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2019年10月23日(水)

辺野古新基地 完成してもばく大補修費

軟弱地盤で凸凹 止まらぬ沈下

技術検討会 資料公開

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設予定地に広がる軟弱地盤をめぐり、防衛省沖縄防衛局が設置した「普天間飛行場代替施設建設事業に係る技術検討会」の第1回会合(9月6日)の議事録や資料が公開されました。


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(写真)軟弱地盤が広がる大浦湾=写真手前、沖縄県名護市辺野古(沖縄ドローンプロジェクト提供)

 この中で、政府は新基地の供用期間を50年と設定していることを明らかにしました。浮かび上がったのは、2兆6500億円(沖縄県試算)以上とされる建設費にとどまらず、“完成”後も50年間、地盤沈下に伴う補修などでばく大な支出が不可避だということです。

舗装もたない

 「下がしっかりしていないと舗装はもたない」「(供用期間)50年の間に何回もメンテナンスをする必要が出てくる」「エプロン(駐機場)の下に軟弱地盤がたまっており、沈下が起きる可能性がある」―。複数の委員はこう指摘しました。

 大浦湾側に広がる軟弱地盤は最深90メートルですが、国内の技術で地盤改良が施工可能なのは70メートルまでです。このため、完成後の沈下は避けられません。しかも、同じ軟弱地盤の上の空港であっても、海上にある関西国際空港は均一に沈下しますが、辺野古新基地は滑走路や駐機場の一部が陸地にかかっているため、沈む場所と沈まない場所、つまりデコボコが生じます。このため、埋め立てた後の舗装が「もたない」のです。

 別の委員は、辺野古の土が関空や羽田空港と違ってサンゴが混じった破砕性のある「この地域の特殊な土」であるため、沈下量がより大きくなるとも述べています。実際、技術検討会の資料にある実験データは、沈下量が想定を上回る可能性を示しています。

「何度も補修」

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(写真)鎌尾彰司・日本大学准教授

 地盤工学が専門の鎌尾彰司・日本大学准教授は、こう警告します。「想定以上の沈下が起きれば、比較的短い期間で補修しなければならなくなります。50年の供用期間中に、何度補修が必要になり、費用がいくらかかるのか。結局、完全に地盤改良できないため、維持・管理に膨大な手間がかかる基地になってしまうのです」

 最悪の場合、補修のたびに基地機能が停止し、辺野古に配備されたMV22オスプレイなど海兵隊機が他の基地を代替使用することになりかねません。

 しかも、デコボコが生じるのは滑走路や駐機場だけではない、と言います。

沈下で護岸に段差の危険

滑走路などの補修より難しく

 防衛省沖縄防衛局が公表した技術検討会の資料に、大浦湾の地層と護岸の配置を示す「断面図」(図)があります。

 「C1護岸は砂杭で10メートルほど盛り上がった軟弱地盤上に15~20メートルほどのケーソン(箱形のブロック)を置きます。一方、隣のC2護岸はもともと固い地盤の上です。このため、長期的にはC1だけが沈下してケーソンの表面がずれる危険がある」。鎌尾氏はこう指摘します。

 護岸に段差ができればどうなるか。鎌尾氏は「超長期的に沈下する部分の護岸と固い地盤で沈下が起きにくい部分の護岸との境で段差ができ、越波した海水が流れ込んでしまいます。護岸の段差の補修は、滑走路などの補修よりも難しくなる」と予想します。

 技術検討会では、委員からさまざまな意見が出されましたが、最終的には沖縄防衛局に、地盤改良は「技術的に可能」との“お墨付き”を与えることは目に見えています。

 鎌尾氏はこう指摘します。「辺野古新基地の問題点は、技術的な実現可能性だけではありません。埋め立て土砂に加え、地盤改良で7万7000本もの砂杭を打つため、東京ドーム5杯分の砂が必要になります。県外から調達する場合、沖縄県の条例で熱処理による生物の外来種駆除が必要になりますが、これだけの量の砂を熱処理することが現実的なのか。自然環境にも著しい影響を与えます。環境影響評価をやり直さなくてよいのか」

 何より重大なのは、辺野古新基地建設は、国民のばく大な税金を使う「公共事業」であるということです。

 「もともとの建設費に加え、地盤改良の費用、さらにメンテナンスの費用…。いくらかかるか分からず、沖縄県民の7割以上が反対している公共事業をこのまま進める必要があるのか―。この点を問う必要があります」

 (柳沢哲哉)

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