2003年2月3日(月)「しんぶん赤旗」
沖縄の米海兵隊普天間基地に代え、同県名護市沖に最新鋭の航空基地を建設するため、政府と地元自治体との協議会(代替施設建設協議会)が一月末に発足しました。しかし、建設に向けた作業が進めば進むほど、「基地のない平和な沖縄を」という県民の願いとの矛盾が深まることは避けられません。
政府が昨年七月に決定した「基本計画」によると、新基地の規模は、全長二千五百メートル、幅七百三十メートル。一九九七年十二月の名護市民投票で反対の意思が突きつけられた当時の政府案の二倍以上の大きさです。しかも、九七年当時は「撤去可能」な案が示されていましたが、今回はサンゴ礁を埋め立てる計画です。
協議会の発足を受け、政府は当面、建設着工前に実施する環境影響評価(アセスメント)と、埋め立ての際に周囲を取り囲む護岸構造の検討を進める予定です。
那覇防衛施設局はすでに、環境影響評価の実施方法を定める文書(方法書)の作成を業者に依頼。七月末までに方法書を完成させ、年内に関係自治体や住民から意見を求める考えです。
護岸構造の検討を進める上で、建設予定地周辺の地形、気象、地質などの調査も四月上旬には開始し、五月にはボーリングによる地盤調査も始めるとしています。夏ごろには、護岸構造の模型をつくっての検討も進める計画です。
しかし、建設予定地周辺は、国の天然記念物ジュゴンの生息も確認されている自然豊かな海域です。国内外の自然保護団体や専門家からは、新基地の建設によって日本で唯一生息が確認されている沖縄のジュゴンは絶滅の危険があると、強い懸念の声が上がっています。
名護市の岸本建男市長が受け入れ条件にしている新基地の使用協定については、那覇防衛施設局、県、市の担当者で構成する「実務者連絡調整会議」で協議することになっています。しかし、市長が求めている航空機の使用機種や飛行ルートの制限を米軍が受け入れる保証は何もありません。
昨年十一月に琉球新報と沖縄テレビが実施した世論調査では、名護市沖への新基地建設について、反対が45・6%にのぼっています。賛成は、「使用期限十五年」という条件付き賛成(16・6%)をあわせても31・1%にすぎません。
稲嶺恵一沖縄県知事と岸本市長は、新基地の受け入れ条件として「使用期限十五年」を公約に掲げています。
しかし、協議会の初会合では、「十五年使用期限」問題を議題にしないことを決定。知事と市長は「十五年使用期限」問題の「解決」を求めましたが、川口順子外相は「国際情勢が肯定的に変化していくよう真剣に取り組む」と述べるだけで、米国に要求するつもりがないことを改めて示しました。
この間、米政府高官は「十五年使用期限」を受け入れることは「困難」と繰り返し表明しています。自民党の麻生太郎政調会長は、「十五年使用期限」が「世間では通らない」と「だれもが思っている」と言明しています。
日米両政府の狙いは新基地の永久使用にあります。知事や市長の「十五年使用期限」の公約はごまかしにすぎず、すでに破たんしていることがますます明らかになっています。
「第三海兵遠征軍と在日海兵隊基地は、アフガニスタン、ペルシャ湾、そしてアジア太平洋地域で、対テロ戦争に直接、間接に貢献した」
米第三海兵遠征軍のグレグソン司令官は、沖縄の海兵隊機関紙「オキナワ・マリーン」一月十日号で、昨年を振り返り、こう述べています。
同紙によると、沖縄を中心に駐留する第三海兵遠征軍は昨年、アジア太平洋地域で七十五以上の演習に参加。対テロ報復戦争では、アフガニスタンとその周辺諸国に航空管制部隊を送り、ペルシャ湾岸地域には空中給油機の分遣隊と戦闘攻撃機部隊を派遣しました。このほか、フィリピンでのテロ組織掃討作戦にも保安部隊と工兵部隊が参加しています。沖縄の海兵隊は、「日本防衛」とは関係なく、米軍事戦略に基づいてアジアから中東にかけての広大な地域に遠征出撃する部隊です。最新鋭の海兵隊基地が建設されれば、海外“殴り込み”作戦の拠点になることは間違いありません。