しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年11月2日(土)

きょうの潮流

 守礼(しゅれい)の門のない沖縄/崇元寺(そうげんじ)のない沖縄/がじまるの木のない沖縄/梯梧(でいご)の花の咲かない沖縄/在京三〇年のぼくのなかの沖縄とは/まるで違った沖縄だという―▼沖縄出身の詩人、山之口貘(ばく)は戦後の変わり果てた故郷をそう詠みました。守礼門は琉球の歴史と文化を象徴する首里城への入り口。しかし、その先につづく正殿や北殿は31日未明の出火によって無残な焼け跡と化しました▼惨状を目の当たりにして泣き崩れるお年寄りたち。脳裏をよぎったのは、あの沖縄戦の悲嘆でしょうか。戦前、国宝となった首里城の地下に日本軍は壕(ごう)を張りめぐらして司令部を置き、要塞(ようさい)化。その結果、住民を巻き込んだ激しい攻防の舞台となって破壊されました▼「城そのものは惨憺(さんたん)たるありさまで、元の外観はほとんど想像もつかない。瓦礫(がれき)のあいだをぬって歩きながら、以前はさぞ美しかっただろうにと思わずにはいられなかった」。当時、米海兵隊員だったユージン・スレッジは入城した際の様子を回顧録に記しています▼30年前から本格的に始まった首里城の復元。2000年には世界遺産にもなった城跡は、県民にとって平和のシンボルであるとともに、沖縄のこころを発信するよりどころでもありました▼それだけに悲しみや落胆ぶりは大きい。しかし、この地は何度もよみがえってきました。玉城デニー知事も「必ず復元する」。すでに支援の輪はひろがっています。苦難を乗り越え、さまざまな思いを託してきたあの鮮やかな姿をふたたびと。


pageup