2003年1月25日(土)「しんぶん赤旗」
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日本初の情報収集衛生(IGS)が三月から八月にかけて順次打ち上げられますが、軍事偵察衛星の正体をごまかすためにうたってきた軍事目的以外の利用計画は実際には実体のないものだったことがますますはっきりしてきました。
問題の衛星部分は厳戒態勢の中、三菱電機鎌倉製作所から一月十六日に鹿児島県・種子島に到着。打ち上げに使用するH2Aロケットは、一月末から二月上旬にかけて愛知県の三菱重工飛鳥工場から同島に海上輸送されます。衛星の詳しい軌道や性能は秘密。打ち上げ日時も直前まで公表しません。収集画像の生データも公開しない方針です。
秘密に包まれたこの衛星は、一九九八年十二月の閣議で、(1)外交・防衛等の安全保障(2)大規模災害への対応――をおもな目的とする、と決められました。「宇宙の平和利用」をうたった国会決議(一九六九年)に反する軍事衛星を日本が初めて打ち上げることにたいし、日本共産党などが批判。そのなかで世論対策として、政府が考えたのが、軍事目的だけでない「多用途利用」。十五省庁が利用の方法を検討することになっていました。
しかし、実際には、管理・運用にあたる内閣官房の「内閣衛星情報センター」につめる要員百三十人余のうち約百人は防衛、警察関係者。大規模災害に対応する旧国土庁や消防庁、国土地理院からの出向者はいません。
石油コンビナートなど災害の情報収集を行う計画もあったのに、当の経済産業省では「(計画の存在を)初めて聞いた」、「災害時医療への活用については検討していない」などという声があり、防災活用への実体はほとんどありません。
また、不審船などの追跡で関係省庁が衛星を使用している時に、他省庁が使用する訳にもいかず、全体の利用計画も各省庁間で合意を得るには至っていません。
「軍事色を薄めるために少しでも可能性のある用途を列挙したカムフラージュではないか」と語る政府関係者もいます。
ある軍事評論家は「いくら他の用途を並べ立てても、軍事優先の軍事偵察衛星であることははっきりしている」と話しています。
情報収集衛星 光学衛星と雲を透過するレーダー衛星の二機をペアで打ち上げます。八月ころまでに計四機を打ち上げ、二十四時間利用します。予算は総額約二千五百億円。運用や今後の開発に毎年七百億円近くかかります。