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2019年2月20日(水)

沖縄2.24県民投票

基地のための工事しない

元大手ゼネコン技師「譲れぬ心情」

名護市在住 阿波根数男さん(70)

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(写真)県民投票に向けて「これ以上、沖縄に米軍基地はいらない」と語る阿波根数男さん

 定年退職して間もない2013年夏、元上司から思いがけない誘いを受けました。「辺野古の工事を手伝ってくれないか」―。

 日本有数のスーパーゼネコンの鹿島(かじま)建設(資本金814億円、従業員7700人)の九州支店沖縄営業所で長年、1級土木施工管理技士として工事現場で施工管理を任され、“陣頭指揮”を執ってきた阿波根(あはごん)数男さん(70)=名護市田井等(たいら)=。「残された人生をゆっくり過ごしたい」と、誘いを断りました。

 日米両政府が沖縄県民の反対の民意を踏みにじりながら強行する、名護市辺野古米軍新基地建設の工事の手伝いを断った本当の理由は、別にありました。

 「米軍占領下で米軍の横暴を肌で感じ、まさに植民地だった。これ以上、沖縄に米軍基地はいらないという強い思いがある。基地のための工事はやれない。現役時代は会社に迷惑がかかると思い、表には出さなかった」

 阿波根さんにはもう一つの“業務”がありました。公明党・創価学会の支援活動です。九州・沖縄の創価学会施設の建設を担当していました。

 24日投開票の同新基地建設の埋め立ての賛否を問う県民投票で、より明確で圧倒的な反対の民意を示すため、多くの県民が奮闘する中、「県民に役立つ工事には力を尽くすが、戦争のための米軍基地はだめだ」と訴える元大手ゼネコン土木技師の、「譲れない心情」に迫ります。

圧倒的反対で断念させる

公明党・創価学会の新基地容認に反発

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(写真)辺野古海上大行動で「海を壊すな」と訴える人たち=2月16日、沖縄県名護市辺野古

 鹿島建設に勤めていた1級土木施工管理技士の阿波根数男さん(70)は、創価学会が米軍核ミサイル基地跡地(沖縄県恩納村)に建設した「創価学会沖縄研修道場」併設の「沖縄世界文化会館」など、国内外の重要人物が利用する施設の施工を取り仕切ることもたびたびでした。「創価学会からの指名だった」そうです。

創価学会と交流

 東京の信濃町にある創価学会本部での契約にも立ち会い、創価学会幹部との交流を積み重ね、「(創価学会名誉会長の)池田大作氏などの著作も独学で学び、信頼関係を深めてきた」と言います。

 公明党の国会議員を増やすための建設業者などを束ねた後援組織、「アキサン会」の中心メンバーとなり、首長、地方議員選挙でも活発に動いてきました。

 沖縄で最初に「自公連立」が実現する中でも公明党県本部、県の創価学会は、新基地建設が争点となる県知事選や名護市長選では「自主投票」でした。

 ところが2018年の名護市長選、県知事選では、公明党・創価学会は新基地建設を事実上容認し、官邸が丸抱えで支援する市長候補や知事候補を「推薦」しました。

 阿波根さんは「あり得ないことだ」と強く反発。「沖縄戦の悲劇から真っ先に幸せになるべき沖縄を説く公明党、創価学会の立場から逸脱している」との文書を、公明党や創価学会の幹部らに届けました。

 阿波根さんの中に流れる「沖縄のアイデンティティー」がそうさせました。沖縄戦を生んだ太平洋戦争で叔父がフィリピンで戦死。生まれ育った同県本部町では、米軍が民家や農地をブルドーザーで踏みつぶして飛行場を建設しました。

不安抱えた日々

 当時は基地と町の境界はなく、民家の横でいきなりパラシュート降下訓練や野戦訓練が始まり、道端には、基地への侵入を防ぐ地面に張られた架線を踏むと一斉に発火する危険な装置が設置されているなど、生活と隣り合わせの事故への恐怖と不安の日々でした。

 土木技師として、海洋博公園・美ら海(ちゅらうみ)水族館(本部町)の巨大水槽を支える基礎工事、那覇空港の航空交通管制管理棟整備などを手掛け、「“地図に載っている工事”は、子どもへの自慢だった」と語る阿波根さん。

 県民投票成功後に、かなえたい夢があります。「県民投票の『埋め立て反対に○』という圧倒的な結果で、政府に新基地を断念させる。そして基地のない平和な沖縄で、県民悲願の鉄軌道を何としても実現させたい」―。(山本眞直)


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