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2019年9月19日(木)

政治を足元から変える 未来公共の2年半(上)

声をあげるハードル下げる

 政治や社会に対して草の根から議論し、声をあげる場をつくろうと2017年の3月に結成された「未来のための公共」(未来公共)は、メンバーの進学や就職などを理由に、今年の8月15日をもって活動に区切りをつけました。結成の経緯や、これまでの活動を振り返ります。(前田智也)


 結成のきっかけは、2017年2月です。南スーダンに国連平和維持活動(PKO)で派遣された陸上自衛隊が、首都ジュバで大規模な「戦闘」が発生したと日報に書きました。しかし防衛省は、その日報を保管していたにもかかわらず「破棄」したと隠ぺい。国会でも、政府が「戦闘」を「衝突」とごまかしていたことが大きな問題になっていました。

 稲田朋美防衛相(当時)の辞任などを求めて、都内に住む会社員の日下部将之さんが2月から国会正門前で毎週金曜日に緊急抗議を呼びかけました。この抗議に参加していた10代から20代の若者、子育て世代などさまざまな人たちで結成されたのが、未来公共です。メンバーは、2015年の安保法制(戦争法)の運動に参加していた人も、そうではない人もいました。

 この名前には、「私たちの『未来』を決定する政治のうえに、私たちから立ち上がる『公共』があっても良いのでは」という思いを込めたといいます。

 最初に取り組んだ国会前抗議(2017年3月17日)では、中心メンバーの大学生、馬場ゆきのさんがスピーチしました。

「次は私の番」

 安倍政権によって安保法制が強行可決されたとき、「怒りと同時に、同世代をはじめ多くの人が主権者として各地で行動していたのに、私は何もすることができなかった。自分への後悔、さらに行動した人への尊敬の気持ちが生まれました」と訴え、「次は私の番です」と語りました。

 それから、「共謀罪」法案、「森友学園」問題などをテーマに国会前で抗議を継続。「若者憲法集会実行委員会」や「AEQUITAS」(エキタス)などとも協力して、東京の新宿や渋谷でデモや街宣も取り組みました。入管法の改正や、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設などに反対する市民有志の緊急行動にもかかわりました。

 18年の4月14日には、「総がかり行動実行委員会」「未来のための公共」「Stand For Truth」の3団体で国会正門前抗議を呼びかけ、5万人が参加しました。

 「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)にも協力しながら、選挙にも積極的にかかわりました。先の参院選挙に向けても、野党統一候補勝利のために各地へ足を運びました。

 「政党には市民の要望を聞いてもらい、手をつなげるところはつないでほしい」(2月10日、福島・二本松市の集会で。馬場ゆきのさん)

 「安倍さんの政治を終わらせて、政治を私たちに取り戻しましょう」(6月16日、山梨・甲府駅前での街宣で。奈良みゆきさん)

 未来公共は、終戦記念日の8月15日に活動に区切りをつけるステートメントを発表しました。自由や平等、平和、民主主義の結晶である日本国憲法の支え手であることを決して諦めないとのべ、次のように結びました。

歩み止めない

 政治とは、大仰な言葉や勇ましいメッセージなどではなく、「あなたが隣に立っている、わたしたち自身の日々の身振りや生活のあり方、名前もない物語から始まります。未来のための公共は、本日をもって活動を終了しますが、言うまでもなく、その歩み自体を止めるわけではありません。これからも、上から押し付けられる『公』ではなく、私たちの足もとから立ち上がる公共を」。(つづく)

言葉を壊すな

中山美幸さん

 まさか自分がデモを呼びかける側になるとは考えもしませんでした。安倍政権への怒りと危機感からいてもたってもいられなかった、というところが率直な動機です。あえていうなら、自分が行動することで、政治や社会に対して声をあげることのハードルを少しでも下げられたらいいなと思いました。

 デモや抗議では、よくコールを担当しました。「言葉を壊すな」というコールをしていたのですが、このフレーズには特別の思いを込めました。たとえば安倍政権は、南スーダンでの「戦闘」を「衝突」と言い換えました。言葉が壊れると、平和も壊れてしまう。

 大学で、教員免許を取ろうと勉強しています。科目は国語です。教育実習へも行き、実際に授業をするなかで、言葉の大切さを感じています。「民主主義」についての授業もしたのですが、伝えるのはなかなか難しいですね。

 ネットで頻繁に、誹謗(ひぼう)中傷の言葉を投げつけられました。なかには「日本人ではない」などの言葉も。傷つきましたが、私はそうしたことを見過ごさずに立ち向かいました。普段の生活でも、ヘイトスピーチをする人がいればその場で指摘します。

 最近は、日韓問題に関心があります。将来は韓国で日本語教育に携わりたいとも考えているので、私自身も、しっかり歴史を学ばないといけないと思っています。嫌韓をあおる安倍政権を存続させていることに責任も感じます。一日も早く政権を変えたい。

 「応援しているよ」と声をかけられることが何度もありました。「あなたもやってよ」と言いたくなる時もありましたが、うれしかった。

 政治や社会におかしいと感じている人がいるなら、ぜひ行動してほしいです。


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