるべきです。戦争という手段に訴えれば、世界の平和のルールを壊すだけでなく、はかりしれない未曽有の市民犠牲の惨禍をもたらし、中東の平和と安定のみならず世界の平和を危機に陥れることになります。
いま世界の多くの諸国、人々が、アメリカが戦争に訴えて破局的事態をまねくことを回避するために努力をしています。
ドイツのシュレーダー首相は「まだ外交的な道はある。戦争回避のため、すべての手段をつくす」と述べ、フランスのシラク大統領は「戦争は宿命ではない。それは常に失敗の確認であり、最悪の解決策だ」と表明し、イラク周辺六カ国外相会議での共同声明は「これ以上のあらたな戦争、またそれがもたらす破壊的な影響のもとで暮らすことも望まない」としています。市民レベルでも、アメリカのノーベル賞受賞者ら四十人がイラク攻撃反対の共同声明を発表するなど、「イラク攻撃ノー」は大きな国際世論となっているのです。
総理、これらの声をどうお聞きになりますか。
この間、日本共産党の代表が、中国、中東六カ国――エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、ヨルダン、イラク、さらに南アジアの三カ国――インド、パキスタン、スリランカを訪問し、それぞれの国の代表と会談をおこないました。どの国の政府との会談でも、国連憲章をまもり、イラク問題の平和的解決を強く求める一致点が確認されました。イラクに対しては、査察に対する態度など、問題点も率直に批判しました。
国際紛争を武力で解決してはならない、平和的な解決をとしたのが日本国憲法第九条です。その憲法を持つ国・日本こそが、いま率先して、平和的解決のために、世界に働きかけ、アメリカにイラク攻撃やめよと率直に申し入れるべきではありませんか。それが日本の責務ではありませんか。憲法を順守すべき総理の明確な答弁を求めるものです。
イラク問題にかかわって重要なことは、小泉内閣が昨年末、アメリカがイラク攻撃態勢を強めようとする最中にイージス艦をインド洋に派遣し、自衛隊による米軍艦船への給油活動を継続し、今国会での有事法制の成立を企てていることです。
昨年の国会審議で明らかになったことは、有事法制の本質が、アメリカの引き起こす干渉戦争のために、日本の自衛隊が海外で武力行使できる道をひらき、さらに国民を統制し、地方自治体・民間をはじめ国民を戦争に協力させ、強制動員することにあるということです。だからこそ、陸上、海上、航空の輸送にかかわる労働組合が、立場の違いを超えて反対を表明し、宗教者・文化人をはじめ、多くの国民が反対し、多くの地方自治体が懸念を表明し、日本弁護士連合会は憲法違反だという総会決議をあげたのです。
いまアメリカがイラクの政権転覆を公然と企て、国連を無視した一国行動主義と先制攻撃戦略をあからさまに表明しているもとで、日本が有事法制をもつことの危険性はいっそう明白です。どんなに修正をしても有事法制の危険な本質は変えようがないのです。有事法案をただちに、きっぱりと廃案にすることを強く求めるものです。
つぎに、世界とアジアの平和にとって大きな問題となっている北朝鮮の核兵器問題について質問します。
去る一月十日、北朝鮮は、NPT(核不拡散条約)からの脱退を表明しました。日本共産党は、一部の国による核兵器の独占を体制化する、NPT条約には反対する態度をとってきました。しかしこれは、核兵器の全面禁止をめざす立場からであって、核兵器保有国が新たに増えることを容認するものでは決してありません。いったんこの条約に加盟して、核兵器を持たない意思を表明した国が、この条約から脱退して核兵器保有への道をめざすことは、世界平和を脅かす行為であり、どんな理屈をつけようとも正当化することはできません。
北朝鮮にたいして、核兵器開発計画の放棄を求めること、そしてそれを平和的な話し合いの方法によって実現すること、これは当然のことです。
いま大事なことは、北朝鮮の核兵器問題にたいして、日本政府が「日朝平壌宣言」の当事国としてどのような積極的な役割を果たすかにあります。「日朝平壌宣言」は北朝鮮の核兵器問題での直近の国際的合意であり、日本政府はその当事国として、「日朝平壌宣言」をまもらせる立場で、道理にたった交渉をおこなう国際的責務をになっています。このことが、いま問われています。
そうした役割を果たすうえでも、国交正常化交渉を前に進めるうえでも、拉致問題、核兵器問題をはじめとする安全保障の問題、過去の植民地支配の清算の問題など、日朝間の諸懸案を包括的に解決する、この立場にたってこそ困難と障害を打開する道が開かれると確信します。
「日朝平壌宣言」を調印した当事者として、また、核兵器の廃絶を願う唯一の被爆国の総理としての見解を求めます。
北朝鮮がこれまで国際的な無法行為を犯してきた国であればこそ、理性と道理にたった、ねばりづよい対応を強く求めるものであります。
最後に「政治とカネ」の問題で総理の政治姿勢をただしたいと思います。
自民党長崎県連公選法違反事件は、公共事業受注企業からの献金は政治献金として届け出・報告しても、実態が選挙のための資金であれば法律違反の献金になるということを明らかにしたものです。
昨年の国会で大問題となったムネオ事件や“口利き疑惑”で、国民から厳しく問われたのは、公共事業受注企業等からの政治献金は、“税金の還流”であり許されない、ということでした。政党として厳格な対応が求められた問題でした。だから、小泉総理はちょうど一年前、「国民の信頼を回復するには、公共事業受注企業からの献金等について、疑惑を招くことがないよう、法整備を含め、もう一段踏み込んだ仕組みを考えることが必要」だと答弁したのではありませんか。
総理、この答弁は、あなたの国民への公約・約束です。この国民への約束も守らなくてよいと考えているのですか。自民党長崎県連の公選法違反事件を受け、いままた与党・自民党に検討を指示することで国民の批判をかわそうというのですか。はっきりとお答えください。
野党四党は昨年の通常国会で、公共事業受注企業からの政治献金禁止などを盛り込んだ政治資金規正法等改正案を提案しています。具体的提案はすでに国会にあるのです。総理に問われているのはこれを実現させる意思があるかどうかです。明確な答弁を求めます。
看過できないのは、今年の年頭に公表された日本経団連の「奥田ビジョン」です。社会保障の財源として消費税を毎年1%ずつ上げて、二〇一四年度には税率16%にまで引き上げる。その結果企業の保険料負担をゼロにする。これを実現するために働く政治家に企業献金をするというのです。政治をカネで動かし、国民に耐えがたい負担をかぶせる一方で、自らは莫大(ばくだい)な見返りを手にする――露骨な政治の買収そのものではありませんか。こんな政治献金を自民党は受け取るのですか。総裁である総理の見解を求めます。
総理、一九六一年、第一次選挙制度審議会が答申した「企業・団体献金の禁止」を、いまこそ実現すべきではありませんか。いったいいつまで放置するのですか。企業・団体献金の全面禁止への道に大胆に踏み出すべき時です。「自民党をぶっ壊してでも」と豪語してきた総理の見解を求めるものです。
政治に対する国民の信頼を回復することが不可欠であることを強調して私の質問を終わります。