2003年1月20日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントン18日遠藤誠二】ワシントンで開かれた集会の舞台では国会議員、労組代表、平和・人権活動家、音楽家、宗教者、マイノリティー(少数派人種)代表など多彩な人たちがかわるがわるマイクを握り、ブッシュ政権の戦争推進路線を批判しました。
アカデミー女優のジェシカ・ラングさんは「この政権が進む道は間違っていて、私たちは反対します。彼らの計画する戦争は道徳観に欠けていて、われわれはそのことに沈黙すべきではありません」と発言、大きな拍手を浴びました。
集会参加者は午後、議会南東にある米海軍施設までデモ行進し、週末のワシントン中心部は反戦市民の姿で埋まりました。ワシントン隣のメリーランド州から来たジュード・マーティンさん(45)=女性、宝石商=は「今からでも戦争をやめさせることができます。これはわれわれが挑戦しなければいけないことです。ブッシュ政権の指導者たちは今日、私たちの声を聞いたはずです」と話しました。
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【ワシントン18日浜谷浩司】「ブッシュ、チェイニー」と正副大統領の名をつけた恐竜、「解決にならない」と大書されたミサイル、枝をくわえたハト……。ワシントンの戦争反対集会では多彩なプラカードが目を引きました。
「ピース」と書いた虹色の六枚の羽が青空に映えます。かざぐるまを手にしたマロリー・グローバーさん(18)と「ブッシュ、弾劾」のプラカードを掲げたジェイソン君(19)は学生夫婦。集会参加のためにミシガン州から車で十五時間走り続けました。
ミシガン湖に面したトラバース市で戦争反対の運動を始めたのは、結婚と同じ六カ月前。「最初はぼくたちのデモに向かって、こうする人もいた」と、親指を突き出して下に向けます。反感をむき出したサインです。
「でも、ずいぶん変わった。市議会は反戦決議を採択した」と、後方に目くばせ。二十人ほどが市名の入った旗を掲げていました。
「戦争だとか、核兵器だとか。私も聞きたくないし、子どもにも聞かせたくない」とマロリーさん。ジェイソン君は「他の国の人にアメリカ人が暴力好きだと思われたくない」といいます。
エマニュエル・パリサー氏(52)は、高校を中退した生徒たちのためにつくられた高校の教師。メーン州リンカーンビルから参加しました。
ベトナム反戦世代の一人として、「メディアが伝える戦争が『テレビゲーム化』していることを恐れている。教え子を戦場に送らないようにしたい」といいます。
脇にいるテディ・ベリー君(11)がポケットからマイクを取り出し、突き出しました。はにかみ屋さんながら、地元ラジオ局の立派な特派員。集会のもようを十分にまとめて放送することになっています。
午後零時半前、参加者が二十万人に達したとのアナウンス。歓声と拍手。ラジオは「この冬一番の寒波のもとで熱い集会」と伝えます。
「私が頼んだのは国民皆保険。それなのに、私が得たのは見えない爆撃機」。通りすがりの参加者が写真を撮っていきます。プラカードを掲げるダニエル・ブルック氏(32)は、フロリダ州から参加しました。
「戦争を止めるのは難しい」と率直です。地元選出の議員に何度も要請しましたが、議員はイラクへの武力行使に賛成の投票をしました。それでも、同州内にあってイラク攻撃の指揮をとる中央軍司令部にデモをしているといいます。
「百二十人の有権者がイラク戦争に反対です」とのプラカードは、メーン州から参加したエレン・ヒルシュバーグさん(52)。
三日前、インターネットで「ワシントンの集会に参加できない人は、名前を出していきますよ」と呼びかけました。集まったメールが百十九。「私を入れて百二十人」の名が裏側にぎっしり書いてあります。
見覚えのあるマスクをかぶった男性が大声をあげています。「戦争が好き、石油が好き、借金が好き、金持ちが好き…」
「お名前は?」とたずねると、「ジョージ・ブッシュ」。年齢だけは四十四歳と話してくれました。
やはり二十万人が参加した昨年十月の集会。しかし、十月にはこれなかったという人も少なくありません。ほとんどが一夜をバスで走りぬけ、今夜、再びバスで帰ります。
「妻は十月にも参加したが、私は今回が初めて」。ジョージ・ピーリー氏(61)はノースカロライナ州アシュビルから夫妻で参加。大きなハトのはりぼてを高く掲げています。
ベトナム戦争中は反戦運動でワシントンに何度も足を運んだというピーリー氏。「しかし、戦争が始まる前に、これほど組織的に反対運動をやるのは初めて」と明るい顔で話しました。