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2019年7月20日(土)

きょうの潮流

 今週の連続テレビ小説「なつぞら」で、こんな場面がありました。監督見習いが恋心を寄せる主人公に理想像を示します。「世界の表も裏も描けるような、現実を超えた現実を見せられるアニメーターになってほしい」▼いろんな感情が渦巻く人間世界を絵に描くアニメ。それに携わる人びとは一つのチームとして作品をつくり上げます。憧れだけでは通用しない過酷な労働のなかで熱意を持ち続けながら▼この業界も東京一極集中が顕著ですが、下請けから始まり独自の存在を築いていったのが京都アニメーションです。技術の高さとともに若者の日常や恋愛、葛藤や不安などをテーマにした作品は熱烈なファンの心をつかんでいます▼ほとんどの工程を社内で完結。「京アニ」と呼ばれる個性的な作品は京を舞台にしたものが多く、地元からも愛されていたといいます。そのスタジオが憎しみの炎に包まれました。33人が亡くなり、建物内のほぼ全員が重軽傷を負う大惨事に▼「パクられた」「小説を盗まれた」。ガソリンをまき火を放ったとみられる容疑者の男は恨みを口にしているそうです。動機は何であれ、人の命をはけ口にするこんな非道が許されるわけがありません▼人間を丸ごと描きたかった―。昨年死去した高畑勲さんはアニメ監督としての理想をそう語っていました。志を突然絶たれたつくり手たちが作品に込めた喜びや怒り、悲しみや楽しみ。人間の存在そのものを否定してしまえば、この世界は成り立たなくなってしまいます。


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