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2018年5月14日(月)

主張

「受診手遅れ死」

命奪う深刻な事態を断ち切れ

 お金がなくて医療機関にかかることを我慢し、耐えきれずに受診したときは手遅れだった―。痛ましいケースが依然として各地で相次いでいます。全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)の2017年「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」では、29都道府県で63人もの命が1年間で失われていました。貧困と格差の広がりの中で、国民の命と健康を守るための公的医療制度がしっかり機能していない深刻な現実を突き付けています。こんな事態は一刻も放置できません。悲劇を防ぐため、医療など社会保障の仕組みを改革・拡充することが急がれます。

生活困窮がもたらす悲劇

 ―経済的余裕がなく国民健康保険料を滞納、受診時に10割負担となる資格証明書を発行される。体調悪化を約3カ月間我慢し、耐えられず救急で受診。手遅れのため直腸がんで亡くなった60代男性

 ―多額の借金を抱え国保料を払えず。健診で精密検査が必要とされても未受診。呼吸が苦しくなり受診したときは肺がんで、治療の効果がなく死亡した40代男性

 全日本民医連が先月発表した「手遅れ死亡事例調査」は、経済的な困窮によって健康がむしばまれ、命が失われていく悲惨な実態を浮き彫りにしています。

 同調査は05年から行われていますが、近年50~60人台で推移しており減少傾向はありません。この数字は、民医連加盟の医療機関を通じて把握されたもので「氷山の一角」です。実際はさらに多くの人の命が失われている可能性があると指摘されています。

 調査では、失職で収入が減るなどして国保料(税)が払いきれず、正規の保険証を取り上げられた人たちの受診遅れ死亡が際立っています。加入者の多くが非正規労働者や無職の人たちなのに、負担能力を超えた保険料負担を強いる現在の国保制度がもたらした矛盾と弊害はいよいよ深刻です。

 厚生労働省の調査では国保料を滞納する世帯は全国で289万以上にのぼり、正規の保険証を受け取れないのは100万世帯を超えています。高すぎる国保料の引き下げや軽減措置の拡充を実現することは急務です。保険証取り上げという乱暴なやり方にストップをかけることが必要です。

 保険証があっても窓口負担の重さから受診をためらうケースも少なくありません。せっかく受診しても経済的理由で治療を中断し、死亡に至った人もいました。原則無料が主流の欧州諸国と比べ、本人負担原則3割という日本の窓口負担は高すぎます。窓口負担の引き下げは極めて切実な課題です。

生存権の破壊を許さず

 お金の有無が命の危機に直結する事態は、「国民皆保険」を空洞化させ、憲法25条が保障する生存権を掘り崩すものです。重大なのは、安倍晋三政権が社会保障改悪をすすめ、医療制度の破壊に拍車をかけていることです。

 4月から開始された「国保の都道府県化」は、市町村による国保への財政支援をやめさせるなど国保料大幅アップにつながるものです。さらに安倍政権は、75歳以上の後期高齢者医療制度の窓口負担の2倍化をはじめ、あらゆる世代の負担増の仕組みの導入を企てています。安倍政権による社会保障破壊を許さない世論と運動を広げることが求められます。


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