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2019年10月24日(木)

主張

公立・公的病院再編

地域医療を壊してはならない

 厚生労働省が、公立・公的病院の再編統合に向けた議論を促すとして全国424の病院名を一方的に公表したことに、地方自治体などから厳しい批判が上がっています。厚労省の分析で診療実績が少ないなどと判断した病院を公表したといいますが、地域ごとの実情を踏まえたものとはいえません。全国一律の基準を設け、地方に押し付けようというやり方は、乱暴という他ありません。公立・公的病院のあり方は、住民の命と健康に直結する大問題です。厚労省の姿勢に地域の不安は高まるばかりです。強引な推進は許されません。

名前公表に批判が噴出

 厚労省が名前を公表(9月26日)したのは、地方自治体が運営する公立病院と、日本赤十字や済生会などが運営する公的病院です。重症者に対応する「高度急性期」病棟などがある全国1455病院を分析し、がん治療や救急医療の実績が少なかったり、車で20分以内に似た診療実績のある別施設が存在したりする病院などをリストアップしたものです。病床(ベッド)の削減や、診療科の集約への動きを加速させることが狙いです。

 しかし、診療実績は、地域の人口や年齢構成、その病院の置かれている地方の特性を抜きに画一的に論じられるものではありません。診療のニーズがあっても、医師が確保できず、患者を受け入れられない事情もあるからです。豪雪寒冷地かどうかなどの考慮もなされずに、車の移動時間を尺度にするのも不適切です。こんな基準で公立・公的病院の再編統合を進めれば、いまでも医療提供体制が十分整っていない現状におかれている地域医療の疲弊に一層拍車をかける危険があります。

 国が機械的に基準を決め病院を名指しして、議論を迫る異例の手法は強い反発を呼んでいます。全国知事会など地方3団体は「地域住民の不信を招いている」とする意見書を出しました。厚労省が今月開始した各地の説明会でも、病院側などから「病床削減すれば住民にとって医療サービスが落ちることになる」「地方創生に相反する」という声が相次いでいます。

 厚労省は「機械的な対応はしない」「強制はしない」と繰り返しますが、公表した病院名リストの撤回を求める声には、応じようとしていません。対象病院の再編統合についての議論を本格化させ、来年9月までに結論を求める方針も変えようとしません。

 安倍晋三政権は、「団塊の世代」全員が75歳以上になる2025年に向け、公的医療費を抑え込むための制度改悪を推進しています。地域医療の再編統合もその一環です。6月に閣議決定した「骨太の方針」では、民間病院も含め再編統合を図ることを強く求めています。しかし、住民にとって身近な病院や診療科がなくなることは深刻な事態であり、国の思惑通りに進展してはいません。厚労省が病院名公表という強硬手段に出たのは、焦りのあらわれです。

住民の命と健康に責任を

 住民や医療現場、地方自治体の声を置き去りにして、公立・公的病院の再編統合を無理に進めることに、道理はありません。いま必要なのは、地域医療を困難に陥らせている公的医療費の削減・抑制政策からの転換です。安全・安心の医療体制の確立へ、地域が力を合わせるときです。


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