日本共産党

2003年1月24日(金)「しんぶん赤旗」

介護報酬改定

どうなる何が問題


 二十三日に社会保障審議会で了承された四月からの新しい介護報酬は、在宅介護の報酬を引き上げる一方、施設への報酬を大幅に減額するものとなりました。報酬額の変更は、利用者負担にも連動します。四月からは介護保険料の値上げも予定されています。おもな内容を見てみると――。


グラフ

施設

大幅減額で質の低下に

 介護報酬は、全体で現行より2・3%減となりました。特別養護老人ホーム、老人保健施設など施設への報酬は平均で4%の引き下げと、大幅に減額されました。(表参照)

 要介護度が低い人ほど下げ幅が大きく、「施設は重度の人向け」との位置づけを打ち出しています。これには「施設側の収入が減るため、軽度の人は入所しにくくなる」との懸念が出ています。

 療養病床のある病院(介護療養型医療施設)では、「入所者三人に対して介護職員一人」という最も手厚い人員配置への報酬を廃止。最高でも入所者四人に一人という配置の報酬まで引き下げました。

 厚労省は、介護施設の経営が全般的に黒字であることなどを理由に報酬を引き下げましたが、常勤の職員を非常勤に切りかえるなど、すでに人件費を切りつめてやりくりしているのが現状です。報酬が下がれば、いっそう職員の労働条件を悪化させ、介護の質の低下をまねきかねません。

 四月から新設する「個室型特養ホーム」については、従来型より高めの報酬を設定しました。この特養は、全室個室で小人数単位の介護をおこなうのが特徴ですが、入所者は居住費(ホテルコスト)として月四万―五万円もの新たな自己負担が必要になります。低所得者(住民税非課税世帯)が入所した場合には、月一万―二万円の介護報酬を上乗せすることで利用者負担を軽減することにしました。

 在宅介護のなかでも、お年寄りが特養ホームなどに通う通所介護(デイサービス)や短期入所(ショートステイ)など施設を利用するものは、報酬を引き下げました。

 痴ほうのお年寄りが集団で生活するグループホームでは、夜間の介護体制が整っている場合、一日あたり七百十円が新たに上乗せされます。


在宅介護

訪問介護は2.3%引き上げ

 ホームヘルパーの労働環境の改善などのため報酬の引き上げが求められている訪問介護は、平均で2・3%の引き上げとなりました。「身体介護」「家事援助」「複合型」の三種類ある今の報酬から、複合型を廃止し、入浴や食事などを介助する「身体介護」と、掃除や調理などをする「生活援助」の二類型に変更します。

 現在の家事援助から名称を改めた生活援助では、26%と大幅な引き上げとなりました。

 一方、身体介護では、三十分未満の場合でわずかに増額される一方、介護時間が一時間半を超えた場合、三十分増すごとに二千百九十円加算されていたものが、八百三十円に減額されました。介護時間が長くなっても現行より報酬が減ることになり、現場から「訪問介護の時間短縮につながり、お年寄りとじっくり向き合えない」との声が出ています。

 厚労省は「在宅重視」といいますが、現在の制度では介護にかかる費用の一割が利用者の負担となるため、介護報酬が上がると、利用料もその分高くなります。いまでも利用料が高いために低所得者が利用を控えるという実態があり、国・自治体の支援措置がいっそう求められます。

 お年寄りが通院などに利用できる「介護タクシー」は、一回につき千円の報酬を新設しました。利用できるのは要介護一以上の人に限定されたため、「要支援」の人は利用できなくなります。

 お年寄りの介護サービスの利用計画を作成するケアマネジャー(介護支援専門員)への報酬は、「実態調査で大幅な赤字だった収支を改善するため」として17%引き上げました。これまで、要介護度に応じて三段階に区分していた報酬を、要介護度に関係なく一人あたり月八千五百円としました。ただ、要介護三―五の利用者については、百円の引き上げにとどまっています。

 同時に、利用者宅を少なくとも月一回訪問し、三カ月に一度は状況の変化を記録するなどの一定の要件を満たしていない場合は、報酬を三割減らすしくみも新たに導入しました。


保険料

65歳以上で11%の値上げ

 六十五歳以上の介護保険料は二月、三月の最終決定にむけて各市町村で作業中です。厚生労働省の中間的な集計によると、一人当たりで今年度二千九百十一円(全国平均)から、三千二百四十一円へ11・3%の引き上げになります。年金などから天引きされます。

 四十歳―六十四歳の保険料は健康保険料などとあわせて徴収されますが、今年度二千九百十八円(国か企業が半額負担)から、三千四十三円(同)と4・3%の引き上げです。

 高い保険料を年金などから天引きすることについて、現在でもお年寄りからつよい批判の声が上がっています。とくに住民税非課税の人たちは生活するのにぎりぎりの所得しかない人です。

 日本共産党は低所得者対策として、利用料とともに、保険料の免除・軽減措置を国の恒久的な制度として確立することを要求しています。


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