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2019年7月27日(土)

主張

東京五輪まで1年

憲章理念の発信力が試される

 2020年東京五輪の開会式(24日)まで1年を切りました。

 各競技会場でテスト大会が始まっています。本番での交通体制の確立、1000万人といわれる国内外の観客受け入れをどうするのか。入手しづらいチケット問題など課題は少なくありません。

酷暑対策は成否の前提

 なかでも酷暑対策は選手や観客、ボランティアの安全を確保し、大会成否の前提となるものです。

 東京では日中35度を超える日が珍しくありません。ある民間の気象会社は、08年の北京以降の大会を平均気温・湿度で比較し、東京が最も蒸し暑い大会になるとしました。スポーツをするのも見るのも熱中症の危険を伴う状況です。

 そもそも大会日程は米国のテレビ局の要請で、最も視聴率が稼げる7、8月に設定されています。その商業主義的な思惑が“酷暑の大会”の背景にあります。

 組織委員会はマラソンなど一部の競技時間を変更しました。それでも十分ではありません。テスト大会では観客のため、大型扇風機や休憩所の設置、氷をつめたパックなどを配布していますが、決め手がないのが実情です。

 自転車ロードレースのテスト大会では「湿度が高く、上り坂も多くてきつかった。本番はさらに厳しいと思う」という選手の声が聞かれました。何より安全を最優先した対策が求められます。

 経費削減・透明化も進みません。大会の直接経費の総額は1兆3500億円です。組織委員会と東京都が6千億円ずつ、政府が1500億円負担します。加えて関連経費として都が8100億円余りを支出します。国の関連経費も約6500億円に上ると会計検査院が指摘します。増額は必至で総額3兆円に迫るといわれます。

 予算項目の大枠は示すものの詳細を明らかにしない組織委員会と都の姿勢は問題です。

 国際オリンピック委員会(IOC)が5年前に決めた「五輪アジェンダ2020」は「透明性の高い運営手続きを確立する」としています。国民の理解を得るために詳細の公表は避けられません。

 大会理念の打ち出しにも疑問があります。五輪憲章は「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」をその目的とうたいます。五輪が「平和の祭典」と呼ばれるゆえんです。トーマス・バッハIOC会長は6月、大阪市での20カ国・地域首脳会議(G20)の会見で「オリンピックを尊重することが世界平和につながる」と訴えました。しかし、開催地の東京から平和を発信する姿はこれまでほとんど見ることができません。

憲法9条を持つ国として

 大会中に広島の原爆投下の日を迎え、長崎が被爆した9日は閉会式です。被爆75年の節目に憲法9条を持つ国として、平和の願いを世界に届けることは国民の自然な感情であり、何より五輪運動の大きな貢献となります。

 韓国の世界水泳では、白血病で療養中の池江璃花子選手にライバルたちがエールを送りました。表彰式後、3選手が手のひらに書いた「NEVER GIVE UP(諦めないで)」の文字を示し励ましました。

 スポーツを通じて友情を育む姿、平和の息吹あふれる大会のために、五輪憲章の理念を踏まえた東京の発信力が試されます。


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