しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年3月30日(金)

主張

年金の過少支給

国民の受給権守る姿勢がない

 日本年金機構が、少なくとも約139万人にのぼる人に本来の年金額よりも少ない額しか支給しない深刻な事態を引き起こし、厳しい批判を浴びています。今回の過少支給は、年金機構が受給者に分かりにくい手続き書類を送りつけたり、事務を委託された企業が個人情報をずさんに扱ったりしたため、発生したものです。年金受給権を国民に保障するという責任と自覚が完全に欠落しています。年金機構と厚生労働省は姿勢を根本から改め、全容解明とともに、被害回復・再発防止に直ちに取り組むべきです。

難解で複雑な書類送付し

 過少支給が大問題になったのは2月の年金支給(昨年12月分と今年1月分)時でした。振込額が突然減らされたことに気づいた人たちから年金事務所などに問い合わせや抗議が殺到する中、年金機構は大規模な過少支給があったことをしぶしぶ認めたのです。

 最大の原因は、同機構が昨年、受給者に送った不親切極まる書類(扶養親族等申告書)にあります。年金額を減らさないよう所得税控除をするには申告書に記入し返送する手続きが必要です。しかし今回の申告書は、前回までのはがき形式と全く異なり、用紙は大きく記入事項も煩雑でした。提出が必須とも理解しづらい内容だったため、未提出や記載ミスが続出、大量の過少支給につながりました。

 分かりにくい書類を事務的に送り付けるやり方は、受給者の立場に立ち確実に年金を保障する年金機構本来の役割からあまりにもかけ離れています。姿勢を改め、被害回復へ総力を挙げるべきです。

 年金機構から約528万人分の個人情報の入力を委託された国内の企業が、契約に違反し中国の業者に再委託を行うなど、ずさんな作業を行っていたことも判明しました。年金機構は委託先企業の問題を掌握していたにもかかわらず、対処が遅れました。この企業の関係だけで約10万人分、総額20億円を超える過少支給が発生しました。情報管理とともに、外部委託のあり方そのものが問われます。

 年金機構をめぐっては2015年に約125万件の個人情報流出が発生、17年には元公務員の妻ら約10万6千人の年金約600億円が未払いだったことが発覚するなど大きな問題が何度も繰り返され、そのたび年金機構や厚労省は「再発防止」を強調してきました。にもかかわらず、またも過少支給を引き起こし、年金への国民の不信を広げていることは重大です。

 約5000万件の「消えた年金記録」問題に国民の怒りが渦巻いた07年、社会保険庁を解体し日本年金機構設立に道を開く法律を強行成立させたのは第1次安倍晋三政権でした。安倍首相は当時、社保庁解体で「民間」手法を取り入れ、外部委託を推進すればサービスがよくなるなどと主張し、職員の解雇・リストラなどを実行しました。いまその矛盾と弊害が次々と噴出していることは明白です。

不信の解消へ体制強化を

 問題だらけの外部委託を推し進めるのではなく、経験ある元職員の採用を進めるなど体制・業務のあり方の見直しこそ必要です。希望する職員の職場復帰、臨時職員の正規職員化など処遇改善が急がれます。年金への国民の信頼を取り戻すため、年金実務を担う仕組みの再生・強化が求められます。


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