しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年6月14日(金)

主張

「老後に2000万円」

“なかったこと”にはできない

 老後30年間に夫婦で2000万円の蓄えが必要などとした金融庁の審議会報告書をめぐる安倍晋三政権の姿勢に、批判が集まっています。年金には頼れないと具体的数字で示した報告書に衝撃が広がり、麻生太郎金融担当相らが大慌てで受け取り拒否を表明するなどしたものの、その無責任さがかえって怒りの火に油を注いでいます。もともと同報告書は、安倍政権の推し進める「人生100年時代構想」の下で、売り物の一つにする狙いで策定されたものです。いまさら“なかったことにする”ことなどできません。

国民に「自己責任」求める

 「収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦の)無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円」「まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円」「資産形成・運用といった『自助』の充実を」

 金融庁の金融審議会・市場ワーキンググループ(WG)が3日公表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書は、老後の不安をかきたて、年金への信頼を揺るがすものでした。政府が公の文書で、年金は減って望むような生活ができなくなるから資産を運用しよう、と国民にあからさまに「自己責任」を求める内容だからです。報告書では、自民・公明政権が導入した年金抑制・削減の仕組み「マクロ経済スライド」で給付が下がることも記述しました。「『100年安心の年金』はどうなった」「運用するお金なんてない」と怒りが噴き出したのは当然です。

 世論を前に安倍政権と与党は「政策スタンスが違う」などとにわかに言い出し、「報告書はなくなった」「受け取らない」などと火消しに躍起です。さらに金融庁の審議会WGが勝手に決めたかのように責任をかぶせようとしていますが、あまりにご都合主義です。

 この審議会WGがまとめた報告書は、安倍政権が打ち出した「人生100年時代構想」の政策を具体化したものです。政府の未来投資会議は昨年6月、高齢化社会の金融サービスについて「企業型年金制度の周知」「私的年金制度の普及・充実」「老後の資産運用・取崩しを含めた資産の有効活用」などを積極的に行う方針を決めました。WGの議論開始は直後の昨年9月です。学者や投資会社関係者の他、財務省、厚生労働省、国土交通省など省庁をまたいだメンバーが議論に参加しています。月約5万円の不足を示す資料を提出し、説明したのは厚労省の課長でした。まさに政権の肝いりです。

 WGでは、政府の政策をどう分かりやすく、強く発信するかが議論され、「老後は公助に頼るつもりで、あまり資産運用に対して積極的でなかった人に、資産運用しないと大変ですよというメッセージを送る」必要性が公然と語られています。報告書が安倍政権の本音を“分かりやすく”発信したものである事実は消せません。

「減らない年金」実現を

 年金を減らし続けた上、年金に頼らず資産運用せよ―こんな安倍政権の政策では老後は安心できません。日本共産党は、マクロ経済スライドの廃止、低年金者全員の年金上乗せ・底上げなどを提案しています。信頼できる年金を実現する政治への転換が急務です。


pageup