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日本共産党

2018年4月23日(月)

主張

「後期医療」の10年

長生き脅かす痛みを広げるな

 75歳以上の高齢者、65歳以上の障害者を対象にした後期高齢者医療制度が発足して4月で10年です。高齢者を年齢で機械的に区切り、一つの「医療保険」に無理に囲い込む制度は、保険料アップが繰り返されるなど弊害と矛盾が深刻です。導入時“現役世代より軽い”と政府が盛んに宣伝した窓口負担も引き上げが検討されており、痛みがさらに拡大する危険が現実のものとなっています。長生きを脅かし高齢者につらい制度を存続させるべきではありません。

暮らしをますます圧迫

 2008年4月に開始された後期高齢者医療制度は、75歳になったとたん、それまで入っていた医療保険から切り離され、独立した「保険」に加入させる仕組みです。公的医療費への国の財政支出削減を狙う「医療構造改革」の柱に位置付けられ、自民・公明政権によって導入が強行されました。

 制度発足直前、厚生労働省幹部が「医療費が際限なく上がり続ける痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただく」と本音を語り、大問題になりました。実際、75歳以上人口が増えるほど保険料アップにつながる仕組みになっており、値上げの傾向に歯止めがかかりません。年金から天引きされる保険料の重さが暮らしを圧迫していることは明らかです。

 年金天引き対象外の低所得者の保険料滞納も深刻です。滞納者は毎年20万人以上で推移、滞納が続き有効期間が短い保険証を交付された人は2万人を超えています。お金が払えず安定して医療にかかれなくなる事態は、問題です。

 重大なのは、安倍晋三政権が17年度から低所得の人などが対象の保険料の特例軽減措置の縮小・廃止に踏み出したことです。影響を受けるのは900万人以上にのぼり、負担が何倍にも跳ね上がるケースまで生まれます。年金は増えず暮らしが上向かない中、特例軽減措置をなくすことは、高齢者の実態を無視したものです。

 現在原則1割の窓口負担を2倍化することを安倍政権が狙っていることは、全く筋が通りません。麻生太郎財務相は、首相だった08年当時“現役世代より低い1割負担で心配なく医療を受けられる”と売り込んでいたはずです。かつての言明を翻し、高齢者に次々と負担を押し付ける―こんな理不尽なやり方は到底許されません。

 病気になりがちな一方で、収入が少なく暮らしが不安定な人が多い75歳以上を一つの「保険」に集めて運営する制度設計そのものに無理があります。厚労省幹部も制度開始時、やっていけるのは「5年くらい」と公然と発言していました。行き詰まりがあらわな制度は撤廃することが求められます。

撤廃して元の仕組みに

 政府は先月、社会保障改悪の加速を狙う高齢社会対策大綱を決めましたが、その大綱ですら“年齢区分で人々を画一化するな”と言わざるをえません。それなのに年齢差別制度に固執する政府は支離滅裂です。「後期医療」を廃止し元の老人保健制度に戻せば、75歳を過ぎても国保や健保などから切り離されず、際限ない保険料アップの仕組みもなくせます。

 4月からは「後期医療」だけでなく医療・介護の各分野で負担増が目白押しです。高齢者をはじめ全世代を苦しめる社会保障破壊をやめさせることが急がれます。


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