2017年5月17日(水)
きょうの潮流
誘拐や人質によって犯人から要求される身代金。卑劣な犯罪は、複雑に絡み合う人間模様とともに映画やドラマの題材にもなってきました▼みずからの欲望を人の自由や命と引き換えにする。今どき、拘束の対象は人ではなくパソコンです。世界各国を襲った大規模なサイバー攻撃。国内でもおよそ600カ所、2000台のパソコンが身代金要求型と呼ばれるウイルスに感染したとみられています▼企業や自治体、個人のコンピューターに発生した障害は病院やJRでも。状況によっては安全や命にもかかわり、被害はさらに広がる可能性があるといいます。専門家は、不審メールを開かないことや修正ソフトの適用を呼びかけています▼サイバーとはインターネットが形成する情報空間。今や世界中に張り巡らされたネットワークを駆使した今回の技術は、もともと米国家安全保障局(NSA)が監視活動用に開発したものを盗んで拡散したものだと▼「地球上すべて人々のコミュニケーションを傍受する仕組みをつくりあげた」。NSAの監視活動を告発した元職員のスノーデン氏が語っています。国家権力によって個人の情報やプライバシーが無法に、無制限にさらされている実態。それはいま日本でも▼本紙が報じたように捜査機関の闇の手は罪なき人のメールやLINE(ライン)にも伸びています。科学の進歩や便利さを悪用した市民監視。それを合法化する共謀罪の強行を許さないことは個人とともに、人間の社会を守るたたかいでもあります。