2003年1月31日(金)「しんぶん赤旗」
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米海軍厚木基地(神奈川県)の米空母艦載機による夜間離着陸訓練(NLP)のため、政府が、広島県沖美町の大黒神(おおくろかみ)島に新たな訓練基地の建設を検討していることが三十日、明らかになりました。福田康夫官房長官も同日の記者会見で「一つの大きな課題として検討している」と認めました。
新たなNLP基地の候補地となっている大黒神島(約七平方キロ)は瀬戸内海最大の無人島とされます。しかし、同島と一番近い能美島には約二万人が生活、距離も二キロしか離れていません。防衛施設庁などによると、大黒神島での建設計画は昨年、浮上。二千メートル級の巨大な滑走路を建設する構想です。
政府は一九八五年、三宅島(東京都三宅村)にNLP基地を建設する計画を発表しましたが、島民らの反対運動でこれまで建設を阻止。このため、硫黄島(東京都小笠原村)に「暫定措置」としてNLP基地を建設し、九一年から訓練が開始されました。しかし、同島は厚木基地から千二百キロ離れているため、米軍側から「強い不満が表明」(防衛施設庁)されてきました。
これに加えて三宅島では火山活動が続いており、防衛施設庁は同日、「三宅島も選択肢であることは変わらない」としつつ、「現実には移転は困難」と判断したといい、大黒神島が候補地に挙がりました。
沖美町では同日、臨時議会が招集され、谷本英一町長がNLP「誘致」の意向を表明。議員や町幹部らからは「寝耳に水」との驚きの声が上がりました。当面、町では、基地交付金による経済効果や環境への影響などを検討するとしています。
広島県の藤田雄山知事は同日の記者会見で「平和を希求する広島県にこうした施設をつくるべきではない」「周辺空域は混雑しており、ニアミスが起きることも考えられる。そういうことからも容認できない」と反対の立場を表明しました。