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2019年1月17日(木)

きょうの潮流

 「横綱になったら、引退することを考えろ」。昭和の大横綱と称された大鵬は、のちに横綱に昇進する後輩たちにそんな言葉を送りました▼小さな大横綱、千代の富士はふり絞ってきた体力と気力の限界を引退の理由にあげました。綱の重みを背負った力士の引き際。それは、彼らの相撲人生そのものをうかがわせます。この人の心中に去来したものは何だったのか▼横綱になって、わずか66回の出場で稀勢の里が土俵を降りました。新横綱として臨んだ2年前の春場所。終盤に負った左胸の大けがと、その後の強行出場が最後まで尾を引きました。涙の引退会見でも、けがをする前の自分の相撲には戻れなかったと▼19年ぶりの日本出身横綱の誕生は日本中を沸かせました。一身に受けた期待。しかし、けがを抱えたまま土俵に上がった代償はあまりにも。勝ち続けなければ土俵を去るしかない横綱の重圧と制度にも追い詰められました▼15歳で角界に飛び込んだ、たたきあげ。愚直に前に出る相撲とともに、一途(いちず)に土俵にとりくむ姿勢はたくさんのファンに愛されました。「土俵人生に一片の悔いもない」という最後の言葉に込められた思いからくみとるものは多い▼これからは荒磯親方として後進の指導にあたります。「一生懸命相撲を取る力士、けがに強い力士、そういう力士を育てていきたい」。相撲への情熱はもちろん、次代を担う若い力士にぜひ伝えてほしい。壁にぶつかったとき、そして、けがをしたときの対処や心構えの大切さを。


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