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2018年12月14日(金)

重度障害者 再び勝訴 高裁岡山支部

福祉65歳打ち切りは違法

介護保険優先原則 岡山市の処分批判

 障害者自立支援法(現障害者総合支援法)7条の介護保険優先原則にそって、介護保険の申請がないからとして、65歳の誕生日で障害福祉サービスを打ち切った(不支給決定)のは違憲・違法だと岡山市を相手取り、脳性まひで重度の身体障害がある浅田達雄さん(70)=同市=が訴えていた裁判で、広島高裁岡山支部(松本清隆裁判長)は13日、原告勝訴の一審判決を維持する判決を出しました。


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(写真)二審判決も全面勝訴で喜ぶ浅田達雄さん(左から3人目)ら=13日、岡山市

 判決は、岡山市側が市の自由裁量がないと主張したことに対し、浅田さんへの障害福祉サービスを打ち切ったことは「裁量処分と解するのが相当」だとしました。そのうえで、市側は不支給決定をしても浅田さんの周りにボランティアがいるので必要最低限度の支援まで失われることはないと主張したことに「看過しがたい誤り」と批判しました。

 浅田さんにとって介護保険サービスの利用料負担が「大きかったことも認められる」として、市の処分は「裁量権の範囲を逸脱し、または濫用(らんよう)にわたるものであって、違法」だと指摘。市の不支給決定は「国家賠償法上も違法」だと断じました。

 判決後の集会で浅田さんは「年齢に関係なく僕の人間としての生きる権利と平等な介護が保障され、尊厳が回復してとてもうれしい」と笑顔で語りました。代理人の呉裕麻弁護士は「一審判決より良い判決だ」と評価。金馬(こんま)健二弁護士は「人間の尊厳を守る運動の成果が表れた判決だ」と述べました。

 介護保険優先原則 障害福祉サービスを利用していた障害者に対し、65歳の誕生日を迎えたとたん介護保険の優先利用を求める規定。非課税世帯が障害福祉サービスを利用した場合、2010年4月から利用料自己負担はゼロになりました。一方、介護保険サービス利用では原則1割の自己負担が発生。また、サービスの質と時間は障害福祉の方が柔軟性があり、介護保険に移行させられた障害者は多くの不自由を強いられています。

尊厳の運動“前進”

 「障害者運動として一歩進んだ」―。岡山市の重度障害がある浅田達雄さん(70)が同市を相手取り提訴していた裁判で、広島高裁岡山支部が、浅田さん全面勝訴の二審判決を出し、関係者や全国から駆けつけた支援者らは喜びを分かち合いました。

 「年金は下がる一方なのに65歳で利用料を負担しなければいけないのか」「年を取って障害は重くなっているのに介護保険に移行したらサービス支給量は減ってしまった。理不尽だ」。障害者の高齢化がすすむなか、介護保険への移行が全国的な問題となっており、多くの関係者が同判決を注目していました。

 浅田さんの代理人、金馬健二弁護士は「この訴訟は歴史上初めて、障害福祉サービスと介護保険サービスの違いは何かを、掘り下げてきた」と述べます。

 二審判決は、障害福祉サービスと介護保険サービスの違いを述べ、障害者自立支援法(現障害者総合支援法)7条の「介護保険優先原則」について、二重給付とならないよう調整する規定だと指摘しました。

 障害福祉サービスは障害者自立支援法施行時、原則1割の利用料負担がありました。これに対し違憲訴訟を起こすなど全国の障害者が声をあげ、現在、非課税世帯は無料になっています。

 「障害者自立支援法違憲訴訟の成果が今回の判決につながっている。地域、全国でのたたかいと過去・未来、現在がつながっていることを示した判決だ」。呉裕麻弁護士は、そう語りました。

 同訴訟の元原告で、広島県廿日市市から車いすで駆けつけた秋保和徳さん(67)は「この判決は浅田さんだけのものではない。圧迫された福祉施策のもとで暮らす全国の障害者、高齢者のものだ」と強調。「私たちが声をあげて国を変えていこう」と語りました。

 名古屋市の上田孝さん(68)は現在、支給決定を2カ月に1度更新しながら障害福祉サービスを利用しています。「今回の勝利で、通常通り1年に1度の支給決定を市に迫っていきたい」

 岡山県地域人権運動連絡協議会の中島純男議長は「判決は、若い人のための社会保障を守るものだ」と述べました。

 (岩井亜紀)


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