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2019年5月9日(木)

きょうの潮流

 「私がいなくなってもしっかりご飯を食べるんだよ」。そう言い残して女性は息を引き取りました。夫はその直前、不妊手術を受けさせられたと告白しました▼望んだものの子どもを授かることがなかった結婚生活。妻は夫の告白をどう受け止めたのか。夫は妻の最期の言葉をどうとらえたか▼男性は昨年、「北三郎」という名で、旧優生保護法下で不妊手術を強制させられたと訴えた国賠訴訟の原告として立ち上がりました。7地裁で20人がたたかっています▼それらの判決を前に国会では、被害者への一時金支給法が成立。弁護団は短期間で成立したことを歓迎しました。同時に、多くの被害者の尊厳を踏みにじったことに対する国の謝罪がないことは不十分だと▼「子どもを産むという生き方を選ぶ権利を暴力的に、しかも何も知らされないまま奪われた人が多い。320万円という一時金は低すぎる」。そう語る小森淳子さん(54)は、脳性まひのため障害があります。視覚障害のある夫とともに、双方の両親からの反対や周囲の無理解など多くの困難を乗り越えながら、2人の子どもを育て上げました。強制不妊手術の被害は人ごとではありません▼被害者が真に人権を回復するために必要な手だてを取るにはどうすべきか。社会の奥深くにまで潜む優生思想を克服するには。そのヒントは、国連の障害者権利条約の誕生時に、障害のある当事者らが繰り返し口にしたフレーズにあります。「私たち抜きに、私たちのことを決めないで!」―。


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