2017年10月30日(月)
主張
読書の秋
一冊と出会う喜びを身近に
深まる秋、読みたかったあの本をせっかくだからじっくりと、という方もいらっしゃることでしょう。いまちょうど「読書週間」(27日〜11月9日)も始まっています。読書を通じ、気分転換をしたり、より多くの知識や情報を得たり、視野を広げたり、心を豊かにしたり…。本は日々の暮らしになくてはならない存在です。一方で、近所の本屋さんの閉店や遠すぎる図書館など、国民が本と出合える身近な場所がしっかり確保されていないことも問題になっています。多くの人が気軽に本を手にできる、そんな機会を保障する環境を整えていくことが求められます。
地域の文化拠点は不可欠
東京都千代田区神田をはじめ「古本まつり」が行われるなど、この秋も本にちなんだ催しが各地で取り組まれています。
今年は「読書週間」が始まってちょうど70年にあたります。日本国憲法の施行と同じ歩みです。
読書週間を呼びかけている読書推進運動協議会によれば、第2次世界大戦の戦火の傷痕がいたるところに残る時代、「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」という決意のもと、出版社、取次会社、書店、公共図書館に新聞・放送も加わり、1947年11月に第1回「読書週間」が開催されたのが始まりです。
戦前にも読書や図書にまつわる企画はありましたが、軍国主義の強まりと戦争拡大の中で消えていったといいます。平和で自由にものが言える民主主義の社会こそ、豊かな読書を保障する土台であることを物語っています。
いま日本は世界でも有数の「本を読む国民の国」となりましたが、国民が本を手にする上で課題は少なくありません。その一つが、最近問題になっている書店の減少です。大手出版物取次会社のまとめでは、書店が「ゼロ」の自治体・行政区は420にのぼります「朝日」(8月24日付)。その傾向は都市部でも顕著で、駅の近くの本屋さんが閉店して不便になった、などの声も少なくありません。通勤・帰宅の途中や、散歩や買い物のついでに立ち寄れる、まちの書店は、地域の「活字文化」普及の拠点ともいえます。地域の書店をどのように存続・発展させていくか議論が必要です。
図書館の存在も地域の中では欠かせません。住民の読書の機会、必要な資料や情報の提供を保障する上で図書館の果たしている役割は大きなものがあります。日本の図書館は「無料利用原則」が60年以上にわたって続き、利用者の多い公共施設の一つです。
ところが公共施設削減の流れを強める自民・公明政権の下で図書館の統廃合や新増設の縮小・抑制、サービス低下を招きかねない「民間委託」などがすすめられています。図書館機能に不可欠な専門職員・司書の削減なども行われています。図書館を疲弊させる施策は中止し、拡充に向けた財政措置の強化などをはかるべきです。資料収集・資料提供など図書館の自由を脅かす行政や外部からの干渉の動きは決して許されません。
国民の暮らしの保障こそ
長時間・過密労働でくたくたでは読書の余裕など生まれません。低賃金ではとても本まで手がまわりません。国民の所得を増やす経済改革、本物の働き方改革は、この点でも重要となっています。