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2019年5月11日(土)

厚労省「値下げの方が多い」というが

国保料 実は値上げが多数

安倍政権による圧力 浮き彫り

2018年度 共産党、モデル世帯で比較

 高すぎる国民健康保険料・税の2018年度改定をめぐって、厚生労働省が“値上げした市区町村より値下げした方が多かった”と説明していた調査結果が実際は正反対で、値上げした市区町村の方が多かったことが10日までに日本共産党の調べで分かりました。


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 厚労省は18年末に示した同調査の結果で、東京23区や広域連合を含む市区町村全体のうち国保料率を引き上げたのは403自治体(全体の23%)、引き下げたのは496自治体(29%)、据え置いたのは836自治体(48%)との内訳を発表。メディアでは「国保、3割が保険料下げ」(「日経」)と、値下げの方が多いかのように報じられました。

 しかし、全国市区町村の国保料率について、厚労省が今年4月に発表した17年度分と、日本共産党が調べた18年度分をモデル世帯で比較したところ、値上げした自治体は厚労省の調査結果を上回り、値下げした自治体より多くなりました。

 給与年収400万円の4人世帯(子2人)の場合、値上げしたのは532自治体(30%)にのぼり、値下げしたのは369自治体(21%)。給与年収200万円の単身世帯(どちらのモデルも土地や家屋は無し)の場合は、値上げしたのが487自治体(28%)で、値下げしたのは412自治体(23%)となり、値上げはどちらも3割前後を占めました。

 このような逆転現象が起きたのは、厚労省が調査の一部で、国保料の上げ下げを市区町村の“自己申告”だけで機械的に集計していたためです。「値下げした」と言われても世帯人数や所得によっては値上げになるケースがあるのに、その実態は示していません。

 今回の調査結果で、安倍政権がさらなる値上げをと圧力をかけている影響が浮き彫りになりました。6月頃までに全市区町村で決まる19年度改定が重大な焦点となっています。

17→18年度 値上げ自治体2倍

「国保の都道府県化」影響如実に

 実際には値下げした市区町村より値上げした方が多かった、国民健康保険料・税の2018年度改定。この間の推移を見ると、連続・大幅値上げの仕掛けがつくられた「国保の都道府県化」の影響が如実にあらわれています。

 15、16年度の国保料は、前出の2つのモデル世帯の場合、値上げしたところは19~21%を占め、据え置きは71~73%でした。実施前年の17年度は、値上げはどちらも15%にやや低下し、据え置きは78%に上昇しました。都道府県化に向けた“様子見”とともに、国が都道府県化の実施と引き換えで出した財政支援の効果があったとみられます。

 それが18年度になると、据え置きは全体の半数以下に下がり、値上げが2倍近くに跳ね上がりました。厚労省は都道府県化に「円滑に移行」したいがため、「最終的な住民負担に配慮を」と表明していましたが、連続・大幅値上げの圧力が確実に効きだしたことを示しています。

 最大の問題は19年度改定です。日本共産党の調べでは、10日までに国保料の改定率を決めたのは500市区町村で、全体の3割を占めます。モデル世帯の「給与年収400万円の4人世帯(子2人)」で計算すると、18年度と比べて値下げは大きく減少。500市区町村のうち、値上げは東京都千代田区をのぞく計22区や千葉市、さいたま市など、約4割の197市区町村にのぼっています(正式決定前を含む)。

 このまま推移すれば、18年度に値上げした市区町村数を大きく上回ることになります。2年連続値上げした市区町村数も、17、18年度は104ありましたが、18、19年度は早くも前年を上回って106になっています。

 いまでも高すぎる国保料を値上げすれば、加入者の命や健康、暮らしはいっそう脅かされます。医療費削減ありきで連続・大幅値上げを狙う圧力をはねのけるとともに、抜本的値下げへ政治を転換させることが必要です。

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 国保の都道府県化 国保財政の運営責任を市町村から都道府県に移すもので、18年度から実施。国保財政の「安定化」の名で、市町村が国保料軽減のために独自に行ってきた公費繰り入れ(法定外繰り入れ)を除いた「標準保険料率」に、国保料を合わせるよう迫っています。それが公費繰り入れの削減・廃止、国保料の連続・大幅値上げへの圧力になっています。


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