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2018年2月19日(月)

きょうの潮流

 相手を追い込む圧倒的な力。コンピューターに近い指し手。あの若さで信じられないほどの完成度―。トップ棋士が口をそろえて称賛する中学生棋士の藤井聡太さんがまたも歴史をぬりかえました▼こんどは全棋士参加のトーナメントで頂点に。羽生善治永世7冠や佐藤天彦名人らのトッププロを相次いで破り、棋戦初優勝を最年少記録で飾りました。五段に昇段したばかりの段位も六段へ。早くも一流棋士の仲間入りを果たしています▼昨年、プロデビューから29連勝した後、不調な時期があったといいます。トップ棋士との対局が続くなかで、結果を気にするあまり自分の将棋が信じられなくなったと。「負けたくないという気持ちが前に出すぎてしまった」▼負けることへの恐れ。だれもが陥る試練を乗り越えられたのは、自分が信じた最善の一手を指そうと心に誓ってから。それは幼い頃から詰将棋に没頭し、ひたむきに将棋と向き合ってきた自分を取り戻すことにつながりました▼棋士には勝負師、研究者、芸術家の三つの顔があるといわれます。藤井さんの師匠、杉本昌隆七段は「形勢不利の場面を一気にひっくり返す勝負手。それを放つことができるのが彼の将棋の一番の魅力でもある」▼さまざまな葛藤のなかで人間同士がくりひろげる盤上のたたかい。「まだまだ自分に足りないものは多い。一歩一歩上を目指していきたい」。みずからの限界に挑みながら、新たな地平を切り開いていく。進化し続ける15歳の姿がそこにあります。


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