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2018年5月11日(金)

独・伊は米軍活動規制

日米地位協定の異常浮き彫り

許可なく低空飛行できない

沖縄県と日弁連が調査

 沖縄県ではオスプレイの墜落、大型ヘリの窓枠の校庭への落下など、1972年の本土復帰以降も米軍関連の事件・事故が後を絶ちません。米軍の特権的な扱いを認めている日米地位協定の抜本的改定を求める同県と日本弁護士連合会はそれぞれ、ヨーロッパで独自調査を実施しました。調査は、ドイツとイタリアで実施。両国はともに大規模な米軍基地を抱え、事故や低空飛行訓練では国内法の優先、地位協定の改定の実績を持っています。(山本眞直)


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(写真)沖縄県が3月に発表した『他国地位協定調査中間報告書』

 沖縄県は2000年に11項目の日米地位協定の見直しを日米両政府に要請しています。今年2月、両国に知事公室職員3人を派遣しました。

 日弁連は14年に日米地位協定改定意見書を発表しています。今年4月に調査団を派遣。沖縄からも複数の弁護士が参加しました。

 両調査団は、両国の政府・軍関係者、基地所在の自治体首長などと面談しました。

国内の法で拘束

 沖縄県が3月に発表した『中間報告書』によればドイツは同国に駐留するNATO(北大西洋条約機構)加盟国と1959年にボン補足協定を締結。4回改訂されています。当初の協定は米国など戦勝国の利益が色濃く、ドイツには不利なものでした。

 93年の改定ではドイツに駐留する米軍などの同盟軍の権利が、ドイツ連邦軍の国内における地位と同等であり、ドイツの法に拘束される、と改善されました。

 日米地位協定は基地や提供区域の運営、警護、管理などの権限はすべて米軍にあり“治外法権”です。ボン補足協定は「ドイツ連邦、州、地方自治体の立ち入り権」を明記し、「緊急の場合や危険が差し迫っている場合には、事前通告なしの立ち入りが認められている」(第53条)のです。

事故で規制強化

 イタリアでは98年、米軍機によるロープウエー切断事故が起きました。当時、外相として米国防総省に出かけて規制強化で交渉した元首相が基地管理権について証言しました。「イタリアの米軍基地にはイタリアの司令官がいて、米軍はすべての活動について伊軍司令官の許可が必要だ」

 沖縄県は報告書でドイツ、イタリアともに、米軍機などの事故をきっかけとした国民世論の高まりを背景に地位協定の改定、新たな協定締結を実現させていることを紹介。自国の法律や規制を米軍にも適用させることで自国の主権を確立させ、「米軍の活動をコントロールしている」と指摘。その上でこう総括しています。

 「日本では原則として(米軍には)国内法が適用されず、日米で合意した飛行制限なども守られない状況や地元自治体が地域の委員会設置を求めても対応されない状況であり、両国とは大きな違いがある」

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(写真)イタリアのスキー場で起きたロープウエー切断の事故機が、日本の横須賀基地を母港にしていた空母インディペンデンスの元艦載機だったことを明らかにした「しんぶん赤旗」日曜版1998年5月10日号

国民の利益守る

 日弁連調査団に沖縄から参加した新垣勉弁護士によると、ドイツ国内の米軍基地は、NATO軍の一員としての基地使用であり、地位協定もNATOを構成するそれぞれの国が対等の立場で使用協定を結んでいるため対等性が徹底しているといいます。

 イタリアは米軍とも2国間協定を締結していますが、米軍機のロープウエー切断事故での国民世論の高まりを受けて強い規制措置を米国に求めるなど主権を守っていると指摘します。

 ドイツ、イタリアでも米軍は低空飛行訓練で政府または同国司令官の許可なしに実施できないようになっていて、航空法の適用除外をして米軍にフリーハンドを与えている日本と大違いの実態も分かったといいます。

 新垣弁護士は「ドイツ、イタリアとも強い主権意識で国民の利益を守っているのを感じた。日本とは大違いだ。沖縄の米軍基地の異常が強く印象づけられた」と話しています。


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