2003年1月14日(火)「しんぶん赤旗」
国土交通省発注の森吉山ダム(秋田県)を受注した元請けゼネコンにたいし、自民党などの国会議員秘書らが工事の下請けから給食まで広い範囲で特定業者を使うよう「口利き」していたことが本紙の調べでわかりました。あまりの多さにゼネコン側が“政治家推薦業者メモ”を作るほどで、こうした巨大公共事業での「口利き」が利権の温床となっています。
森吉山ダムは総事業費千七百五十億円。昨年三月の本体工事入札で、第一工事(第一期)を大林組・ハザマ・五洋建設の共同企業体、第二工事(同)を西松建設・三井建設・銭高組の共同企業体がそれぞれ落札しました。
ゼネコン関係者らによると、元請けにたいし、少なくとも五人の国会議員の秘書が、特定業者名をあげて下請けに使うよう「口利き」していました。「口利き」をしていたのは、ダム工事の地元である衆院秋田二区選出の野呂田芳成元防衛庁長官(自民党)、参院秋田選挙区選出の斉藤滋宣議員(同)のほか、秋田県選出衆院議員、衆院東北ブロック比例選出議員、関西地方選出の衆院議員の各秘書ら。
証言によると、本体工事入札直後の昨年四月ごろから、東京の議員会館や地元事務所につめる秘書などが元請けゼネコンの役員や秋田営業所幹部などにたいし、特定業者名をあげ、「推薦」してきたといいます。
このうち野呂田事務所では議員会館の公設秘書が、元請けゼネコンの役員を呼びつけ、東京都内に本社のあるダム工事大手下請け会社を使うよう要求。地元の能代事務所の秘書は元請けゼネコンの秋田営業所に、仙台市に本社があるプレハブ建設メーカーなど三社を下請け業者として「推薦」していました。野呂田議員の公設秘書は、業者名をあげた本紙の質問にたいし、「(推薦する)話をしたかもしれない」と語りました。
また、斉藤参院議員の地元秘書は、ダム建設現場の森吉町の電気工事業者など二社を「推薦」。同議員事務所の地元秘書は「ゼネコンの方から地元でいい業者があれば教えてくださいといわれたので教えた」と認めました。さらに、元請けゼネコン首脳と親しい関西選出の衆院議員事務所は、給食会社を使うよう求めていました。
ゼネコン側は政治家の要望をすべては受け入れていませんが、メモなどにして検討、重要性を判断し、対応しています。こうした「口利き」がその後の政治献金や選挙支援などとむすびついていくのが政界の実態です。