しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年7月19日(金)

巨額の年金積立金なんのため?

年金コンサルタント 河村健吉さんに聞く

投機やめ減らない年金へ 共産党提案は国民利益に

 日本共産党の年金積立金を取り崩して、マクロ経済スライドを廃止する提案について、年金コンサルタントの河村健吉さんに聞きました。


図

 公的年金の積立金は2017年度末に192・7兆円(時価)にまで膨れ上がりました。その8割は厚生年金と国民年金です。ここまで積み上がったのは厚生年金の特異な財政方式が原因です。

経済政策に利用

 日本の公的年金は現役世代が納めた保険料をそのときの年金受給者への支払いにあてる賦課方式で運営されています。賦課方式の場合、保険料と給付が釣り合えばいいため、巨額の年金積立金は不要です。

 しかし、日本では高齢化に備えることを口実に積立金をため込み、政府の経済政策に利用してきました。かつては公共事業に使われ、いまは株式に投資して株価をつり上げています。2014年10月、安倍晋三政権は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針を変更し、内外株式の投資比率を25%から50%に倍増させました。

 年金積立金は政府の年金特別会計で管理しています。保険料の収納と年金支払いの時間的ずれにより資金の過不足が生じます。給付資金の過不足は短期国債の発行を認めれば調整できます。支払い準備は必要ですが年金給付の数カ月分もあれば十分です。フランスはほとんど積み立てをせずイギリスやドイツは年金給付の数カ月分です。

 04年に政府はマクロ経済スライドを導入し、積立金の位置づけを変えました。変更前は給付の相当年数分(5年程度)の積立金保有をめざしていました。変更後は5年ごとに「財政検証」を行い、100年後に給付費1年分の積立金を保有することにしました。これが「100年安心」です。

 この財政方式は二つ問題があります。一つは「100年後」が財政検証のたびに5年ずつ後ろにずれ込むことです。04年の検証期間は04~2100年度でしたが、14年は14~2110年度が検証期間です。「給付費1年分の積立金」は永久に先送りされるのです。

1000兆円超も想定

 もう一つの問題点は積立金の取り崩しが2050年ごろまで起きないことです。14年の検証では2040年に212・3兆円まで増えることになります。しかもこれは賃金変動を除いた実質値です。名目でみると同年に416・1兆円まで増やし、さらに2070年には646・2兆円まで増やそうとしています。厚生労働省は名目値で1000兆円を超えるまで積立金を増やすケースも想定しています。積立金を増やすためにマクロ経済スライドで給付を削減するのです。

 積立金を高利回りで運用すれば保険料が下がったり、給付水準が上がったりすると思わせるのも悪質な詐欺行為です。これまで運用益がでても、給付に回したことは一度もありません。結局、「100年安心」とは巨額な積立金を持ち続け、「政治利用」する方便にすぎません。しかも、給付削減と積立金のため込みは国民の可処分所得を減らし、経済の好循環を阻害します。一方で株価つりあげは一握りの富裕層を喜ばせることになります。

 日本共産党の提案は積立金の投機的運用をやめ、計画的に取り崩してマクロ経済スライド廃止の財源にあてるものです。積立金は国民が払い込んだ保険料ですから、この転換は国民の利益にかなう提案です。


pageup
>