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2019年6月22日(土)

「骨太」社会保障削減を加速

 安倍政権が21日に閣議決定した「骨太の方針2019」(経済財政運営と改革の基本方針)は、社会保障費抑制のさらなる加速化を打ち出しました。「全世代型社会保障」をといいますが、実態は社会保障の切り捨てと自己責任の押し付けです。


自己責任押し付け

 安倍政権は昨年の「骨太」で19~21年を財政の「基盤強化期間」とし、その柱に「社会保障の自然増の抑制」を掲げました。

 今年の「骨太」もこの路線を堅持したうえで、参院選が終わった来年の「骨太」で給付と負担のあり方を含めた新たな社会保障の総合政策を取りまとめるとしています。際限ない給付減と負担増を迫るものです。

 その意図を「骨太」以上にあからさまに表明したのが財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の19日の建議です。

 建議は、日本の財政について「社会保障における給付と負担がアンバランス」だと批判。今のままでは「制度が持続可能とはいえない」と国民を脅し、75歳以上の医療費自己負担の原則2割化や、要介護1、2の生活援助サービスの保険給付外しといった改悪メニューを並べました。

 今年の「骨太」はまた、生活習慣の改善や介護・認知症予防によって社会保障費の伸びを抑制すると強調。予防による生活の質の改善も掲げてはいますが、実態は国民の健康に対する国の責任を投げ捨て、自己責任を押し付けるものになっています。

ベッド削減を推進

 「医療提供体制の効率化」の名で第一に掲げたのは、病院や診療所の入院用ベッド数の削減加速化です。

 「2025年に達成すべき病床数に沿っておらず、不十分だ」(麻生太郎財務相)、「もう一段の対応が必要だ」(根本匠厚労相)、「期限を区切って見直しを求めるべきだ」(中西宏明・経団連会長ら民間議員)―。

 5月末の経済財政諮問会議では、国が都道府県につくらせた地域医療構想によるベッド削減が、現在のスピードでは達成できないとの不満が続出しました。

 「骨太」では、ベッド削減を加速するため、すべての公立・公的医療機関に対し、地域医療構想の具体的方針を原則、今年度中に見直すよう要求。さらに、民間医療機関を含め、消費税財源を利用してベッドを削減した医療機関への財政優遇の拡充という“アメ”や、削減が進まないなら都道府県知事の調整権限を強化する“ムチ”を用意するとしました。

 自公政権には“前科”があります。国公立病院の強引な統廃合によるベッド削減を進め、医療機関に支払われる診療報酬の連続削減で「医療崩壊」を起こした2000年代の「構造改革」です。

 何の反省もなく、医療費の削減ありきでベッド削減をゴリ押しすれば、「入院患者の追い出し」や「入院難民」を増大させるのは必至です。

国保料軽減に罰則

 自治体に国民健康保険への公費削減を迫る“圧力”も強化します。高すぎる国保料(税)を軽減するために市区町村が独自に行ってきた、公費繰り入れを目の敵にして「早期解消を促す」と強調しました。繰り入れが削減・廃止されれば、いまでも高すぎて払えない国保料はさらに大幅・連続値上げされます。

 国保をめぐっては、18年度からの「都道府県化」で国保料の大幅・連続値上げを迫る仕掛けをつくるとともに、繰り入れ削減や国保料の徴収強化といった自治体の“努力”に応じて交付金を増額する「保険者努力支援制度」を設けました。今回の「骨太」では、“努力”が足りない自治体への交付金の減算(罰金)措置をつくると明記。ここでも“アメとムチ”で公費削減を進める構えです。

 5月末の経済財政諮問会議で、新浪剛史サントリーホールディングス社長は、繰り入れをやめて都道府県内で国保料を「統一」する動きを進めれば、「実行過程で病床数削減も含めた取り組みが必要になる」と発言しました。国保料の値上げを我慢するか、それが嫌ならベッドを減らせという給付減と負担増の究極の選択を迫っています。


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