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2017年4月13日(木)

社会リポート

生活保護費過誤払い分 “返還しなくていい”

最低限度の生活できなくなる

東京地裁判決

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 福祉事務所の手違いで生活保護世帯に対し保護費を多く支給していた分(過誤払い)は、最低限度の生活を保障できない場合、福祉事務所に返還しなくていい―。母子家庭の母親が過誤払い返還処分を取り消すよう求めた裁判で、東京地裁は、母親の訴えを認める判決を出しました。「全国で同様の問題が多発しているので、判決が問題解決の“武器”になる」と支援者らは力を込めます。

 (岩井亜紀)


写真

(写真)勝利集会で報告する田所弁護士=3月、東京都豊島区

 夫のDV(家庭内暴力)が原因で離婚後、都内で生活保護を利用しながら中3の娘と暮らす40代の母親、山本みずほさん(仮名)が2015年10月、福祉事務所を相手取り提訴しました。

 娘が必要としていた参考書やコートを我慢させる暮らし。過誤払いの総額は59万1300円で、分割して支払う月2千〜3千円の額は数日分の食費に当たります。これを保護費から支払えば、憲法25条(生存権)と生活保護法が定める最低生活が保障されなくなると訴えました。

決定書を送付

 過誤払いになったのは、山本さんが福祉事務所に収入申告していた児童扶養手当を、福祉事務所が1年3カ月にわたり収入認定しなかったこと。さらに、冬に暖房代などとして保護世帯に支給する冬季加算を4月以降も支給したことによるものです。担当ケースワーカーの交代をきっかけに、過誤払いが明らかになりました。

 山本さんは収入申告していたため適正額が支給されていると思っていたので、生活費や養育費に使っていました。過誤支給額を聞いた山本さんは「生活保護を受けているので支払えないです」と訴えました。しかし、福祉事務所側は、山本さんに月2千〜3千円の分割でもいいからと、過誤支給額の全額返還を義務付ける決定書を作成し送付しました。

 東京地裁(古田孝夫裁判長)は2月1日、「生活実態、当該地域の実情等の諸事情に照らし、返還金の返還をさせないことが相当である」と福祉事務所が判断する場合には、保護利用者は過誤支給分を返還しなくてもいいとする判決を出しました。山本さんの訴えを全面的に認めた内容でした。

 山本さんの代理人、田所良平弁護士は「“資力がない場合には返還額をゼロ円にすることも認められる”ことを正面から認めた判決だ」と評価。「判決はまた、福祉事務所が返還を求める場合は、保護利用者が最低限度の生活を営むことができるか否かを検討したうえで返還額を決めなければならないことを明らかにした」ことも重要だと強調します。

安どの笑み

 山本さんは「(分割で)70歳すぎのおばあさんになるまで支払わずにすみました」と安どの笑みを浮かべました。

 「判決は、生活保護制度の本来のあり方を示したものだ」。全国生活と健康を守る会連合会の安形義弘会長はこう評価し、「各地で起きている生活保護費の過誤払い・返還処分問題の武器にしよう」と呼びかけています。

 収入申告と収入認定 生活保護の利用者は、保護費以外の収入があった場合、福祉事務所に収入申告しなければなりません。収入申告を受けた福祉事務所は収入認定し、生活保護の基準額から収入額を差し引き、残りを保護費として支給します。


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