2003年1月1日(水)「しんぶん赤旗」
「全国で長野県と同じことをやられたら大変なことになる」――。大手ゼネコン幹部がそう恐れるのが、1面所報のような浅川ダムをめぐる田中康夫・長野県知事と、県公共工事入札等適正化委員会の対応です。他方、「脱ダム」推進の住民たちは「日本のダムの変革は長野から。住民運動が知事をささえる」と意気さかん。浅川ダムをめぐる対決は全国的な問題です。
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ダム工事途中の契約解除。そして行政側による独自の「入札談合」認定へ――。そんな長野県の動向について大手ゼネコン役員がこう語ります。
「浅川ダム本体工事の契約解除は、例がなくゼネコンには衝撃だった。そのうえ、『赤旗』が示した山崎建設の内部文書などで行政側が積極的にダム談合を認定していくようなことをすれば、問題は浅川ダムにとどまらない。全国のダム談合が問題になってくるのだから」
本紙が報道し、浅川ダム談合疑惑追及の発端となった、ダム工事大手下請け企業、山崎建設(本社・東京)の内部文書は浅川ダム本体工事受注の“本命”を入札五年前から「前田建設工業 フジタ 北野」と明記、共同企業体(JV)の組み合わせまで“予告”しました。このJVがそのまま落札するのですから、「一般競争入札」などまさに看板だけでした。浅川ダムだけではありません。本紙報道(二〇〇一年八月三十日)前の入札ずみダム二十六件のうち二十二件で、山崎建設文書記載の“本命企業”が落札。報道後入札された二件のダムでも、“本命企業”が落札しています。ゼネコン営業幹部はこう語ります。
「『赤旗』報道を発注者側は非常に気にしていて、その激震はいまも続いている。“本命企業”は地質調査段階からかかわり、多額の費用を使い準備してきている。『赤旗』で暴露されたからといって、すぐ別の業者にするわけにいかない」
山崎建設文書には、談合の日時、場所、参加者、談合内容などは記入されていません。それでもダム談合認定の有力根拠のひとつになるというのが、県公共工事入札等適正化委員会の論議です。
公共工事やゼネコンの動向に詳しい建設政策研究所の辻村定次専務理事はいいます。
「全国のダム工事のほとんどで談合があるにもかかわらず、実際に摘発されるケースはまずない。ゼネコンは、いつ、どこで談合したという直接の証拠を残さないからだ。しかし、行政側が第三者機関をつくり、いわば“状況証拠”を積み重ねて、論理的に談合を認定していくような手法をとればゼネコンには脅威だ。それを追及する住民、市民にとっては新しい武器になる」
浅川ダム建設阻止協議会の山岸堅磐会長の話
田中知事の設置した委員会がダム工事の談合を認定することは大変重要な意味があります。この問題に決着をつけ、公正な入札が進めば、日本の変革が長野から始まることになるでしょう。
談合は長野だけでなく全国にあります。ただ長野では、田中知事が誕生し、大きな住民運動のうねりがあり、そして議会で知事を支えきった共産党県議団らの力が合一して、今日の状況を生み出しました。ダム談合にかかわるゼネコン内部資料を報じた「しんぶん赤旗」も真実の力を与えてくれました。
河川改修と同時に、森林や遊水地の整備などを含む全流域での本格的な総合治水対策は、全国で初めてだと思います。「脱ダム」の理念と長野の住民運動にたいする全国の関心は驚くほど高く、私は使命感さえ感じています。浅川ダム建設阻止協議会を「浅川の総合治水対策を求める会」に改組することも決めました。どうしても成功させたいと思います。