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2018年7月21日(土)

障害年金打ち切り問題

厚労省が撤回方針出したが…

降級の人には対策なし

 20歳前に障害を負ったことで障害基礎年金を受ける障害者のうち1010人に対し障害の状態に変化がないのにもかかわらず日本年金機構が昨年、支給打ち切りを通告していた問題。当事者らが批判の声を上げるなか、厚生労働省はこの通告撤回の方針を出しました。問題は解決したのでしょうか。(岩井亜紀)


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(写真)全国心臓病の子どもを守る会事務局長の下堂前亨さん

 「厚労省が短期間で方針転換をしたのは、私たちはじめ当事者が声を上げた運動の力によるものです」。全国心臓病の子どもを守る会の下堂前(しもどうまえ)亨事務局長は、そう語ったうえで、「これで問題解決したとは言えません」と強調します。

 今回、打ち切り通告された1010人のうち496人が心臓病など循環器疾患による障害のある人です。

背景には一元化

 機構が1010人に対して打ち切り通告を出した背景に、都道府県別だった障害基礎年金の認定手続きを、昨年4月から障害年金センター(東京)に一元化したことがあります。

 厚労省は、支給打ち切りの通告をした1010人に関しては、再申請させたうえで、「一件一件丁寧に対応する」(加藤勝信厚労相、3日の参院厚労委員会)としています。

 「日本年金機構から、方針撤回などの新たな通知は届いていません。だから、不安なまま」。こう話すのは、打ち切り予告の通知を昨年12月に受け取った女性(44)=福島県郡山市=です。

「厳しい裁定に」

 下堂前さんは「方針を変え、『一件一件丁寧に対応する』と言っているのだから、1010人にはそのことを伝えるべき。中には、少し働けているからと再申請を諦めている人もいます」と述べ、再通知をしない厚労省の姿勢を批判します。

 問題は打ち切りだけではありません。1010人同様、状態の変化がないのに昨年、年金1級から2級に降級させられた人が会員の中にいると、下堂前さんは話します。

 北海道の男性(39)は8回の更新手続きをへて18年間、1級年金を受給してきました。

 1日の8割はベッドに横になる生活。外出も困難です。頭痛のほか胸と背中の痛み、めまいが頻繁に起こり、これまで一度も仕事に就いたことがありません。症状の改善がないにもかかわらず、昨年の更新で2級にされました。

 降級させられた人数について厚労省は「未集計」とし、この人たちに対して現段階では、何らかの対応をとることはないとしています。

 「これから新規で障害年金を申請する若い人たちには、厳しい裁定になることは間違いありません。障害者の所得保障について根本的に検討する必要があります」。下堂前さんは強調します。


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