日本共産党

2003年1月1日(水)「しんぶん赤旗」

ルラ新大統領に国民の期待

ブラジル きょう就任

「飢餓ゼロ」の 計画、課題は重く

外交では南米協力を重視


 【メキシコ市31日菅原啓】昨年十月のブラジル大統領選挙で変革への期待を集めて当選した労働党のルラ・ダシルバ新大統領が一月一日正式に就任します。各国で貧富の差の拡大を広げている新自由主義政策に反旗を翻した労働組合運動出身の大統領の出現とその動向は、今後の中南米地域の政治経済にも大きな影響を与えるものとして注目されています。


首都は歓迎一色

 現地からの報道によると、首都ブラジリア市内ではブラジル国旗と労働党の旗があふれ、貧しい労働者出身の新大統領の就任パレードを一目見ようとする市民が地方から続々と集まるなど歓迎ムード一色です。グローボ紙の調査によると、昨年の「最もよかったニュース」の第一位はルラ氏当選で49・75%。サッカーW杯でのブラジル優勝(27・05%)がかすむほど多くの国民が新大統領を歓迎しています。

 ブラジルは、一九九五年から二期八年続いたカルドゾ政権のもとで、超インフレは終息したものの、民営化や市場開放、金融自由化など新自由主義政策の徹底によって、失業と貧困が増大し、大都市部での犯罪の急増も深刻化しています。

 ルラ新政権は、選挙公約で掲げた国内産業の振興、輸出増による雇用拡大、貧困層救済などが主要な課題となりますが、カルドゾ政権下で二千六百億ドル(国内総生産の四割強)にまで膨らんだ対外債務を引き継ぐことから、国内では公約実現を危ぶむ声も上がっています。

 ルラ新大統領は就任一年目の最優先課題を栄養不足の貧困層を支援する「飢餓ゼロ」計画だとしており、食糧安全保障・飢餓対策省を新設する予定。この問題では、財源不足を補うため、米州開発銀行と交渉し、早くも支援の約束をとりつけています。

初外遊は南米

 就任前の十二月におこなった初外遊先は、慣例であった米国訪問ではなく、アルゼンチン、チリ訪問。南米南部共同市場(メルコスル)の強化を働きかけ、米国主導の米州自由貿易地域(FTAA)構想交渉で南米地域に有利にすすめる布石を打ち始めています。反政府ストが続くベネズエラには特使を送り、チャベス政権の要請を受けて緊急の石油輸出を政府に働きかけるなど南米諸国政府の協力を重視した姿勢が目立っています。

 次期閣僚名簿によると、社会主義人民党(PPS)の大統領候補シロ・ゴメス氏が国家統合相に指名されるなど、決選投票でルラ氏を支持した各党にも閣僚を割り当て、文化相には緑の党の活動家でもある音楽家ジルベルト・ジル氏を抜てきしたことが話題を呼んでいます。中銀総裁には金融政策に明るい企業家が指名されたことから、労働党政権の誕生でマクロ経済の安定化が途切れることを懸念していた経済界も落ち着いた反応を示しています。


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